【1ワード社会心理学第十二回】「オピニオンリーダー」とはなにか

社会心理学
  1. 動画での説明
  2. はじめに
  3. オピニオンリーダーに関わる問題発生の例
    1. 【1】日常生活での失敗
    2. 【2】その他
  4. オピニオンリーダー
    1. オピニオンリーダーとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      1. オピニオンとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
    2. どういう人がオピニオンリーダーか、性質や特徴について
      1. 【1】フォーマルな集団とインフォーマルな集団の違い
      2. 【2】事情通
      3. 【3】社交性
      4. 【4】特化型
    3. なぜ人びとはオピニオンリーダーになりたいのか
      1. バートによる「等価となる競争」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      2. チャンらによる「公衆における個性化」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      3. バートによる「構造的空隙」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
    4. オピニオンリーダーか判定する尺度
      1. 7つの質問
    5. オピニオンリーダー、インフルエンサー、市場の達人の違い
      1. インフルエンサーとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      2. オピニオン・リーダーと変革者の違い
      3. 市場の達人とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
  5. ラザースフェルドらの「コミュニケーションの二段階の流れ」
    1. ソーシャルネットワークとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
    2. コミュニケーションの二段階の流れとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      1. クーリーによる第一次集団と第二次集団とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      2. E・カッツによる二段階の流れの特徴の3つの仮説
    3. 先有傾向、改変効果と補強効果、限定効果論と弾丸理論
      1. クラッパーにおける「改変効果」と「補強効果」の違いとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      2. マスメディアが人びとに変化をひきおこす2つのケース
    4. ラザースフェルドらへの批判
      1. (1)直接的流れの証拠を無視している
      2. (2) 二段階の流れは複雑な伝達過程を考えていない
      3. (3) オピニオンリーダーか非リーダーかという二分法で考えすぎている
      4. (4) 人々が互いに意見を交換し合う水平的なやり取りを無視している
      5. (5) 情報の流れと影響を区別できていない
      6. その他:構造的な力に対する軽視
  6. ロジャースらの「イノベーションにおける採用者カテゴリー」について
    1. ロジャースにおける「採用者カテゴリー」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      1. ブリッジとクリークとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
    2. ホランダーにおける「特異性信頼理論」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      1. オピニオン・リーダーにおける同調性と逸脱性
      2. オピニオンリーダーの具体例、実証研究
      3. (1)買い物行動に関する影響の流れ
      4. (2) ファッションなどの流行
      5. (3) 映画鑑賞
      6. (4) 社会的・政治的問題
      7. アメリカ大統領選挙における調査
  7. 得られる教訓
    1. オピニオンリーダーから得られる教訓

動画での説明

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はじめに

社会心理学とは、人間の社会的な振る舞いの法則や仕組みを解明する学問である。

この動画シリーズは下の図に示すように、創造発見学に位置づけられている。

この記事のシリーズは創造発見学に位置づけられている。要するに、アイデアをひらめくための情報を学ぼうというわけである。ビジネス、友人関係、学業、さまざまなものにそれぞれ活かしてほしい。

できるだけ1ワードに説明する対象を絞っていく。※社会心理学だけではなく他の心理学を扱うこともある。

基本的な説明プロセスは、上の図の通りである。

オピニオンリーダーに関わる問題発生の例

【1】日常生活での失敗

友人の間で健康に詳しいと思われている人物に「〇〇を飲めば病気が治る」と言われて信じた結果、症状が悪化してしまう。

ママ友で一番社交的で力をもつ人間が、「あの家庭は暴力団と関係している」と情報をグループに広げて皆が信じてしまったが、実際は無関係だったケース。

ニュースサイトのコメント欄の常連投稿者の解釈を優先して信じた結果、実は誤っていたケース。

【2】その他

法律に詳しいと思っていた同僚を信じた結果、誤った契約を結んでしまうケース。SNSで著名なアカウントの情報を信じて投資を行ったり、情報商材を購入して失敗してしまうケース。

政治に詳しいと感じている友人にデマを吹き込まれてしまうケース。人気動画投稿者が紹介している商品が、実は企業から内密に依頼された質の悪い商品だったケース。

このように、我々の社会では具体的な対人関係を通した情報の流通に問題が生じる場合がある。「あの人が紹介するのだから事実だ、あるいは適切な解釈だ」と考えなしに受容してしまうと問題が生じる場合がある。もちろん、情報の流通に問題が生じず、有益な情報が行き渡ることもある。また、誤った情報が修正されることもある。

こうした情報の流通は「二段階の流れ」と呼ばれ、「オピニオンリーダー」という身近な影響力をもった人間がとくに重要となる。マスメディアや専門家が情報の受容や解釈に必ずしも直接的な影響を強く与えているわけではないという点が論点となってくる。

オピニオンリーダー

オピニオンリーダーとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

POINT

オピニオンリーダー(英:opinion leader):ある社会や集団で、意見の形成や表明の際に主導的な役割を果たす人のこと。大事件の際に意見を求められる学者、評論家、専門家、アナリストなど。

POINT

(社会学的な)オピニオンリーダー(英:opinion leader):マスメディアからの影響を自分が参加している集団内にパーソナルコミュニケーションで伝達していく中継機能を果たす人のこと。

ラザースフェルド、ベレルソン、ヘーゼルの『ピープルズチョイス』(1944)やカッツ、ラザースフェルドの『パーソナル・インフルエンス』などで提唱された概念。

社会学者のラザースフェルドらによると、「流行を作り出し、他者から模倣されるような重要な人間」といった概念自体は昔から知られていたという。

大事なのは、「コミュニケーションの二段階の流れ」においてリーダーを捉え直し、概念を修正したという点である(後で扱う)。また、従来はマスメディアから人びとへ直接的に「上から下へ」と垂直的に、一段階的に影響すると考えられていたという点もポイントである。

