動画での説明
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はじめに
社会心理学とは、人間の社会的な振る舞いの法則や仕組みを解明する学問である。
この動画シリーズは下の図に示すように、創造発見学に位置づけられている。
この記事のシリーズは創造発見学に位置づけられている。要するに、アイデアをひらめくための情報を学ぼうというわけである。ビジネス、友人関係、学業、さまざまなものにそれぞれ活かしてほしい。
できるだけ1ワードに説明する対象を絞っていく。※社会心理学だけではなく他の心理学を扱うこともある。
基本的な説明プロセスは、上の図の通りである。
議題設定効果に関わる問題発生の例
日常生活での失敗
ニュースで著名人の不祥事やスキャンダルばかりが繰り返し流され、その問題が社会で最も重要な問題であると考えてしまうケース。中身を実際に精査したうえで重要だと考えているわけではなく、頻繁に流されたり、メインで扱われているからという単純な理由のケース。
その他
いじめや未成年の犯罪ばかりがニュースで中心的に取り扱われると、「未成年は危ない」、「学校はいじめだらけ」と過剰に考えてしまうケース。
薬の副作用や危険性ばかりが報道され、治療しないリスクそのものが話題に挙がらず、それらを考慮できなくなってしまうケース。
選挙期間中、メディアが特定の争点や話題を繰り返し報道することで、有権者はその争点が一番重要だと優先順位を形成してしまい、ほかの争点を考慮できないケース。
たとえば「経済」に特化して報道が繰り返されると、社会保障、教育、医療、環境、人権、地方政治などほかの問題が軽視されてしまう可能性がある。
2026年1月22日に、とある情報番組で「各政党がめざす方向性などについて『優しくて穏やかな日本』、『強くてこわい日本』という項目をつくり、7つの政党をそのいずれかに分類する」という内容があった。
こうした議題設定のあり方は、政治的公平性を損なうのではないかという批判が生じている。メディアは単に事実を報告するのではなく、事実を編集・選択して報道する媒体であり、そのあり方が中立的ではない場合もありうる。そのような観点から考える際に、社会心理学でいう「議題設定効果」の理解、及び類似する効果の理解は重要になる。
議題設定効果
社会心理学における「議題設定効果」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
1972年にマコームズとショーは「新聞がどの争点をどれだけ目立つ形で扱っているか(例:トップ記事か、後ろのページか)」と「その地域の住民が何を重要な政治問題だと考えているか」との間に、はっきりした対応関係があることを示した。
これが議題設定効果研究の直接的な始まりとされている。
議題設定効果を理解する際に必要な主要な概念は「マスメディア」、「顕出性」、「メディア議題」、「ニュース規範」、「対象・属性・ネットワーク」、「オリエンテーション欲求」、「随伴条件」などである。
さらに類似概念として「プライミング効果」や「フレーミング効果」を理解する必要がある。また、形成プロセス、実証研究を把握し、さらにメディア効果論がインターネットの発展によってどのように変動してきたのかを抑える必要がある。
・特に参考にしたページ
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,272p
マスメディアについて
社会心理学における「マスメディア」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
1920年代にアメリカで新聞、雑誌、ラジオなどの広告媒体を指して「メディア」という言葉が使われ、やがてそれらを「マスメディア」と呼称するようになったという。一般には、15世紀半ばのグーテンベルクによる活版印刷技術が、初期のマスメディアとされることが多い。
「マスコミ(マスコミュニケーション)」は主に伝達過程を意味する言葉であるが、日常的にはマスメディアと同義的に扱われることが多い。
マスメディアとそうではないメディアの区別はなんだろうか。たとえばSNSで独自の情報を提供する個人を我々は「マスメディア」とは呼ばない。商品の解説や時事の解説を行うユーチューバーに対して我々は「マスコミ」とは表現しない。どちらかといえば「インフルエンサー」などと呼ぶ。
近所で経済に詳しい人などに対しても「マスメディア」とは呼ばない(社会心理学的にはオピニオンリーダー、世俗的には情報通などというのかもしれない)。
社会心理学における「制度的送り手」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
