動画での説明
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はじめに
社会心理学とは、人間の社会的な振る舞いの法則や仕組みを解明する学問である。
この動画シリーズは下の図に示すように、創造発見学に位置づけられている。
この記事のシリーズは創造発見学に位置づけられている。要するに、アイデアをひらめくための情報を学ぼうというわけである。ビジネス、友人関係、学業、さまざまなものにそれぞれ活かしてほしい。
できるだけ1ワードに説明する対象を絞っていく。※社会心理学だけではなく他の心理学を扱うこともある。
基本的な説明プロセスは、上の図の通りである。
(4) パットナムにおける社会関係資本
[4-1]『哲学する民主主義』、『孤独なボウリング』
パットナムにおける社会関係資本とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
(パットナムにおける)社会関係資本(英:social capital):信頼・規範・ネットワークといった、人々の協力を促し社会の効率を高める社会的仕組みのこと。
パットナムはアメリカの政治学者であり、代表作は『哲学する民主主義』(1993)や『孤独なボウリング』(2000)である。
社会関係資本研究といえば現代ではパットナムの名前が第一に出てくるほどこの分野で著名な人物である。
パットナムの『哲学する民主主義』(1993)の内容
『哲学する民主主義』(1993)ではイタリアの南北の地域を比較し、社会関係資本の違いが民主主義の発展度に変化をもたらしていることを実証しようとした。重要なのは、経済的発展度だけで民主主義の発展度は説明できないという点である。
民主主義の発展度は「市民性の度合い」で測られている。市民性の度合いはアソシエーンション数(自発的団体の多さ)、新聞購読率(公共問題への関心)、国民投票率(政治参加の積極性)、優先投票利用率(派閥的関係の強さ。高いほど市民性が低い)などで測られている。
・特に参考にしたページ
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,298p
佐藤誠「社会資本とソーシャル・キャピタル」[2003],4-5p
パットナムの『孤独なボウリング』(2000)の内容
『孤独なボウリング』(2000)ではアメリカにおいて社会的な活動への参加の低下がさまざまなアメリカの社会問題につながっていることが示されている。
かつては集団でボウリングをしていたが、今では1人でボウリングをする人が増えているという趣旨をイメージすればよりわかりやすい。
ここで重要なのは、『哲学する民主主義』(1993)におけるイタリアの分析結果である「社会関係資本と民主主義の関係性」はイタリア固有の現象ではなく、アメリカにも当てはまる普遍的な現象であることを示そうとしたという点である。
政治の安定や経済の発展にとって、物的資本や人的資本だけではなく、社会関係資本が重要な要因であることを示そうとしたのである。
北アメリカは主にイギリス由来の議会制などを受け継いだのに対し、ラテンアメリカは主にスペイン由来の権威主義的・家族主義的な統治の影響を受けた傾向があり、これが民主主義の発展度の差を生んだとパットナムは説明している。
市民性が高いほうが経済も政治も発展しやすいという点がポイントである。社会問題は権威主義的な強制ではなく、自発的な協力によって解決するべきだとパットナムはいう。
・特に参考にしたページ
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,300p
「社会学」、有斐閣、第十一刷,119p
「社会学」、有斐閣、第十一刷,121p
佐藤誠「社会資本とソーシャル・キャピタル」[2003],4-5-6p
アメリカの社会関係資本が衰退した4つの理由
アメリカの社会関係資本が衰退した理由として、パットナムは以下の4つの原因を挙げている。
【1】世代変化
生まれた時代によって市民参加の度合いが異なる。
【2】電子メディアの影響
テレビなどにより娯楽が個人化し、人との交流が減少。
【3】仕事の変化
共働きなどで時間や余裕がなくなり地域活動に参加しなくなる。
【4】郊外化
通勤時間の増加により、地域との関わりが弱まる。
・特に参考にしたページ
佐藤誠「社会資本とソーシャル・キャピタル」[2003],6-7p