・特に参考にしたページ

・「社会学小辞典」、有斐閣、新板増補版第四刷,47p

「コミュニケーション入門」,有斐閣アルマ,169p

オピニオンとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

オピニオン(英:opinion)」とは一般に、事実に対する個人や集団の解釈を意味する(事実と解釈の境目は曖昧なこともあるが)。いわゆる「意見」である。

たとえば「経済の不況」という事実が仮にあるとして、その原因は「〇〇」であると解釈して表明する場合、オピニオンを出したことになる。「政治のせい」、「外国のせい」、「労働者のせい」など、さまざまな角度でオピニオンを出していくようなケースを考えると理解しやすい。

マスメディアに登場する専門家のオピニオンをそのまま妥当な解釈として受け容れる人もいる。

一方で、専門家のオピニオンを修正したり、批判したり、賛同したりして「新たなオピニオン」を出していく人もいる。家族では父親が、会社では上司、友人では田中さん、インターネット空間では政治に詳しそうなある匿名的なアカウントかもしれない。このように、妥当な解釈と受け取られやすい、指導的な影響力(インフルエンス)をもつひとたちがオピニオンリーダー(意見を指導する人)なのだといえる。

どういう人がオピニオンリーダーか、性質や特徴について

【1】フォーマルな集団とインフォーマルな集団の違い

(1) ラザースフェルドらによると、オピニオンリーダーはフォーマルな集団のリーダーではなく、インフォーマルな集団を前提に考えられているという。

フォーマルとは、ルールによって役割や地位が明示されている状態のことである。いわゆる公的な立場の人であり、インフォーマルとは、そのような制度的裏付けをもたない立場を指す。

たとえば会社の社長、行政府の長、自治会長などがフォーマルなリーダーの例である。専門的な資格を持つ大学教授や弁護士、医師などもその例だといえる。

インフォーマルな集団のリーダーは、個人の人柄や親密さなどの「対人関係」によって決まるという点が重要である。

たとえばママ友の中で誰がファッションのあり方の影響を与えるかは制度や資格だけによって決まるわけではない。ママ友A、B、C…がいるとして、Aはファッションに関してリーダー、Bは政治に関してリーダー、Cは映画に関してリーダーであるということがありえる。極端にいえばある集団の全員が何らかのリーダーであることもありえるのである。

資格がなければだめ、専門的知識がなければだめといったような規則によってリーダーが決まるわけではない。

政治的知識がほとんどなくとも、社交的で信頼に値すると集団で思われていれば、政治的な影響を周囲に与えるリーダーになることがある。とはいえ、知識の量や学歴、資格といったものも関係することがある(社会的、政治的なオピニオンリーダーは高学歴だったり、資格をもつひとがなりがち)。

・特に参考にしたページ

・「メディア・情報・消費社会」(社会学ベーシックス),世界思想社,第一刷,107-108p

【2】事情通

(2) ラザースフェルドらによると、オピニオンリーダーは他の人々よりもマスメディアへの接触が多い事情通である。

マスメディアとは一般に、「不特定多数の人々(大衆)に情報やメッセージを伝達することを目的とした影響力をもつ媒体」を意味する。新聞、テレビ、ラジオ、雑誌などがその代表である。そのような情報伝達を「マスコミュニケーション」といい、特定の人(たとえば友人など)に向けた伝達である「パーソナルコミュニケーション」と区別されることが多い。

オピニオンリーダーは他の人びと(フォロワーシーカーなどと呼ばれる)よりも多くの雑誌や本を読んでいたという。つまり、「情報」の流れがフォロワーよりも多いということである。

ラザースフェルドらによると、社会的・政治的問題ではマスメディアからオピニオンリーダーへの「影響」はフォロワーへの影響よりも少なかったという。影響の大きさは分野ごとに違うという。マスメディアから多く情報を仕入れるからと言って、同じくらい多く影響を受けるとは限らないという点がポイントである。

また、ラザースフェルドらが想定している集団は比較的「小規模」であるという点もポイントである。家族、友人、会社の仲良しグループといったイメージである。

現代のように、1人のインフルエンサーが何百万ものフォロワーや登録者をもち、影響を与えるといったイメージで考えられていない。具体的で直接的な対人的コミュニケーションが可能な範囲の集団が想定されている。また、フォロワーの意見を変えるといっても「短期的」な視点であり、長期的なものはあまり想定されていない。「人生観をまるごと変える」といったものではなく、「食料品の銘柄を変える」、「映画の好みを変える」、「服の選び方を変える」といったイメージである。

・特に参考にしたページ

「メディア・情報・消費社会」(社会学ベーシックス),世界思想社,第一刷,107-108p

「メディア・情報・消費社会」(社会学ベーシックス),世界思想社,第一刷,110p

坂下玄哲「ブランドサイト閲覧目的と閲覧行動の関連性分析─ オピニオンリーダーとオピニオンシーカー─」(2014),21p

【3】社交性

(3) ラザースフェルドらによると、オピニオンリーダーは社交的

基本的に「社交性」が高い人がリーダーとして機能する傾向があるようだ。また、集団内で「共通の関心」があるという点が重要になる。たとえば映画好き、ファッション好き、学問に興味がある、政治に関心があるといったイメージ。特に関心の高い層から同じくらい関心の高い層へ、そして関心のやや高い層へといった影響の流れが見られるという。

たとえば社会的・政治的問題では社交性だけではなく、学歴などのステータスが重要な場合もあるという。一方で、映画の場合は社交性や社会的地位が必ずしも重要ではない場合があるという(具体的な事例は後で見ていく)。

重要な点は特定の階層だけにオピニオンリーダーが存在するわけではなく、さまざまな社会的階層に広く存在しているという点である。ある集団のカースト上位から下位の方向だけに流れがあるというわけではない。大事なのは関心の程度が流れに関係するという点であり、単に社会的地位が高いから関心が高いわけではないという点だろう。