マスメディアは「制度的送り手」であることを特徴としている。個人の気分や主観だけではなく、組織化された制度に基づいて、継続的に情報を送り出す媒体であるというわけだ。
マス(不特定多数)に組織的に、そして継続的に情報を届けるゆえに影響力をもつ媒体は社会的に制約を受けている。たとえば放送法では政治的公平性、事実の歪曲の禁止、意見が対立する問題については多角的に扱う義務が課されている。
日本のテレビ番組は放送に使える電波が限られている以上、公共性を伴わざるをえないという点もポイントだろう(国の許可が必要)。誰でも、いくらでも発信できるインターネットとの違いであるともいえる(それぞれのプラットフォームごとの規約はあるが)。
・特に参考にしたページ
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,278p
社会心理学における「戦略的中立性」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
単に法によって縛られているからマスメディアは中立的であろうとするわけではない。
マスメディアとされる媒体の多くは民間の営利団体であり、営利を目的としない団体は例外的である(NHKなど)。営利を目的とする以上、できるだけ広い範囲の視聴者を獲得する必要がある。それゆえに「戦略的中立性」と表現されることがある(最近のアメリカでは有料のチャンネルを通して多角化してきてはいる。たとえばあるテレビチャンネルでは保守的、別のチャンネルではリベララルといった棲み分けがされているケース。)。
報道は単に公共的な理由のために中立であるだけではなく、営利団体として生き残るためにも中立である必要があるというわけだ。
事実を捻じ曲げたり、一部の政党ばかりを報道するメディアは批判され、視聴者を失いかねない。放送法のような特別な規制を受けていない新聞社も、歪んだ事実ばかりを報道していれば購読者を失ってしまう。法律、道徳、自社の独自ルール、慣行などの一定の「(ニュース)規範」によってマスメディアは縛られているのである。
・特に参考にしたページ
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,278p
「顕出性」、「メディア議題」
社会心理学における「顕出性」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
送り手側からすれば、対象をどれだけ強く、頻繁に扱っているかが指標となる。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),29p
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,274p
社会心理学における「メディア議題」、「公衆議題」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
※今回は公衆と大衆の違いをとくに考慮せず、とくに自発性や討論可能性などを問わず、「不特定多数の受け手=マス」として理解することにする。つまり、「マス議題」であると仮定して進める。
たとえばテレビで50分間を少年犯罪のトピックに扱い、残り10分でその他のトピックを扱えば、少年犯罪に関する情報の顕出性が高いといえる。
同じ量でも、新聞で見開きのページにあるものと、奥にあるものでは顕出性が異なる。また、少ない量だが毎日扱えば、顕出性は高くなりやすいだろう。
議題設定効果では、送り手の顕出性が受け手の顕出性へと転移すると考えられている。少年犯罪が長く、頻繁に扱われれば、受け手もそれらの社会現象が重要だと捉えやすくなるというわけだ。
ニュース報道が受け手の認知に変化を与えているわけである。
かなり単純化すれば、ニュースの構成が、そのまま受け手の意識にコピーされているということになる。もちろん事態はそのように単純ではない。
受け手の性質によって受け取り方が変わることがある(選択的接触仮説など)。また、そもそも異なる配分をするメディアが複数ある(一つのチャンネルしか見ない、という人は少ないだろう)。インターネットの発展によってメディアが多様化し、さらに効果が単純ではなくなっている側面もある。自分はマスメディアの影響をあまり受けていないと考え、他人は受けていると考えやすいという研究もある(第三者効果)。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),29-30p
リップマンによる『世論』からメディアのあり方を理解する
リップマンにおける「疑似環境」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