[4-2]パットナムにおける「信頼・規範・ネットワーク」
パットナムにとって社会関係資本の構成要素は「信頼・規範・ネットワーク」の3つであった。それぞれの中身とその関係を見ていく。
パットナムにおける「信頼」とは
信頼(英:trust):他人が誠実に行動し、協力してくれると見込む期待のこと。
なお、エリック・アスレイナー(2008)は信頼は「一般的信頼」と「特定化信頼」に下位分類されると理論的に整理している。パットナムの場合は後に扱うように架橋型と紐帯型で実質的に区分されている。
一般的信頼とは見知らぬ他者への信頼であり、特定化信頼とは家族・友人などへの信頼のことである。
・特に参考にしたページ
稲葉陽二,戸川和成,「社会関係資本, 経済格差, 投票率との関係 都道府県データによる考察」(2019),282p
高野良一「社会関係資本のエートス論── 教育理論の 「可能性の中心」──」(2014),74-75p
パットナムにおける「互酬性の規範」とは
互酬性の規範(英:norm of reciprocity):互いに助け合う行為を社会的に期待するルールのこと。
将来の見返り、見返りまでの時間(時間的に短い/長い)、相手の属性(特定/不特定)、コスト、自発性、規範性などが関わっている。
パットナムは信頼の実質的な区分と同じように、互酬性も「特定的互酬性」と「一般的互酬性」として実質的に区分していると考えることができる。
特定的互酬性は特定の相手との間で、比較的短時間に、ほぼ等価の見返りが返ってくることを前提としたルールを意味する。たとえば「友人にお金を貸し、後で返してもらう」、「誕生日プレゼントを送り合う」、「同僚の残業を手伝い、手伝い返してもらう」といったケースが考えられる。
一般的互酬性は相手や返済時期を特定せず、将来どこかで返ってくると期待して、今は見返りを求めずに他者にコストを払うことを前提としたルールのことである。
たとえば「道に迷っている人を案内する」、「災害時にボランティアに参加する」、「見知らぬ人のために寄付する」といったケースが考えられる。もちろん、両者の境界にはグラデーションがありうる。たとえばボランティアが成績の内申点を上げるためという具体的な見返りを想定している場合がある。
・特に参考にしたページ
佐藤誠「社会資本とソーシャル・キャピタル」[2003],4-5-6p
高野良一「社会関係資本のエートス論── 教育理論の 「可能性の中心」──」(2014),80-81p
香月孝志,「社会学用語図鑑」,プレジデント社,第一刷,249p
パットナムにおける「ネットワーク」とは
ネットワーク(英:network):個人や集団のあいだに形成される社会的なつながり(関係)の構造のこと。
ネットワークも特定的ネットワークと一般的ネットワークに区別できるかもしれない(パットナムがそのような用語で区別しているわけではない)。特定的ネットワークは継続性や組織性が高く、一般的ネットワークは匿名性が高いといえる。
たとえば道で迷っている人と私との間に継続的な関係は存在しないが、しかしつながりがまったくないわけではなく、視線が合っただけで何らかの意味でつながりが生じうる(社会学者のルーマンでいえば、その場で社会システムがパッと生じる)。
・特に参考にしたページ
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,298p
水平的なネットワークと垂直的なネットワークの違い
ネットワークは水平的なものと垂直的なものに区分されている。水平的ネットワークは対等な立場同士のつながりであり、垂直的ネットワークは上下関係にもとづくつながりのことである。
パットナムはイタリアやアメリカの実証分析を行い、水平的なネットワークが市民性を高め、民主主義を発展させ、社会的問題を解消すると評価している。
社会学者のハーバーマスでいえば、討議の土壌として、戦略的行為よりもコミュニケーション的行為が優先されるような社会が望ましいということになるのだろう。
・特に参考にしたページ
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,298p
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,300p
【1ワード社会学第十三回(1)】ハーバーマスにおける「コミュニケーション行為理論」