・特に参考にしたページ

「メディア・情報・消費社会」(社会学ベーシックス),世界思想社,第一刷,111p

【4】特化型

(4) ラザースフェルドらによると、オピニオンリーダーは特化型が多い

映画も、政治も、音楽も、ファッションもといったようにあらゆる分野で人から意見を求められ、人の意見に影響を与えるような人間はあまり見られないという。特定の分野に特化しているという点がポイントである。

・特に参考にしたページ

「メディア・情報・消費社会」(社会学ベーシックス),世界思想社,第一刷,111p

なぜ人びとはオピニオンリーダーになりたいのか

バートによる「等価となる競争」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

社会学者のバート(1999)によると、オピニオンリーダーとなる人間には「他者から魅力的に見られたい」、「頼られる存在でありたい」という欲求が特に親しい相手や重要な関係の中で強く出るという。いわゆる自己顕示欲や承認欲求といわれるものである。

オピニオンリーダーは自分と似た立場の他のオピニオンリーダーと、誰がより先に価値の高い情報を獲得するかをめぐって競争するようになるという。このような競争を「等価となるための競争」という。

たとえばメーカーの新機種(たとえばSwitch2)の情報をいちはやくゲットした人間が回りで「情報が早くて頼りになる」と思われるようになるのである。

・特に参考にしたページ

坂下玄哲「ブランドサイト閲覧目的と閲覧行動の関連性分析─ オピニオンリーダーとオピニオンシーカー─」(2014),22p

チャンらによる「公衆における個性化」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

マーケティング研究で知られるチャンら(Chan and Misra,1990)によると、オピニオンリーダーとなる人には「集団や社会の中で、他者と違う存在として認識されたいという欲求」があるという。

これを「公衆における個性化」という。

・特に参考にしたページ

坂下玄哲「ブランドサイト閲覧目的と閲覧行動の関連性分析─ オピニオンリーダーとオピニオンシーカー─」(2014),23p

バートによる「構造的空隙」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

バートのいう「革新的で新規性の高い情報」がいかにして入手されるかという点が面白い。

オピニオンリーダーになる人が「単に人脈が多い」だけでは革新的な情報を取得できない。大事なのは「複数の互いに無関係なグループと接点をもつこと」だという。たとえば自分の学校のクラスAで、5人とつながっている人Xよりも、クラスA、B、C、D、Eの5つのクラスの5人とつながっている人Yのほうがオピニオンリーダーになりやすいといえる(とはいえ、学校の場合はグループ同士の関係が強い傾向がありそうだ。映画のコミュニティ、経済のコミュニティ、芸術のコミュニティといったグループを考えるとよりわかりやすい)。

(簡易的に)図にするとこのようなイメージとなる。

複数の無関係なグループとつながり、情報を集め、調整や仲介を行う人間をバートとは「構造的優位者」と表現している。

情報の流れは情報源、構造的優位者、それぞれのグループの構成員という順番だというわけである。また、それぞれのグループごとの断絶を「構造的空隙」という。それぞれのグループ内でも繋がっていない人達はいるという点がポイントである(全員が密につながっていると、情報が一気に拡散してコントロールしにくくなるといえる)。こうした構造があることでオピニオンリーダーは頼られるのであり、もっている情報が資本(社会関係資本)になりがちなのである。

ラザースフェルドらは対人関係における「親密性」や「同質性」、「信頼性」を重視したのに対し、バートは構造から生じる「差異や隙間」を重視しているという点がポイントになる。「誰であるか」ではなく、「どこに位置しているか」が重要である。

「親しさ、知識、学歴、社交性」よりも「構造的空隙」を重視した点は面白い。情報源をいかにして多様に保持できるか、そして手に入れた情報源をいかにして統制するかがオピニオンリーダーの欲求の充実に関わってくるのだろう。ただし、バートはオピニオンリーダーではなく「ブローカー」と呼んでいる。

・特に参考にしたページ

蘇文「社会ネットワークの視点から見たオンライン・コミュニティ : ネットワーク構造分析によるオピニオン・リーダー研究」(2014),162p

オピニオンリーダーか判定する尺度

7つの質問

オピニオンリーダーかどうか判定するために、いくつかの質問を対象者に行うという。

これから示す7つの質問に対して、「よくあてはまる」、「ある程度あてはまる」、「あまりあてはまらない」、「まったくあてはまらない」などの選択肢が与えられ、回答を促していくという。

  1. 【質問1】ある特定分野の製品・サービスについてよく知っているほうだ。
  2. 【質問2】いろいろな製品・サービスについてよく知っているほうだ。
  3. 【質問3】 ある特定分野の製品・サービスについて人からよく聞かれるほうだ。
  4. 【質問4】いろいろな製品・サービスについて人からよく聞かれるほうだ。
  5. 【質問5】新製品・サービスや新しいお店などは人より早く使ってみるほうだ。
  6. 【質問6】 友人からなにか相談されたり聞かれたりする。
  7. 【質問7】周囲に新しいものの考え方や流行を持ち込む。

これらの質問に対してよく当てはまっていればいるほど、オピニオンリーダーの度合いが高いということになる。

社会学者であるリン(Lin, N., 1973)によると、オピニオンリーダーの定義は、自己申告か他者評価か、特定行動か一般行動かによって大きく変わるという。これらを厳密に区別しないと、オピニオンリーダーの概念が不安定になる可能性がある。

・特に参考にしたページ

「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,248p

オピニオンリーダー、インフルエンサー、市場の達人の違い

インフルエンサーとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

POINT

インフルエンサー(英:influencer):一般に、多くの人々に影響を与える人間のこと。

もともとは政策や経営に影響を及ぼす政治家のブレーンや経営コンサルタントらのことを意味していたそうだ。2006年頃からSNSやブログで情報発信する人をさすようになったという。