政治評論家のウォルターリップマンは、「人々は現実そのものではなく、メディアを通して作られた像によって世界を理解している」という見方を体系的に示した人物として知られている。議題設定効果における主要概念は、リップマンが頻繁に参照されるという。
我々は世界の出来事を全て直接的に経験することはできない。それゆえに、情報の収集と流通を専門とする制度的媒体であるマスメディアに頼らざるをえない(依存せざるをえない)。
しかし、マスメディアが示す世界像は、現実をそのまま全面的に写し出すものではない。マスメディアが現実の解釈を歪めようと意図しなくても、編集や選択という作業がある以上、歪まざるをえないのである(哲学的には、個人が直接的に経験する場合も我々はある種の編集や選択をしているという意味で、二重、三重の編集を経ているといえる)。
我々は直接的に経験する情報と、間接的に経験する情報の複合からなる環境イメージ(疑似環境)を構築し、それを前提に生きている。それゆえに、我々の現実認識は必然的に偏らざるをえないのである。
議題設定効果の問題になると、「メディアの意図的な偏り(たとえばある芸能団体、政治家の不祥事は徹底的に報道しないなど)」に目が行きがちになる。しかし、どんなにメディアが中立的に、誠実に情報を伝達しようと努めても、選択や編集がある限り情報は偏らざるをえないことを自覚する必要がある(ウェーバー的にいえば事実判断だけではなく価値判断が入りこまざるをえない)。もし、違う編集だったら違う感じ方をしたかもしれない、ということを常に前提とし、できるだけ中立的にこちら側も同じように捉える必要があるのだろう。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),30-31p
マコームズによる同心円モデルから形成プロセスを理解する
「同心円モデル」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
コミュニケーション研究者のマコームズは、メディア議題がどのような要因(政治的、社会的、文化的条件)によって作られるのかを「同心円モデル(玉ねぎモデル)」によって整理している(McCombs,2014)。P.シューメイカーとS.リースの階層モデルを、議題設定研究向けに簡略化したものだという。
図にするとこのようになる。
一番外側の層はメディアに情報を供給する主体であり、取材源である。
彼らは基本的に中立ではなく、自らの利害を通すために情報を流している。
たとえば犯罪が行われた情報を警察はマスメディアに流している。マスメディアを通して我々に逃亡犯の危険性を伝えたり、罪を犯した人間は裁かれるということを示していると解釈することができる。しかし、警察内の不祥事は意図的に流さないこともありえるだろう。
政治家や企業なども同様である。政治家は政敵に不利な情報を流したり、企業は自分たちの宣伝のために情報を流したりする。一般人からのタレコミや一般人への取材もニュースリソースではあるが、ここでは組織的で継続的な取材源が基本として考えられている。
ニュースリソースから(意図的かどうかにかかわらず)提供されないものは、基本的に報道対象にならない。
ニュースメディアもひとつではなく、多数あると考えられる。1日前に他のニュースメディアが大々的に報道したものはもはや「NEW(新奇的)」なものではなく、報道対象とならない場合がある。同じ報道対象でも、違った側面、違ったアプローチで報道しようという変更が加えられることもある。
さらに内側の層にはニュース規範が存在する。何をニュースとして価値あるものとみなすか、どのような形式や基準で報道すべきかといった規範である。
放送法のような形式的なものだけではなく、そのメディアの会社の基本的な方針を含むものである。たとえばある新聞社は「経済に関するニュースのみを取り扱う」という方針をとるかもしれない。あるテレビメディアは「視聴者を獲得できるニュースのみを取り扱う」という方針をとるかもしれない。「不正を暴くこと」に特化する場合もあれば、「教養の周知」に特化する場合もある。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),31-32p
マクナマスにおける「ニュースバリュー」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
メディア研究者のJ.マクナマス(McManus,1994)は、ニュースバリュー(ニュースとして取り上げるに値すると判断される度合い)を10項目に分けて説明している。
①時宜性(時がちょうどよいこと)、②近接性、③影響性、④人間的興味、⑤著名性、⑥非日常性、⑦対立、⑧「良い絵」があるか、⑨面白さ、⑩話題性の10項目である。どれを重視するかはメディアごとに違うといえる。