信頼、互酬性、ネットワークのそれぞれの相互補完関係
コールマンやブルデューの箇所で確認したように、ネットワークそれ単体では資本とはみなせない。ネットワークが資本となるためには信頼や互酬性という要素が必要になる。
「信頼性や互酬性を創発的に帯びたネットワーク」こそが社会関係資本だといえるだろう。
政治学者の坂本治也さんは、パットナムにおける信頼、互酬性、ネットワークのそれぞれの相互補完関係を「三位一体」と名付けている。3つは別々の要素だが切り離せない関係にあり、一緒になってはじめて力をもつ。
ネットワークへ参加するからこそ信頼や互酬性の規範が生まれ、互酬性の規範があるからこそネットワークや信頼が強化されるといった関係である。
ただし、坂本さんはこうした相互補完関係の均衡をパットナムが実証しているわけではないという。
それぞれの各構成要素はそれぞれの動き方をする可能性があるということになる。たとえばネットワークが多いからといって信頼が高いとは限らず、現実にはズレや不均衡が生じる可能性がありうる。どういった状況で適切な均衡が生まれるかは、ブルデューでいえば「界」次第、より抽象的にいえば社会的な文脈次第ということになるのだろう。
・特に参考にしたページ
高野良一「社会関係資本のエートス論── 教育理論の 「可能性の中心」──」(2014),80-81p
[4-3]紐帯型(結束型)社会関係資本/架橋(橋渡し)型社会関係資本
パットナムの初期の著作では社会関係資本の肯定的側面ばかりが強調されていたが、否定的側面も挙げられるようになった。たとえば『孤独なボウリング』(2000)では社会関係資本が紐帯型と架橋型に区分され、紐帯型の排他的側面が説明されている。
パットナムの「紐帯型(結束型)社会関係資本」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
紐帯型社会関係資本(英:bonding social capital):同一集団内の効用のみを高める社会関係資本のこと。※結束型社会関係資本、ボンディングソーシャルキャピタルなどともいう。
たとえば家族、友人、特定の政治団体、特定の宗教団体を支持する人同士などの人間関係を意味する。パットナムの例ではエスニシティ(民族性)に基づく友愛組織、教会の組織する女性の読書サークル、社交クラブなどが挙げられている。たとえばKKKのような人種差別団体もこの例として挙げられる。
・特に参考にしたページ
香月孝志,「社会学用語図鑑」,プレジデント社,第一刷,248p
「社会学」、有斐閣、第十一刷,232p
佐藤誠「社会資本とソーシャル・キャピタル」[2003],8-9p
パットナムの「架橋(橋渡し)型社会関係資本」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
架橋型社会関係資本(英:bridging social capital):異なる集団間で効用を高めようとする社会関係資本のこと。※橋渡し型社会関係資本、ブリッジングソーシャルキャピタルなどともいう。
たとえば大学において他学部との共同プロジェクトを行ったり、ボランティア活動で多様な人々と関わったりするようなケース。パットナムの例では市民権運動、青年グループ、宗教間宗教組織などが挙げられている。
・特に参考にしたページ
香月孝志,「社会学用語図鑑」,プレジデント社,第一刷,248p
「社会学」、有斐閣、第十一刷,232p佐藤誠「社会資本とソーシャル・キャピタル」[2003],8-9p
リチャード・フロリダにおける創造性、寛容性、多様性
社会におけるネットワークは少数派と多数派に区別することができる。たとえば大きく分類すれば「日本人のコミュニティ」は日本において多数派であり、「日本人以外の外国人のコミュニティ」は日本社会において少数派である。
それぞれのコミュニティがもし自分たちの内部の効用のみを高めようとする場合は「紐帯型社会関係資本」を有するコミュニティだということになる。
多数派がもし紐帯型だった場合、集団内部の信頼、統合、連帯、互酬性といった要素は高まる。しかし少数派の他のコミュニティを排除しようとする傾向も高まる危険性がある。
日本でも外国人排斥運動を行うコミュニティが存在する。政治でも「日本人ファースト」という言葉がキャッチフレーズとして特定の政党によって使われ、議論の対象になっていた(2025年の参院選)。多数派の生活機会の改善が最優先であり、場合によっては過激な形をとる場合もある(たとえば特定の人種に対するヘイトスピーチを行う団体など)。