ユーチューブ、フェイスブック、エックス(旧Twitter)、ツイッチ、インスタ、ティックトックなどさまざまなSNSで著名な人間は「インフルエンサー」として扱われることがある。

インフルエンサーを使った企業の広告・宣伝手法を「インフルエンサー・マーケティング」というらしい。こうした仕事を「案件(PR)」と言うことがある。案件であることを隠してお金をもらって宣伝することを「ステルスマーケティング」といい、日本では社会問題となり、規制対象になっている。

ラザースフェルドらの文脈では、家族において父親や母親が「オピニオンリーダー」になることがある。しかし、我々の感覚では家族の中で影響力を持つ人物を「インフルエンサー」とは表現しない。友人の中でちょっとした家電の知識をもつ人も同様だろう。

オピニオンリーダーの場合、影響は私的で、影響範囲が限定的、相互的な側面が強い。インフルエンサーの場合、影響は公的で非限定的、一方行的な側面が強い。我々が芸能人や著名なSNSのユーザーと対話することは稀である。もちろん、そこにはグラデーションが存在する(コメントでやり取りする場合など)。

インフルエンサーの場合は「自分が影響を与えることを自覚している」ケースが多く、オピニオンリーダーの場合は相対的に自覚していないといえるのではないだろうか。

たとえば友人Aはスマホについて詳しく、周りの友人に頼られているとする。しかし、この友人Aは周りの友人に影響力を意図的に行使している側面は小さいのではないだろうか。インフルエンサーの場合は数値によって具体的に可視化されるという点もポイントである(フォロワー数、登録者数、再生数、閲覧数など)。

・特に参考にしたページ

林逸, リンイツ, 南川和充「ライブコマースにおけるインフルエンサーが消費者行動に与える影響」(2022),171-172p

黒田明彦「広報活動の環境適応と企業価値評価に関する一考察」(2017),51-52p

大向一輝「SNS の進展」,254p

オピニオン・リーダーと変革者の違い

カリスマ店員や雑誌のモデルなどは流行を我々に届けているが「情報の送り手」ではなく、「情報の作り手」であるという。

社会学者のロジャース(Everett M. Rogers)の用語では「変革者(change agent)」であり、オピニオンリーダーとは区別される。たとえばiPhoneを作ったスティーブ・ジョブズはオピニオンリーダーではなく変革者の側面が強い。

とはいえ、家族の中では母親がオピニオンリーダー、そしてその母親はSNSの中ではインフルエンサー、仕事では変革者ということがありうる。

いずれも固定的な人格特性ではなく、特定の社会関係における流動的な役割概念だという点が重要になる。バート的に言えば、それぞれの(ソーシャルネットワークの)構造ごとに要素のあり方が変わるのだろう。

・特に参考にしたページ

「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,246p

市場の達人とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

市場の達人(Market Maven)」とは市場全般の横断的な情報を持ち、情報を幅広い人々に発信することができる消費者のことであるとされている(Feick & Price,1987や呉國怡,2006)。

オピニオンリーダーが自分が詳しいある限られた分野のみで影響を発揮するのに対して、市場の達人は複数の商品カテゴリーについて熟知するという点が異なるという。

市場の達人は情報の評価よりも収集、流通、拡散が重要になり、水平的なコミュニケーションが多いという。

今流行しているものはなにか、安いものはなにかといった情報を単に伝えるイメージであり、「どの製品が良いか」と技術的に判断することが主題ではない。インターネットの登場によって情報収集がより可能になり、現れやすくなったタイプであるという。

専門家の情報や最新の情報を平易にまとめてSNSで投稿する人間をイメージするとわかりやすい。消費者は彼らの情報を参考にして購入を決めることがあるというわけだ。

たとえば自分が買おうとしているスマホはコスパがいいのか、壊れやすいのかを調べるときに、メーカーのサイトの情報ではなく彼らのまとめた情報(口コミ)を参照することになる場合が多いといえる。

・特に参考にしたページ

李权秀「中国福建省厦門における三井コスメティックスの市場展開のためのマーケティング戦略」(2016),10-12p

ラザースフェルドらの「コミュニケーションの二段階の流れ」

ソーシャルネットワークとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

POINT

ソーシャルネットワーク(英:social network):一般に、個人や集団(ノード)が、友人関係・知人関係・情報交換・影響関係などの社会的関係(リンク)によって結びついた構造のこと。人と人とを結びつけるようなサービスのことをSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)という。

ノードとリンクを図にするとこのようなイメージとなる。

たとえばAはイラスト界隈のBと知り合いで、大学のテニスサークルのCと知り合いで、ボランティア活動で一緒のDと知り合いと言ったようなイメージである。

社会心理学では人間の行動がソーシャルネットワークの「関数」として捉えられることがある。ざっくりいえばソーシャルネットワークが人間の行動を規定する(行動に影響を与える)というわけである(もちろん、単なる刺激-反応的なモデルだけではなく、能動的で主体的な個人の分析も社会心理学は行う)。

重要なのは、他者との関係とは一切無関係に個人の性格や行動パターンが決まるわけではないという点である。ネットワークのあり方によって相互作用のありかたが決まり、それらの積み重ねによって個人の性格や行動パターンが変動していくというわけである。

たとえば親しい人間が少ないネットワークに位置する人間はマスメディアから直接影響を受けて行動しやすく、親しい人間が多いネットワークに位置する人間は彼らを経由したマスメディアの影響を受けて行動しやすいといえる。

また、複数の集団ノードにリンクしている人間ほど、オピニオンリーダー的な行動をとりやすいといえる。基本的には(統計的な)「傾向」をとらえることが主題で、自然法則のように必然的な因果関係を調べるわけではない。