多くの場合、メディアにはスポンサーがいる。テレビでも新聞でも広告がある。メディアはスポンサーの悪口を言いにくいという意味で、ステークホルダー(利害関係者)であるといえる。
たとえばマクドナルドがスポンサーの場合、「ファーストフードの危険性」といった情報は特集しにくいといえる。このように、さまざまな外部的制約、内部的制約の段階を経て、どの争点の、どのような側面を、どのような順番、量、頻度で報道するかが選択されていくのである。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),34-35p
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),49p
竹下俊郎さんの分類から「メディアに影響を与える権力性」について理解する
「現実構成論的視点」とは
社会学者の竹下俊郎さんは、メディア議題の形成過程に、「現実構成論的視点」と「権力論的視点」という2つの視点を加えることを提案している。
現実構成論的視点は、他のニュースメディアやニュース規範に注目し、ニュース政策という組織的活動を通して現実がどのように構成されるかを捉える視点である。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),33-34p
「権力論的視点」とは
権力論的視点とは、極端に言えば「メディア議題のあり方は社会の中で力を持つ人や組織が、どれだけメディアに影響を与えるかで決まっている」と考える見方のことであるといえる。
取材源が勝手に舞い込んでくるわけではなく、ある程度の交渉が必要になることもある。「A事件は取り扱わないから、B事件の情報をくれ」といった取引も行われているかもしれない。
力をもつ権力組織は、マスメディアを通して自分たちの印象を良くしたいと考えているとする。つまり、世論を都合のいいように操作したいのである。
マスメディアは資金や情報、スポンサーといった利益や便宜と引き換えに、そうした世論の形成に協力するかもしれない。社会的に周知すべき重要な議題だったとしても、権力組織とのつながりによって、それらを後回しにするかもしれない。
あるいは、権力組織の意向に反してでも、国民に価値のある情報を最優先で流そうとするかもしれない。権力関係の中でどのようにメディア議題が形成されるかを考えると面白い。
たとえば政治学者の蒲島郁夫さんは、マスメディアには市民運動などの、権力的に弱い集団の声を拾い上げ、世論として可視化する役割をもっているという。マスメディアが「弱い側の声を政治に届ける存在」なのか、それとも「権力側に強く規定される存在」なのか、その間で動くマスメディアのあり方を問う視点だといえる。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),31-32p
「オリエンテーション欲求」、「随伴条件」
社会心理学における「オリエンテーション欲求」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
関連性とは、ある争点やトピックが自分にとって重要だと感じられる度合いのことである。
不確実性とは、どう判断し、どう対処すべきか分からない状態の度合いのことである。
たとえば就活しなければならないとき、就職に関する争点・トピックは関連性が高い。しかし、自分だけで直接それらに関する情報を集めることは難しく、不確実性が高い。
そのような状態では、メディアなどで就活に関する情報を集めるという欲求が高まっているといえる。つまり、オリエンテーション欲求が高いといえる。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),35-36p
オールポートとポストマンによる「流言の基本法則」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
竹下俊郎さんによれば、オリエンテーション欲求はオールポートとポストマンによる「流言の基本法則」に考えが近いという(Allport & Postman,1947)。
マスメディア研究では送り手側に焦点を当てた「効果・影響研究」と、受け手側に焦点を当てた「利用・満足研究」という2つの側面がある。
送り手にはなんらかの欲求、動機、目的があり、それに応じてメディアからの情報の受け取り方が違うという点は「利用・満足研究」の側面が強い。いわば「情報処理する個人」という視点である。選択的情報接触仮説(たとえばある政党を応援する人は、ある政党を支持するようなメディアを中心に見るようになるなど)もその例である。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),37-38p