少数派がもし紐帯型だった場合も集団内部の信頼、統合、連帯、互酬性といった要素は高まる。自分たちの文化や、自分たちのネットワークを有効活用し、結束を高めようとする。
しかし多数派からすればそのような活動が地域全体の社会的統合を弱体化させるものだとみなされることがある。法に反した活動、あるいは法には反しないが文化的に理解しがたい活動の形をとる場合もあるからだろう。たとえば特定の性別を軽視したり、深夜に集まって騒ぐといった行為が特定の文化的価値観に基づいていたとしても、他の文化的価値観をもっている人には「ひび割れ」として感じられることがある。
外国人だけではなく、カルト的に見える宗教的集団の団結も、多数派からすれば脅威だと見なされる場合があるといえる。
学校での不良グループ、会社内での少数派など、あらゆる単位に少数派を見出すことができるかもしれない。
アメリカの社会学者であるリチャード・フロリダは多数派が少数派の生活条件改善に寄与する「寛容性」を確保することは、社会全体の「創造性」を高めることに貢献すると主張している。また、多数派自身の利益にもつながりうるという。
少数派が多数派の生活条件改善に寄与する「文化的多様性」を確保することも同様だという。
それぞれの共同体が自分たちの内部だけに指向するのではなく、外部のコミュニティにも指向することで社会的にポジティブな効果、たとえばコミュニティ同士の衝突(コンフリクト)の回避や創造性の向上につながるというわけだ。
異なるコミュニティとの接触はアイデアの資源の宝庫となりうるのであり、社会的危機に柔軟に対応するための資源(リソース)として重要になってくるといえる。
とはいえ自分や自分の所属集団を優先する人たちからすれば、「現実を見ずに理想ばかりいうリベラル、左派」、「ポリコレにうるさい人たち」と見なされがちである。逆に彼らからすれば「自分たちのことしか考えていない右派」ということになるのだろう。※ポリコレとはポリティカル・コレクトネスの略であり、差別的な表現をなくそうとする試みを一般に意味する
理想と現実にどのように折り合いをつけるのか、その理論と実践を妥当な根拠に基づいて提示できるか、議論しあえるかがポイントになるのだろう。
少数派と多数派の関係を図にするとこのようになるという。
・特に参考にしたページ
「社会学」、有斐閣、第十一刷,232p
参考文献
おすすめ文献
ロバート・D. パットナム (著), Robert D. Putnam (原名), 柴内 康文 (翻訳) 「孤独なボウリング: 米国コミュニティの崩壊と再生」
ロバート・D. パットナム (著), Robert D. Putnam (原名), 柴内 康文 (翻訳) 「孤独なボウリング: 米国コミュニティの崩壊と再生」
汎用文献
社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)
社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)
デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」
デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」
亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」
亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」
参考論文
佐藤誠「社会資本とソーシャル・キャピタル」[2003][URL]
高野良一「社会関係資本のエートス論── 教育理論の 「可能性の中心」──」(2014)[URL]
稲葉陽二,戸川和成,「社会関係資本, 経済格差, 投票率との関係 都道府県データによる考察」(2019)[URL]
長谷川 眞理子「タテ社会日本と学術」(2022)[URL]
北岡一道「研究ノート: ちいさな両手と 2 つのハコ」(2007)[URL]
松村茂樹 「日本における 「サーバントリーダーシップ」 導入:「タテ社会」 を変える試み」(2022)[URL]









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