・特に参考にしたページ

「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,245p

コミュニケーションの二段階の流れとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

POINT

コミュニケーションの二段階の流れ(英:two-step flow of communication):マスメディアからの情報がオピニオンリーダーを経由して、彼らのフォロワーに影響する(伝わる)という仮説のこと。

ラザースフェルドらによって提唱された。

図にするとこのようなイメージとなる。

重要な点は、マスメディアの影響力は直接的ではなく、間接的だという点である。そして、オピニオンリーダーによって情報が濾過され、修正や変更を受けるという点である。

クーリーによる第一次集団と第二次集団とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

社会学者のクーリー(1909)は、集団を第一次集団第二次集団に区別している。

第一次集団は直接的接触と親密な結合によって形成される。家族や友人関係などがその代表とされる。

第二次集団は特殊な利害関心にもとづいて意識的に組織され、間接的な接触によって形成される。学校、会社、政党、国家などがその代表とされる。

ラザースフェルドらは、近代化とともに第二次集団が多くなったとしても、第一集団から多くの影響を受けるという。

つまり、具体的で直接的、対面的で個人的な対人関係が情報の受容に強く影響するというわけである。その中でもとくに、オピニオンリーダーとのコミュニケーションが重要だということになる。友人の中で政治に詳しい人、電化製品に詳しい人、進路に詳しい人など、ちょっとしたオピニオンリーダーが周りの情報の解釈に強く影響を与えるというわけだ。

たとえば「〇〇の製品はよい」とマスメディアが流布しても、簡単には影響を与えない可能性がある。

電化製品に詳しい友人が「〇〇の製品はよい」とコミュニケーションすれば、フォロワーは類似した方向で解釈しがちだということになる。たとえば「〇〇の製品はよくない」と友人から紹介されれば、どんなにマスメディアで高評価でも、それらを疑う姿勢が構成される傾向があるといえそうだ。

E・カッツによる二段階の流れの特徴の3つの仮説

E・カッツは「2段階の流れ」をこのようにまとめている

  1. マスコミュニケーションよりもパーソナルコミュニケーションのほうが影響力が大きい
  2. オピニオンリーダーを通じて、マスメディアの情報は流れる。ただし、オピニオンリーダーは大抵の場合、同じ社会階層や似た立場の人々のあいだで横方向に広がる。また、特定の分野に限って影響力を持ち、オピニオンリーダーの立ち位置は変動的である。
  3. オピニオンリーダーは非リーダー(フォロワー)より、マスメディアに多く接触している。

先有傾向、改変効果と補強効果、限定効果論と弾丸理論

ラザースフェルドらにおける「先有傾向」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

ラザースフェルドらによると、人びとには「先有傾向」があるという。

POINT

先有傾向(英:pre-existing attitudes):人がマスメディアの情報に触れる前から、すでに持っている「支持の方向性」のこと。(もちろん理論的な区別であり、現実にはマスメディアが先有傾向にも影響を与えているのだろう)。

先有傾向はマスコミュニケーションではなく、パーソナルコミュニケーションで主に形成され、維持されているという。オピニオンリーダーや、そうではない人びととの対人関係の中で、ある政治の良し悪し、ある製品の良し悪しがなんとなく先に決まっているというわけである。幼い頃に見聞きした親からの影響も強いかもしれない。

マスコミュニケーションにおける情報は、そうした先有傾向を「補強」する方向に働く場合が多いという点が重要である。

クラッパーにおける「改変効果」と「補強効果」の違いとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

社会学者のJ.T.クラッパー(1960)はラザースフェルドらの主張を整理し、マスメディアの影響力は「改変効果(Conversion)」ではなく「補強効果(Reinforcement)」の傾向が強いと主張した。

たとえばテレビのCMは商品を「買おうと思っている人(先有傾向あり)」に、「買うことを決断させる」ような影響力をもつというわけである。買わないと決めている人に買うことを決断させるような影響力は基本的にないというわけだ。

初期のメディア論では、マスメディアが人々を直接的かつ強力に動かすと想定する「強力効果説」が唱えられていたという。弾丸効果論や皮下注射モデルとも呼ばれている。

19世紀末から20世紀初頭にかけ、都市化や工業化が急速に進行し、伝統的な枠組みが解体していくさなかで唱えられていたモデルである。個人は判断基準を失いがちであり、戦争では国家による(ラジオなどの)プロパガンダ(宣伝)で人々の意識や行動をコントロールできるかのような大衆の捉え方があったという。

マスメディアが人びとに変化をひきおこす2つのケース

クラッパーによれば、マスメディアが人びとに変化を引き起こす場合は2つあるという。

1つ目は媒介要因が無効になっている場合である。対人関係を徹底的に避け、孤立する人間はオピニオンリーダーと接する機会が乏しく、マスメディアに直接的に影響を受けやすいというわけだ。

2つ目は媒介要因が変化を促す方向に働く場合である。マスメディアと同じような意見をオピニオンリーダーももつ場合、マスメディアは人びとに間接的に変化をひきおこすというわけだ。

マスメディアがオピニオンリーダーたちにどのような影響を与えるのかという点がポイントになるのだろう。マスメディアで働く人や、利益の供与を受ける人がオピニオンリーダーの場合、明確にマスメディアの平均的な主張と乖離する意見を周囲に伝えることは避けてしまいがちになるかもしれない(いわゆるステークホルダーになる)。とくにインフルエンサーに近い立場の人はステークホルダーになりがちだろう。

ラザースフェルドらへの批判

社会学者のG・ワイマン(1982)は、二段階の流れのモデルの弱点を以下の5つに整理している

※それぞれの詳細は、ワイマンの批判に関連したものをピックアップして紹介しているのであり、必ずしもワイマン自身が紹介しているものではない。

(1)直接的流れの証拠を無視している

たとえば社会学者のO・N・ラーセンとR・J・ヒル(1954)は、「上院議員の死亡という出来事では多くの人が、人づての話より先に、ラジオなどのマスメディアでニュースを知っていた」という。

