先延ばし思考を解決する方法は「メタコグニション(メタ認知)」

先延ばし思考とは何か

 

定義

後でやる、いつかやるといって後回しにする思考

具体例

先延ばし

 後で本を読む、いつか読むといってリストを作ったのにもかかわらず、結局読んでいないということがよくありますよね。他にも後で勉強する、後で筋トレをする、後で映画を見る、後で歯医者に行く、後でダイエットをするなど、枚挙に暇がありません。本を読む前にコーヒを飲もう、音楽を流そう、Twitterを見よう、LINEをチェックしよう、スマホゲームのログインボーナスをもらおう、少し眠ろうといって先延ばしにしてしまうのです。こうした先延ばし思考をどのように解決したらいいのでしょうか。

先延ばし思考を解決する方法

 先延ばしにしてしまうのは怠け者だからであり、時間の管理をうまくできないからだと一般には言われています。しかし実際にはそうではありません。先延ばしにしてしまうのは、衝動に対する抵抗力が弱く、自分で何を考えるか考えること(メタコグニション)ができないからなのです。

先延ばし思考とは

 デイリープランナーや、todoリストを買ったり、スケジュール表を埋めたりして人々は時間の管理を行おうとします。しかし実際には途中で投げ出してしまう人が多いはずです。私もそのひとりです。問題は時間の管理ではなく、「衝動に対する抵抗力」と「自分がなにを考えるかを考えること(メタコグニション)」の弱さなのです。メタゴクニションは「メタ認知」と言い換えることもできます。メタ認知とは認知を認知することです。人間が自分自身を認識する場合において、自分の思考や行動そのものを対象として客観的に把握し認識すること、それをおこなう能力をメタ認知能力といいます。メタコグニション先延ばし思考を克復することにつながります。

マシュマロ実験から理解する「メタゴクニション」 

 先延ばしの誘惑に人間は簡単に勝てません。1960年代後半から70年代前半にかけて、ウォルター・ミシェルはスタンフォード大学でお菓子を使って人間が先延ばしの誘惑に勝てないという実験しました。その実験を紹介したいと思います。

マシュマロ実験

実験の内容

1 子どもたちの前にはテーブルが有り、お菓子(プレッツェル、クッキー、大きいマシュマロ)とベルが乗っている。
2 お菓子のどれか1つを選ぶことができる。
3 子どもたちは選んだお菓子を食べることができるが、もし数分間待つことができれば、ご褒美が倍になってお菓子を2つもらえると言われる。
4 途中で待ちきれることができなくなったらベルを鳴らすように言われる。
結果1 最後まで我慢できた子どもは3分の1
結果2 その後も被験者を追跡調査したが、我慢できた子どもの方が、よりよい学歴や職業を得た。我慢できなった子どもは、問題行動を起こす割合が高かった。大学進学適性試験においても、お菓子をすぐ食べてしまった子どもより、我慢できた子どもの点数のほうが平均して200点高くなっていた。

 お菓子を食べることを我慢できなかった子どもは、メタコグニション(metacognition、自分が何を考えるか考えること)ができなかったといえます。我慢できた子どもは、メタコグニションができていたのです。。自分の最善の行動を知っていたのです。我慢できないという自分の思考や行動を、鳥の目を通して自分を見るように、対象化して考え、どのように行動すればいいのかを考えたということです。その対策方法は人それぞれですが、たとえば「お菓子を見つめないこと」、「足を踏み鳴らすこと」などが考えられます。マシュマロを見つめてしまうと自分は誘惑に負けてしまうということをもし考えていれば、「見つめない」という行動をとるはずです。しかしそうしたメタゴグニションができていないと、「見つめて」、欲望に負けてマシュマロを食べてしまうのです。

 後回しにしてはいけないという「義務」と、今したくない、あるいはしたいという「欲求」、あるいは「衝動」とのせめぎあいのなかで、メタコングニションは義務を優先することの助けになります。誘惑に弱いということを認識し、その誘惑の弱さに対してどのような戦略を立てたらいいのかを考えることが重要です。

