動画での説明
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はじめに
記事の分割
社会学とはなにか
社会学とは、「社会を対象とする学問」のことである。社会とは基本的に「人々の社会的行為の相互作用の集まり」を意味する(多様な捉え方が存在する)。
※「ちょっとした日常会話における秩序」から「政治闘争における秩序」まで、社会はどうなっているか(事実判断)、どうあるべきか(価値判断)を峻別しつつバランスよく分析することが重要である。このシリーズではそうした分析の枠組み(道具)や道具を通した分析例(ケース)を学んでいく。
日常に使えるパターンの発見を探すことも行っていきたい(パターン・ランゲージの作成)。
この動画チャンネルシリーズは創造発見学に位置づけられている。要するに、アイデアをひらめくための情報を学ぼうというわけである。ビジネス、友人関係、学業、さまざまなものにそれぞれ活かしてほしい。
できるだけ1ワードに説明する対象を絞っていく。
宗教と資本主義の関係
ラテン語市場の飽和と俗語市場の発展
ラテン語市場の活性化
1500年から1550年頃、ヨーロッパは好景気であり、初期資本主義的な市場における利潤追求の姿勢が、出版業者においても生じていたとアンダーソンはいう。
出版業者はヨーロッパ全域に支店を開設し、国境を超えた大きな商業団体になっていたという。ただし、初期の市場はおもにヨーロッパの文人たち、ごくわずかな「ラテン語」が読める人たちだった。
ラテン語は多くの国が共通して理解できる言語だという点がポイントである。もともとラテン語はイタリア半島中部の地域において、ラテン人が用いた言語である。
その後、ローマの勢力拡大にともなってラテン語は各地に広まり、特に西ヨーロッパで広く使われるようになった(紀元前3世紀頃から紀元前1世紀頃)。
西ローマ帝国の支配が終わった後(476年)も、中世ヨーロッパでは教会や学問などで使われ続けた。
キリスト教の初期の共通言語はギリシャ語であった(たとえば新約聖書はギリシャ語で書かれている)。
380年にローマ帝国のテオドシウス1世がキリスト教を国教としたあたりから、様々な原因によって徐々に初期キリスト教会でもラテン語が用いられるようになっていったとされている。ヨーロッパの多くの国ではキリスト教が信仰されていた。それゆえに、ラテン語の理解がキリスト教の理解につながる重要な要素であったといえる。
・特に参考にしたページ
ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(白石隆・白石さや訳) 書籍工房早山、9刷,76p
ラテン語市場の飽和
このラテン語の市場が飽和する、つまり成長が頭打ちになるまで150年ほどかかったという(1450年から1600年あたりまでだろう)。ちなみに印刷術が広まった時期のヨーロッパの人口はおよそ1億人である。
ラテン語を読める人の割合は非常に限られていた。識字率は1割ほどであり、さらにラテン語を読める人は数%以下ということになる。ちなみに1500年までに2000万冊の本が出版されている。
ラテン語の市場が飽和した後、市場において利潤を求める出版業者は「俗語(日常生活で一般の人々が使う言語)」を用いる大多数の層を相手に商売をしたいと考えるようになっていった(ラテン語よりは俗語を読める層は多いが、識字率は低いまま)。
フランス語、ロシア語、ドイツ語、ギリシャ語、スペイン語、初期英語などが俗語であり、ニュアンス的には母語に近い。ただし、ロシアの貴族層はロシア語ではなく家庭でフランス語を用いている場合があるなど、状況は複雑である。
出版業者が俗語の読み書きができる層へ市場を拡大しようと思っただけでそれが可能になるわけではない。アンダーソンは「3つの要因」が関わっているという。
ラテン語の秘儀化、宗教改革、行政中央集権化(行政俗語の採用)の3つである。これら3つの要因によってラテン語が徐々に使われなくなっていく点がポイントである。このような条件が重なり、ラテン語が衰退することで出版業者の市場は俗語が中心となっていく。
ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(白石隆・白石さや訳) 書籍工房早山、9刷,77p
ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(白石隆・白石さや訳) 書籍工房早山、9刷,82p
ラテン語の秘儀化
ラテン語とは、古代ローマで使われていた言語で、その後も(特に西)ヨーロッパの教会・行政・学問などで広く使われた共通語(lingua franca)である。古代ローマでは日常語としても使われていた。
古代ローマは多神教の社会で、当初キリスト教を迫害したが、4世紀に公認し、380年には国教とした。
フランス語はラテン語から発達したロマンス語である。英語はゲルマン語派の言語だが、ラテン語やフランス語から多くの語を取り入れている。