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),39p
マテスによる「オリエンテーション欲求」への修正
マテス(Matthes,2006,2008)によると、オリエンテーション欲求における関連性と不確実性は「予測因」にすぎず、欲求を直接的に測定するものではないという。
つまり、「なぜ欲求が高まりそうか」を説明する条件であり、「実際にどれだけ欲求しているか」の説明そのものではないというわけである。また、関連性のほうが不確実性よりも強力な指標であるという。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),39-42p
社会心理学における「随伴条件」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
一般に「随伴」とは、ある物事が生じる際に、それと切り離せないかたちで他の物事が同時に成立することを意味する。理論分析における随伴条件とは、原因と結果の単純な因果関係そのものではなく、その因果関係が現実に観察されるための背景的条件である。
たとえば議題設定効果においては、メディアの報道量や報道配列が原因、受け手の認知上の重要度判断が結果とされるが、その効果がどの程度生じるかは、受け手側の状況や環境条件に大きく左右される。A政党支持者とB政党支持者では、同一のニュース配列であっても重要度の受け取り方が異なる可能性がある。
このように随伴条件として「情報を処理する個人」に注目する場合、オリエンテーション欲求の水準や既存の選好のあり方が重要になる。それらの条件次第では、メディアの報道が受け手の認知にほとんど影響を及ぼさない場合も生じうる。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),35-36p
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,277p
「属性型議題設定」と「ネットワーク型議題設定」
社会心理学における「対象型議題設定」とは
1970年代に始まった議題設定効果の研究では、「何を重要な争点として取り上げるか(頻度や順番、量など)」が議題設定と考えられていた。
これが第一レベルの議題設定であり、「対象型議題設定」と名付けておくことにする。この対象は「選挙」といった抽象的なトピックもあれば、「特定の政党に関するトピック」、「選挙の公平性」といった具体的な争点の場合もある。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),43p
社会心理学における「属性型議題設定」とは
1990年代になると、第二のレベルの議題設定モデルが提起されるようになる。
メディアは単に対象(object)を強調するだけではなく、その対象の「特定の側面=属性」を強調する傾向に着目するものである。これが「属性型議題設定(attribute agenda-setting)」と呼ばれるようになる。
たとえば同じ政治家を取り扱うにしても、その人のどのような能力について扱うのかによって受け手の認知は変わりうるといえる。
テロ事件を「戦争」という側面に特化して取り扱うのか、「犯罪」という側面に特化して取り扱うのか、「宗教」という側面について取り扱うのかによっても受け手の認知は変わってくるだろう。
マコームズは議題を「新聞、テレビニュース、その他のマスメディアが作り上げた主要トピックスの優先順位のリスト、ならびに公衆や政策立案者が重要と思うトピックス」と定義している。
議題の概念を対象そのものから、対象を構成し区分している属性、対象を性格づけている特徴にまで拡張したのもマコームズである。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),43p
社会心理学における「ネットワーク型議題設定」とは
2010年代になると、若い世代の研究者を中心に第三レベルの議題設定が提起されるようになってきたという。
対象でも、対象の属性でもなく、「争点や属性どうしの結びつきの構造」が議題となるものである。このような議題は「ネットワーク型議題設定(network agenda-setting)」と呼ばれている。人は争点や人物、属性を一つずつ孤立して記憶しているのではなく、「意味的なつながりをもった関係の網として理解している」という考え方に基づいている。
メディアが「属性や争点の結びつき方」として提示するネットワーク構造が、公衆の認識構造にも対応する形で転移するという仮説がここでは重要になる。
たとえばマスコミュニケーション研究者のグオは、知事選挙や連邦上院議員選挙を対象に、候補者の属性(資質や性格など)がニュース記事内でどのように同時に言及されているか(共起)を分析している。