社会学者のP.ドイッチマンとW.ダニエルソン(1960)によると、マスコミは「評価」や「影響」の点ではパーソナルなものにかなわないかもしれないが、「認知段階」や「情報の流れ」においては強い力を持っていると主張した。

たとえば①アイゼンハワー元大統領の心臓発作、②人工衛星の打ち上げ、③アラスカの州昇格などの最初の情報源はマスコミが圧倒的に多く、パーソナルコミュニケーションは少なかったという。ラザースフェルドも情報を「伝えるだけ」の段階では,対人コミュニケーションの重要性は下がり、マスメディアの直接的な影響がより大きくなると後に認めている(1963)。

(2) 二段階の流れは複雑な伝達過程を考えていない

「二段階の流れ」においては「フォロワーがオピニオンリーダーに話を聞いて採用する」というような単純化された過程で説明されてしまっているのである。

たとえば社会学者のE.M.ロジャースは「時間要素」を重視し、過程を段階的に把握する必要性を主張した(あとで扱う)。

(3) オピニオンリーダーか非リーダーかという二分法で考えすぎている

社会心理学者のC・R・ライトとM・キャンター(1967)は、オピニオンリーダー、意見追求者意見回避者という新たな3分類を提案している。

オピニオンリーダーは他者から参照されやすい存在であるとされている。ただし、必ずしも積極的に説得するとは限らないという。

「リーダーは常に能動的に影響を与える存在だ」という前提は誤った理解に陥る可能性があるらしい。

たとえば本人にその気がなくても、ある製品を使っていたり、使っている報告を聞いただけで他の人が模倣したりする可能性があるといえる(影響を与える意図が必ずしもないケース)。

意見追求者は特定の争点や話題について、他人の意見を積極的に探し求める人びとである。コミュニケーション行動が活発で、将来的にオピニオンリーダーになることも少なくないという。

意見回避者は他人の見解を求めず、コミュニケーション過程から距離を取る人びとである。情報交換が不活発で、オピニオンリーダーになる可能性はほぼないという。

(4) 人々が互いに意見を交換し合う水平的なやり取りを無視している

マーケティング学者のJ・アルント(1968)によると、パーソナルコミュニケーションは非リーダーからオピニオンリーダーへの流れも存在するという。さらに、非リーダーからオピニオンリーダーへの働きかけが予想以上に活発だったという点もポイントである。「リーダーと非リーダーが伝達者の役割と受容者の役割とをしばしば交換し合った」というのは重要な指摘だろう。

社会心理学者のトロルダールとヴァン・ダムは「(主要なニュース・トピックに関する)対面的コミュニケーションは意見を求めるというよりも、意見を共有することで特徴づけられる」と述べている。

人びとは上から下へと一方的に影響を受けるのではなく、リーダー同士、フォロワー同士、リーダーとフォロワー同士で意見を共有的に交換するコミュニケーションを行っているのである。

社会心理学者のJ. P. ロビンソン(1976)は、オピニオンリーダー同士の水平的な相互作用や、マスメディアからの一段階的な影響のケースを考慮して、修正された多段階図式を提案している。ロビンソンの図に、リーダーとフォロワーの相互作用やフォロワー同士の相互作用を加えるとこのようなイメージとなる。

(5) 情報の流れと影響を区別できていない

社会心理学者のN・リン(1973)は、第1段階が情報の流れであり、第二段階が影響の流れであると捉えている。しかしラザースフェルドらはそれらを明確に区別できていないという。リンは「マスメディアからオピニオンリーダーへの情報の流れは、非リーダーへの流れより大きいはずである」という命題は多くの研究で確認できているという。一方で、「オピニオンリーダーから非リーダーへの影響は、逆方向より大きいはずである」という命題はオピニオンリーダーの研究で確認されないものが多かったという。

その他:構造的な力に対する軽視

これらの5つの批判の他にも、メディア研究者のギットリン (1978) は、二段階の流れ仮説はマスメディアの構造的な力に触れていないと批判している。フォロワーは限定的にしか効果を受けていないのだから、マスメディアはそこまで危険ではない、という印象を与えてしまうのだろう。

たとえば特定の政権を明らかに贔屓して扱ってもそこまで問題視されないという意見につながりやすいといえる。

社会心理学者のクラウスとデイビス(1976)は、二段階の流れモデルがアメリカのマスコミュニケーション研究に影響を与え続けた理由に、アメリカ社会に特有の政治観や秩序観を挙げている。

マスメディアの一方的な影響ではなく、人々の対面的なやりとりを通して情報が受容されるという「民主主義社会としての健全さ」が望ましいという考え方である。こうした価値判断と反するようなマスメディアの性質(事実判断)が無視されがちとなってしまうと、たしかに危険だといえる。

ロジャースらの「イノベーションにおける採用者カテゴリー」について

ロジャースにおける「採用者カテゴリー」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

農村社会学者のロジャース(Rogers,E.M.)は、『技術革新の普及過程』(1971)で新製品(イノベーション)がコミュニティの中でどのように採用されていくのかの普及研究を行い、イノベーションにおける人間の意思決定モデルの一般化を行ったという。

ロジャースのモデルでは個人の意思決定としての「技術の採用過程」と、新しい技術が広がっていく「技術の伝搬過程」が区別されている。

それぞれの過程において対人コミュニケーションの影響力が異なることをロジャーズは論じていく。ラザースフェルドらの単純化されたモデル(コミュニケーションの二段階の流れ)の修正とも捉えることができる。

POINT

採用者カテゴリー(英:adopter categories):新しい技術や製品(イノベーション)を取り入れるタイミングに応じて人々を分類した概念のこと。ロジャースは以下の4タイプに分類している。