 例えば、勉強しないでゲームという誘惑に負けてしまっている場合も同じです。認知をまず認知しましょう。そしてどのように誘惑に打ち勝っていくことができるかを考えます。戦略を立てるのです。スマホが机の上にあれば、ついスマホを触ってしまう、という自分の考えを考えましょう。そしてスマホと近くに置かなければ集中できるのではないか、という戦略を立てて実行しましょう。あるいはTwitterなどをブロックして見えなくするアプリを探したりすることも有用です。無駄遣いをしてしまうなら、最低限のお金しか財布に入れないという戦略を取りましょう。本を買っても読まない、という場合どうすればいいでしょうか。自分を追い詰めることが重要です。SNSなどで「これから〜という本を読みます、〜までに感想を必ず述べます」などと追い詰めてはいかがでしょうか。このように、戦略はいくらでも考えられます。

 

先延ばし思考の分析

双曲割引とはなにか

定義:待ち時間が長くなるにつれて、より合理的な選択ができるようになる傾向

 双曲割引

  いま50ドルもらうか、1年後に50ドルもらうか選べと言われたら、多くの人は「今」50ドルをもらうほうを選ぶそうです。しかし、五年後に50ドルか、6年後に100ドルか選べと言われたら、6年後に100ドルもらったほうがいいという人が多くなります。論理的に考えれば50ドルよりも100ドルのほうが多いので、100ドルをもらう方を選択するはずです。投資する当てがある、などとも考えられますが、そのような理由付けで人々の多くが100ドルを選択しているとは考えられません。論理よりも欲求が優先されてしまうのです。時間が長くなるにつれてより合理的な選択をするという双曲割引の法則に従い、5年後と6年後という比較の場合は論理的に利益が大きい方が選ばれているのです。それに反して、今か1年後という比較の場合には、今もらうという選択を人間はしてしまうのです。

 お金以外の話もあります。たとえば、スマホでゲームをすることと、一ヶ月後に給料が貰える仕事をすることの二択が現在存在するとします。論理的に利益を比較して考えれば、仕事をする方が利益があるかということがわかります。しかし人間はついつい仕事を後回しにしてゲームで遊んでしまい、仕事の質を低くしがちです。

 しかしこの選択が、1年後にゲームをするか、一万円がもらえる作業をするか、という場合だとしたら、おそらく一万円がもらえる作業をするという選択を人間はすると思います。1年後、という時間が長くあいたことで、人間は合理的な選択をするようになるのです。もっとも、1年たった後にゲームをしたいがために仕事を先延ばししてしまう可能性も大いにあります。重要なことは、「今」か「後」かという選択において、人間は「今」を選びやすいということであり、欲望に負けやすいということなのです。仮に小さい後か、大きい後かの選択において合理的な選択ができたとしても、「今」になって先延ばしをしないで実行できるとは限らないのです。スケジュール表を双曲割引のように合理的に立てたとしても、実行される保障がないのと同じです。「今」やりたくないことを「将来(後)」に投げるのが人間なのです。

お菓子か果物か

双曲割引、チョコレート

 一週間後に果物とお菓子とどちらを食べたいかときかれると、たいていの人は果物と答えます。ところが、一週間後の、チョコレートケーキとリンゴを出されると、統計的に人はケーキを選ぶ割合が高いのです

 果物とお菓子だと、果物のほうが健康にいい。だから一週間後と言われると、双曲割引の法則に従うように、人間は果物を食べると答えます。しかし、いざ一週間後になって選択がケーキかりんごになると、ケーキを選ぶ割合が高いです。人間は論理より欲望を優先する生き物なのです。

 欲しいものは今と後では変化する。つまり、時間とともに欲しいものは通常変化するのである。しかし、人間は未来における欲しいものと、今におけるほしいものの認識の違いを認識することがなかなかできない。このような現象を現在バイアスというらしい。健康のためにといってバナナを買ってきたはいいが、結局冷蔵庫で腐らされていた、というようなことが皆さんないだろうか?