ネットワークのイメージ図はこのようになる。
・特に参考にしたページ
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024),43-46p
類似する効果との違い
「教化効果」と「議題設定効果」の違い
社会心理学における「教化効果」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
たとえばあるテレビのチャンネルでは、サスペンス、殺人、犯罪、権力闘争ばかりの番組が流されているとする。そうした番組を受け手が視聴し続けると、世の中を恐ろしい場所だというような社会的なリアリティが形成されるのではないかというわけである。
ガーブナーはアメリカのテレビ視聴を分析し、長時間のテレビ視聴者のほうが短時間の視聴者よりも効果が明確に見えることを検証している。
・特に参考にしたページ
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,273p
教化効果と議題設定効果の違いとは
議題設定効果は「重要性の順位」が変わるのに対して、教化効果では「世界観」が変わっている。議題設定効果は短い時間でも影響するのに対して、教化効果では長い時間が必要である。
たとえば経済の不況が高頻度で報道される場合、あるいは強調されて報道される場合、「経済の不況」が社会の中で重要なトピックだと認識されれば議題設定効果であるといえる。経済の不況に関する番組が長期的に続き、「自分たちの社会は不安定だ」という社会的リアリティが構成されると考えれば教化効果であるといえる。
「プライミング効果」と「議題設定効果」の違い
1980年代にアイエンガーらが提唱した(Iyengar & Kinder,1987:Iyengar,1991)。
プライミング効果で重要なのは、「個人の記憶内で特定の争点へのアクセス可能性が高まる」という点である。
ニュースなどで特定の争点に繰り返し接することで、その争点が記憶の中で思い出しやすくなり、判断の際に使われやすくなるというわけだ。たとえば経済的側面で政党が評価されるニュースが繰り返し報道されると、受け手は政党を判断する際に「経済的側面」を思い出しやすくなるということになる。
プライミング効果と議題設定効果の違いとは
「アクセス可能性(想起のしやすさ)」と「顕出性(認知のしやすさ)」は類似した概念であるといえ、プライミング効果を議題設定効果の一種と捉える見方もある。
ただし、プライミング効果は「個人の記憶内で特定の争点へのアクセス可能性が高まる」という過程であり、議題設定効果は「数ある争点の中で、特定の争点が重要なものとして認知される過程」という違いはある(Scheufele,2000;Scheufele & Tewksbury,2007)。
報道で強調された議題は、たしかに「個人の記憶内におけるアクセス可能性」を高める場合がある。
しかし、アクセス可能性が高まったからといって、かならずしも「ある争点が重要なものであると認知される」とは限らない。プライミング効果が生じたからといって議題設定効果が同時的に必ず生じるとは限らない。それゆえに同一視するべきではないという考え方がある。
ウィーバーによると、両者を区別したとしても、プライミングによってアクセス可能性が高まることが、争点の顕出性を高めるという議題設定効果につながるといった関係性を想定することが可能だという(Weaver,2007)。
自動的な因果関係はないかもしれないが、なにかしらの相関性はあるのだろう。たしかに想起しやすいものは重要だと思いやすい傾向はありそうだ。
・特に参考にしたページ
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,273-274p
小林 哲郎, 稲増 一憲「ネット時代の政治コミュニケーション メディア効果論の動向と展望」(2011),88p
「フレーミング効果」と「議題設定効果」の違い
社会心理学における「フレーミング効果」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
たとえば、「失業問題」という争点・トピックを扱う場合を考えてみる。経済指標などによって経済状況を提示するというAフレームを用いる場合と、失業した人のリアルな生活を撮影して伝えるというBフレームを用いる場合では受け手への伝わり方は異なる場合がある。
Aフレームの場合は社会的に大きな問題だと考えられやすく、Bフレームの場合は個人の問題だと考えられやすいそうだ。
フレーミング効果と議題設定効果の違いとは