(1)イノベーター(Innovators): 最も早く新しいものを取り入れる人。流行を追うより自ら実験的に採用する傾向があるという。いわゆる変人、オタクであり、他者に対する影響力は限定的だという。

(2)初期採用者(英:early adopters):比較的早く採用し、周囲に影響を与える人達のこと。オピニオンリーダーと最も重なり合う概念。

(3)フォロワー(追従者):他人の影響を受けて採用する人達。前期フォロワーと後期フォロワーに分かれるという。

(4)ラガード(遅滞者):最も遅れて採用する人達。

成員の割合を図にするとこのようなイメージになる。イノベーターはごく少数で、オピニオンリーダーも次点で少数である。ちなみにオピニオンリーダー尺度の最大値は初期採用者の時点で最大となるという。

ブリッジとクリークとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

POINT

ブリッジ(英:bridge):複数のクリーク(≒集団)をつなぐ経路や接続部分のこと。

ブリッジに位置する、集団の内側と外側をつなぐ橋渡し的役割を果たすような人がオピニオンリーダーとなる。

図にするとこのようなイメージとなる。

Aの位置は外側の世界からもたらされるイノベーション導入の窓口になるという点がポイントである。

ホランダーにおける「特異性信頼理論」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

比較的早く採用したというだけでは初期採用者とはいえない。そういえるためには、周囲に影響(インフルエンス)を与えられる人間でなければならない。

たとえばX集団にAは20人の知り合いがいて、Y集団には1人、Z集団には1人しか知り合いがいないとする。Y集団の成員からの新情報(イノベーション)をX集団に広めるためには、X集団の成員に「信用」されていなければならない。

社会心理学者のホランダー(Hollander,E.P.,1974)は「特異性信頼理論」というリーダーシップに関する理論を主張した。

POINT

特異性-信頼理論(英:Idiosyncrasy-Credit Theory):リーダーとなる人間はまず規範に従い信頼を積む → 能力を示して信頼を強化 → 変革行動でリーダーシップを発揮するという段階的・相互作用的プロセスでリーダーシップが成立すると考える理論のこと。

図にするとこのようなイメージとなる。

ブリッジに位置しているだけでは足りず、影響を与えたい集団から「信用」されていなければならない。信用されるためには集団に同調を示したり、貢献しなければならないというわけだ。

たとえばある学校のクラスの人間Aが「この新しいアプリは使いやすい」と周囲に紹介しても、クラスのルールやマナーを守っていなかったり、普段から勉強を手伝ったり、有益な情報を教えるなどの行為をしていない場合は信用されていないといえる。

オピニオン・リーダーにおける同調性と逸脱性

オピニオンリーダーは集団に同調的かつ、逸脱的(革新的)であるという両義性が面白い。これは矛盾ではなく、抽象度が違うといえる。

この場合の同調性は抽象度が高く、メタコミュニケーション的である。「普段は同調的な信頼できる人間が言う」というコンテクストの中で、「革新的な言動をする」という行為が許容されるのである。もちろん、その革新の性質が著しく同調性の土台を崩すようなケースは受け入れられる可能性は低く、バランスが問題となる。たとえば違法アプリの導入などは受け入れられる可能性が低い場合が多いだろう。一方で信頼度が著しく高い場合は受け入れられてしまう危険性もあるといえる。

オピニオンリーダーの具体例、実証研究

1945年にラザースフェルドらがイリノイ州のディケーター(都市の名前)で、女性消費者の調査を行ったという。日用品の買い物、流行、社会的・政治的問題、映画鑑賞の4つの分野が主に対象となる(カッツ&ラザースフェルド『パーソナル・インフルエンス』,1955)。

800人の女性に2度の面接が行われ、その女性たちの影響者(オピニオンリーダー)として指名された人々にも面接が行われたという。

影響者は1549人いたというが、そのうち突き止められて面接されたのは634人である。

(1)買い物行動に関する影響の流れ

・オピニオンリーダーは「家族の成員が多く、社交性が高い主婦」に集中した。

・影響は社会的な立場が似ている知人同士で起こりやすく年長者から若い人へ向かうことが多かった。

・夫や子どもが主に使う商品については、友人関係よりも家族の中でも意見交換の影響が強くなっていた。

マスメディアや対人関係の影響の割合を表にしたものがこちらである。

買い物ではパーソナルコミュニケーションが強く影響していることがわかる。

(2) ファッションなどの流行

・未婚の女性がオピニオンリーダーになりやすい。

・立場の違う人に影響が及ぶ場合には、社交性が高い中間層の人が影響の中心になることが多い。

・若い人の流行が年上に広がると想定されていたが、そのような流れは家族の中でしか確認されなかった。

マスメディアや対人関係の影響の割合を表にしたものがこちらである。

ファッションはパーソナルコミュニケーションが強く影響していることがわかる。

影響源の比率(流行変容者のみ)の表がこちら。

リーダーより非リーダーのほうが対人コミュニケーションに影響を受けていることがわかる。

(3) 映画鑑賞

・映画を頻繁に観に行く若い未婚女性がオピニオンリーダーになりやすい。家族よりも友人などと一緒に映画を観ることが多かったそうだ(ブリッジに位置しやすいのかもしれない)。

・影響は上下関係や年齢差を越えて流れるのではなく、同じ年齢層の仲間同士、つまり一緒に映画を観に行く友人関係の中で主に生じていた。

マスメディアや対人関係の影響の割合を表にしたものがこちらである。

映画鑑賞はパーソナルコミュニケーションが強く影響していることがわかる。

(4) 社会的・政治的問題

・社交性や学歴などの社会的地位が高い人がオピニオンリーダーになりやすい

・オピニオンリーダーの絶対数は少なかったという。ただし、夫婦間の影響が強いという。オピニオンリーダーはマスメディアに影響を強く受けると予想されていたが、実際は影響が少なかったという。