人間は猿か?

現在バイアス 

  双曲割引で見てきたように、人間は長い時間になるほど、合理的な選択ができます。そして短い時間、たとえば今ゲームをするか勉強をするか、というような選択のときにはついゲームをして遊んでしまう生き物なのです。衝動に弱い人間はたくさんいます。逆にいえば、衝動に強い人間が学業成績がよく、よい就職についているといえます。

 私たちの祖先である猿は、未来のことよりものことを重視します。「今を生きろ」とは響きのいい言葉ですが、冷静に考えると、怠惰であることが多いです。今を生きたいからゲームをして怠けるという正当化よりも、まさに「今を生きるために、ゲームをしないで勉強をする」という正当化のほうが「今を生きろ」に正しいのではないでしょうか。「若い内の今しかできないことだから」、勉強よりも友だちと遊び、語り、友情を深めることが大事である、という正当化も正しいように聞こえます。しかし、勉強も若いうちしかできないのも事実です。また、勉強と遊びは両立できます。自分の行動が正しいように、話を構成するというのも人間の特徴です。

 猿は、老後のことや病気のことを基本的に心配しません。猿の寿命は人間のように長くないので、生きて孫に合うことはほとんどありません。猿は好きな様に食べ、好きな様に遊ぶのです。「それでいいじゃないか」、と思う人がいると思います。しかし現実社会において、猿のように生きることが、社会に適合することは稀です。遅刻せず、成果を遅延せず、合理的に、論理的に物事を進めていかないとやっていけません。こうした現代社会が正しいあり方なのか、という問題は置いといて、実際に適合していかなければいけない以上、適応するしかないのです。適合するためにはメタコグニションが必要であり、猿化してはいけないのです。現代社会がおかしい、親がおかしい、上司がおかしい、と不平を漏らす前に、なぜ適応できないのか、ということを考えたほうが得策ではないでしょうか。

レポート実験

 クラウス・ヴェルテンブロックとダン・アリエリー(2002)の実験を紹介したいと思います。

メタ認知能力

1 一部の学生を対象に実験を行う。
2 3つのクラスを作り、3週間で3本のレポートを書かせる。

3  (a) Aクラスは最終日に3本のレポートをすべて提出しなくてはならない。

   (b) Bクラスは自分でそれぞれの締め切りを選び、それを守らなくてはならない。

   (c) Cクラスは一週間に一本ずつ提出しなくてはならない。

(結果)成績はCクラスが一番高かった。Bクラスが二番目、Aクラスが一番低かった。

(考察)Aクラスは最終日の前日くらいまで引き延ばすことができるので、引き延ばしていた生徒が多く、成績が悪かったといえる。Bクラスは双曲割引のように、三週間後という長い時間の未来においては合理的な選択を行う人間がいた。だいたい一週間ごとに提出期限を設定するものが多かったのである。しかし、楽観的な少数派もいて、最終日にすべてを提出するように期限を決めたものがいたので、Cクラスよりも成績が悪かったといえる。

未来のあなたは信用できる人間か

メタ

 ついついレジでお菓子を買ってしまうように、人間は衝動に弱い人間です。また、ついついゲームをしてだらけてしまように、先延ばしをしてしまう人間なのです。いつかきっとやる、後できっとやる、未来の自分はきっとちゃんとしている、と人間は信じたい生き物ですが、実際にちゃんとしている人は稀です。ダイエットを継続した人間は全体の半分以上いるでしょうか。我々は弱い人間であることを認め、メタコグニションを通して戦略を立てる必要があるのではないでしょうか。

参考文献

・「思考のトラ」、デイヴィッド・マクレイニー、二見書房

 
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