同じ争点でも、どの側面を強調するかによって受け手の認知が変わるという考え方は議題設定効果の第二レベル、つまり「属性型議題設定」と類似している。
それゆえに、フレーミング効果を議題設定効果内に取り込むような立場が存在する。フレームの違いは属性の違いに過ぎないというわけである(Price & Tewksbury,1997)。
ただし、両者の違いを強調する立場も存在する。
プライミングや議題設定は「報道に接触すること自体」が影響をもたらすが、フレーミングにおいては「言葉遣いや表現方法など、報道内容の質的な違いが重要となる」という違いがあるからだ(Entman1993;Edy&Meirick,2007) 。
図で整理するとこのようになる。
・特に参考にしたページ
小林 哲郎, 稲増 一憲「ネット時代の政治コミュニケーション メディア効果論の動向と展望」(2011),88-89p
議題設定効果の具体例、実証研究
マコームズにおける実証研究(選挙)
マコームズの調査では、1976年のアメリカ大統領選挙において、メディアと世論の双方で14の候補者属性が共通して見つかったという。スペインの1996年の国政選挙、台湾の1994年の市長選挙、日本の1993年の国政選挙などでも多くの一致が確認されたという。実験研究によりメディア(送り手)の属性提示と世論(受け手)の属性認知との間にしばしば因果関係が見られることが確認されたということになる。
・特に参考にしたページ
イータン, 李洪千, 小川恒夫「マス・メディア, 世論, 政策間の関係に関する実証的研究 (1956 年~ 2004 年): 第 2 レベルの議題設定研究の視点から」(2014),150p
荒井紀一郎さんにおける実証研究(新聞)
荒井さんの研究では、特定の項目が購読紙で突出して多く扱われている場合、 テレビやインターネットなど他メディアへの接触が少ない人ほど、その項目を「自分にとって重要」だと認識しやすくなることが確認されたそうだ。
インターネット利用頻度が高い層であった場合も、新聞で多く扱われる争点が重要だと認識されていた点がポイントになる。
また、購読紙ごとに「重要だとされる争点」が大きく異なるという多様性も指摘されている。
そもそも新聞を見る年齢層なども検討する必要があるのかもしれない。若い世代はそもそも新聞に接する機会はほとんどない(ネットニュースなどで間接的に接することはあるだろうが)。テレビすら見なくなってきている。
・特に参考にしたページ
荒井 紀一郎「民意のベースライン―新聞報道による議題設定効果の測定―」(2014),118-119p
得られる教訓
オールドメディアとニューメディア
メディアの怖さと依存性
議題設定効果を一通り見て感じたことは、「使いようによっては受け手の認知をコントロールできる怖さ」と、「それでもメディアに情報を依存するしかない現実」である。たしかにメディアが意図的な偏向報道をした場合は問題になるが、だからといってメディアに一切接しないという行動を我々はとることが難しい。我々にはマスメディアが必要なのである。
2024年の兵庫県知事選挙のとき、「オールドメディア」という言葉を頻繁に聞いた。この言葉自体は昔からあるようだ。
「オールドメディア」と「ニューメディア」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
このyoutubeもニューメディアの一種だろう。もちろん、両者の境目は厳密なものではなく、簡易的なものである。
インターネットであったとしても、Yahooニュースのようにマスメディアの公共的インフラを背景としているサイトもある。テレビ会社や新聞社などがニュースをインターネットを通して配信している内容が上位に来ることが多い。なんの信頼性もない媒体はYahooニュースで基本的に配信することができない。
一方で、X(旧Twitter)やyoutube、ブログなどでは制度的バックアップのない、ごくふつうの個人が発信している場合が多い。
オールドメディアの偏向報道について
兵庫知事選挙では、「テレビなどのオールドメディアが情報を取得しながらあえて報道しない(テレビは真実を隠している)」という点が批判されていた。これが偏向報道というわけである。
一方で、オールドメディアのカウンター側であるyoutubeやXなどで発信している人達の内容の一部がデマであるという報道もある(事実が検証されないまま情報が拡散されている)。※実際に報道されなかった理由や内容の是非はここでは取り扱わない。
統計的理解
WVSデータ分析(安野,2018)によれば、日本では新聞・雑誌・テレビなどのオールドメディアを信頼する人が約7割いるという。
総務省の「情報通信白書」(2021)ではテレビ・ラジオ・新聞は5〜6割が「信頼できる」と回答したが、SNSや動画投稿サイトは信頼できると答えた人が約15%とかなり低水準だったそうだ。