マスメディアからの「情報の流れ」は多いが、「影響の流れ」は少なかったということになる。

オピニオンリーダーは単にマスメディアの内容を肯定してフォロワーに流すわけではないという点は重要である。

買い物や映画でも、マスメディアからオピニオンリーダーへの影響は一貫した結果が得られなかったという。

オピニオンリーダーと非リーダーの比較の表がこちら。学歴や雑誌の購読数などで分類されている。

アメリカ大統領選挙における調査

ラザースフェルドらは1940年のアメリカ大統領選挙で調査を行ったという(ラザースフェルド、バーナード・ベレルソン、ヘーゼル・ゴーデット『ピープルズ・チョイス』,1944)。

ランダムサンプリング(回答者の無作為抽出)、パネル調査(同一回答者に繰り返し調査を行って態度変化を追うもの)といった方法は当時、斬新な方法だったという。

目的はマスメディアの情報が投票行動にどのように影響を与えるかを検証することである。

その結果、投票行動に強く影響を与えているのはラジオや印刷物といったマスメディアではなく、オピニオンリーダーだったという。そして、彼らはどんな職業の中にも、社会的・経済的階層の中にも存在したという。

検証結果からいくつか立てられた仮説を紹介する。

・人々は彼らの仲間と同じ投票をする傾向がある

・妻は夫と同じ投票をする傾向がある

・クラブの会員は他の会員達と同じ投票をする傾向がある

具体的な数値としては、マスメディアに接して意見を何度か変えようか躊躇した人びとが15%、意見を完全に変えた人は8%だったという。

大半の人は意見を変えるのではなく、元々もっていた意見を「強化」する傾向があったという。これはのちに、マスメディアの「限定効果論」として整理されていくことになり、強力効果論を否定するものとして位置づけられていくことになる。現代ではマスメディアの議題設定効果や教化効果、フレーミング効果など他の種類の効果も分析されている(これらはマスメディアの間接的な説得の影響力の高さにフォーカスを当てているものだといえる)。

得られる教訓

オピニオンリーダーから得られる教訓

マスメディアから一方的に情報を我々が受容するのではなく、身近なオピニオンリーダーを媒介にすることでそれらが修正、拡大、あるいは縮小されてその他多くのフォロワーに伝えられ、影響を与えるという観点を学べることができてよかった。

そもそもマスメディアが直接的に我々に影響を与えることは必ずしも悪いことではない。マスメディアが不健全であり、歪んだり偏った情報を人びとに与えようとしたときに問題が生じるのだといえる。

また、「客観的事実」を報道するということはどういうことなのかも考える必要があるだろう。また、事実であったとしても、一部の事実しか報道しない、一部の事実を配列的に前面に過剰に強調するといったあり方では「中立的」とはいえない。

こうした危険性はオピニオンリーダーにもいえるのであり、彼らが歪んでいない情報を歪めて広げることもありえる。

マスメディアはスポンサーがいて成り立っているので、ステークホルダー(利害関係者)の側面が強い。スポンサーの利益と相反するような報道を構造的にしにくいのである。たとえば甘い炭酸飲料のスポンサーがついているニュース番組は、そうした飲料の健康に関するネガティブな事実を報道しにくい。オピニオンリーダーもステークホルダーの場合があるが、マスメディアのように明確で長期的なスポンサーがついている場合はより少ないと推測することができる。

ただし、オピニオンリーダーはマスメディアのように厳格なルール(放送倫理のような)に基づいていない場合があり、暴走する場合もありうる(もちろん各種のSNSにもルールは存在するが)。公になっていない場合は特に客観的な批判が難しいかもしれない。

政党が戦略として、「身近な人達に積極的に自分たちを支持するように働きかけてほしい」と党員に過度に働きかけるケースもありうる。宗教勧誘やマルチ商法でも同じような戦略が使われる場合もある。

オピニオンリーダーにチェックされるからマスメディアは歪んだ情報を広めにくくなるという牽制効果という点で、構造的に評価されているのだろう。また、オピニオンリーダーの健全な姿の一つの参考として社会学者のマンハイムにおける知識人像を考えていいのかもしれない(できるだけ特定の階層、利害関係から自由で、かつ自覚的な人間像)。

クラウスらが述べていたように、「二段階の流れ」の仮説には民主主義的な相互作用、討論、監視が健全であるという前提がある。ようするに、「二段階の流れ」であるべきだという前提で話が進んでいるのである。

「相互作用、討論、参加、権力集中への監視が重要だ」という民主主義的な主張は理解できる。そして、そもそも過剰な監視をしなくていいようなマスメディアのあり方、構造を考えるべきだという主張も理解できる。

大事なのは特定の方法に固執することではなく、機能(=結果)である。「人びとができるだけ歪んだ情報に影響されないようにする」という結果を、できるだけ健全な方法を用いて実現するためにはどうしたらいいのかを考えていく必要がある。

他に個人的に面白かったのは、「オピニオンリーダー同士が争う点」である。オピニオンリーダー同士の監視、相互作用があるという多段階のシステムがあるのは面白い。

しかし、過剰な競争関係を促すようなシステムがあると、結果的に歪んだ結果を生みかねないので気をつける必要がある。修正するシステムのヒントとして、フォロワーとリーダーの役割交換が存在するという点は重要になるだろう。

現代ではインターネットの発展、AIの発展によって、ラザースフェルドらが想定した事態とはすこし事情が変わってきている。具体的な誰でもない、抽象的な人間としてのAIが新たなオピニオンリーダーとなる時代も、近い内にやってくるかもしれない。

また、最近の知事選挙でマスメディアが「オールドメディア」と呼ばれ軽視、あるいは敵視され、youtubeなどのSNSにおける媒体(いわばニューメディア)が力を(いい意味でも悪い意味でも)発揮していた現象も興味深い。

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