沼田さんたちの研究(沼田,苗,池田,2020)によれば、全体の1.9%に、情報の真偽をまったく確認せずにシェアする人が存在したという。また、その人たちの34.2%は、自分を「公正・中立な立場で情報を流している」と考えているという。
SNSへの信頼度が高い人ほど、情報を確認せずに拡散する傾向が強いというわけである。
オールドメディアが偏向報道を行っているニュースが出るたびに、我々はオールドメディアへの不信感が高まっていくことになる。我々は実際に、テレビや新聞を見る頻度が減っていっている。SNSで流れるニュースしか見ないという人がいてもおかしくない。
結局はニューメディアが正しい情報を送り出してくれると考える人が増えてもおかしくない。しかし、ニューメディアへの信頼が誤った情報の拡散につながりやすいとすればそれも問題である。
たとえばウォルターらは「新聞を読む人ほど陰謀思考は相対的に弱く、SNSをよく使う人ほど陰謀思考は相対的に強い傾向がある」という(Walter & Drochon,2022)。
ただし、秦さんの研究によれば、日本では「X(旧Twitter)の利用が高いほど、むしろ陰謀論信奉が低い傾向が示された」という(秦正樹,2022)。NHKや新聞を利用する人も、陰謀論信奉が低い傾向が見られたという。プラットフォームごとの性質や、そもそも特定の性格をもったひとが特定のプラットフォームを使っているに過ぎないのかなど多角的に検討する必要があるといえる。
・特に参考にしたページ
大賀 哲, 縄田 健悟, 藤村 まこと「メディア信頼と陰謀論信念の関連性 オールドメディアとニューメディアの比較分析を通じて」,164-165p
大賀 哲, 縄田 健悟, 藤村 まこと「メディア信頼と陰謀論信念の関連性 オールドメディアとニューメディアの比較分析を通じて」,166-167p
情報リテラシーとオピニオンリーダー
メディアには偏向報道を行う可能性が構造的に存在している。オールドメディアは特に権力団体に忖度してしまいやすい構造にあるといえる。しかし、ニューメディアも制度的な信頼性が乏しい場合があり、受け手はそれらを全面的に信用することが難しい。また、ニューメディアも営利目的の場合、アクセスが稼げるなら情報の信憑性は二の次になってしまう場合があるといえる。
ニューメディアだから、オールドメディアだからと一括りに考えるのではなく、事実かどうかを一旦保留し、精査する力、「情報リテラシー」が受け手に求められているといえる。
とはいえ、現実的にどこまで我々が情報の妥当性をチェックできるのかという問題もある。現実的には相互監視的な構造が必要になるのであり、スキルがないと監視がそもそもできない。
構造的にはマスメディアが単一的ではなく、より多面的になることによって、情報の比較が可能になる必要もあるといえる。ただし、情報を比較したうえでどちらが正しいのかを判断できる知識がやはり必要になる。この意味で、適切な感覚と知識をもった、できるだけ特定の利害関係をもたないオピニオンリーダー(知識人)が監視し、共有するという構造も必要になるのではないだろうか。
参考文献
汎用文献
社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)
社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)
デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」
デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」
亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」
亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」
参考論文
竹下俊郎「メディア議題設定理論に関する付加的考察」(2024)[URL]
小林 哲郎, 稲増 一憲「ネット時代の政治コミュニケーション メディア効果論の動向と展望」(2011)[URL]
イータン, 李洪千, 小川恒夫「マス・メディア, 世論, 政策間の関係に関する実証的研究 (1956 年~ 2004 年): 第 2 レベルの議題設定研究の視点から」(2014)[URL]
荒井 紀一郎「民意のベースライン―新聞報道による議題設定効果の測定―」(2014)[URL]
大賀 哲, 縄田 健悟, 藤村 まこと「メディア信頼と陰謀論信念の関連性 オールドメディアとニューメディアの比較分析を通じて」[URL]












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