特に1066年のノルマン・コンクエストで、ノルマン人(フランス北部に住んでいた)がイングランドを征服した後、フランス語と英語が長期間接触し、英語に大きな影響を与えた。
しかしヨーロッパ各地でラテン語そのものが「日常語」として浸透するのではなく、あくまでも「エリート層の読み書きの言葉」として定着していった。日常語は各地の俗語であった。
たとえば一部の行政官や聖職者のみが、他の国とのやりとりのために使用する言語と考えれば理解しやすい。もし共通語がなければ、行政官はフランス語、英語、ロシア語、ウクライナ語、ドイツ語・・・といった各地の母語の読み書きを習得する必要が出てきてしまう。
ラテン語は昔から一部のエリート層しか読めないことで秘儀的であったが、近代において「別のタイプの秘儀性」へ変化していったという。
たとえばプログラミング言語がわからない人にとって、「どういうことが書かれているかわからないが、なにやらすごい」という印象を受けるイメージが、前近代的な秘儀性である。
やがて、「どういうプログラミングをしているのか」といった中身にエリート層はこだわるようになったと比喩的には考えられる。出版市場を通してキリスト教以前の文化が掘り起こされ、知識人たちの間ではキケロ(前106~前43年,古代ローマの哲学者)のラテン散文が模範とされるようになっていたとアンダーソンは説明している。
日本語でいえば「難解な漢字や言い回しが多く、ある程度知識がなければ読むことができない」イメージである。
「フェーヴルとマルタンによれば、1500年以前に出版された本の77パーセントはなおラテン語であったと推計される。1501年パリで出版された88点のうち、8点を除いて残りすべてがラテン語であったのに対し、1575年以降には大多数はフランス語となった。……『1640年以降、ラテン語で出版される本がますます少なくなり、俗語による出版がふえるにともない、出版は国際的事業たることをやめた』」(43p)とアンダーソンは述べている。
・特に参考にしたページ
ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(白石隆・白石さや訳) 書籍工房早山、9刷,78p
宗教改革と出版資本主義との関係
「宗教改革」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
POINT宗教改革(英:Protestant Reformation):カトリック教会の制度や教義に対する批判から始まり、プロテスタント諸派が成立した16世紀の宗教的・社会的変動のこと。
まずは一般的な宗教改革の知識を整理していこう。
カトリックはキリスト教の宗派のひとつであり、1世紀のキリスト教の成立や4世紀のローマ帝国による国教化などと関わっている。ただしカトリックは一枚岩ではない。
たとえば西ヨーロッパを中心とするローマ・カトリック(神聖ローマ帝国、フランス王国、イングランド王国、スペイン王国、ポルトガル王国など)と、東方正教会(ビザンツ帝国など)は対立していた。1054年に東西の教会がお互いを破門しあって分裂している。
中世末期の西ヨーロッパではローマ・カトリック教会が強い力をもっていた。しかし、免罪符の販売などの教会の腐敗、聖職者の堕落、教皇の政治への介入などへの批判が人々の間に広がっていたという。
ドイツの神学者であるマルティン・ルターが1517年にカトリック教会を批判する『95ヶ条の論題』をヴィッテンベルクの礼拝堂の扉に打ちつけたことが革命の発端であった。
宗教改革の結果、西ヨーロッパのキリスト教はカトリックとプロテスタントに分裂した。
プロテスタントの主張を簡略化して言うと、「人間は現世における行為によって救われるかどうかを左右できない」ということになる。それゆえに教会の免罪符を買うことや、教会において罪を告白することによって、天国において神に救済されるかどうかを人為的に変化させることはできないと考えられている(ただし、プロテスタント内部でも多様な立場がある)。
「宗教改革」は「出版資本主義」のおかげ?
アンダーソンによれば、宗教改革の成功はある程度「出版資本主義」のおかげだったという。ルターによる『95ヶ条の論題』は俗語であるドイツ語によって翻訳して印刷され、15日以内に国中のいたるところで目に止まるようになった。
カトリック側は(わずかな層しか読めない)ラテン語を重視していたため、出版市場をうまく利用することができなかったという点がポイントである(ただし、出版の禁止などでカトリック側は対抗している)。
ドイツでは1520年から1540年にかけての出版量が、1500年から1520年の出版量と比較して三倍に増えたという。
ルターの著作は1518年から1525年にかけて販売されたドイツ語出版物の三分の一以上を占めている。アンダーソンいわく、ルターは「名の通った最初のベストセラー作家」であり、この時代にはじめて真の「大衆的読者」や万人の手の届く「大衆文学」が形成された。
もっとも、ラテン語よりはドイツ語のほうが読める層が多いとはいえ、識字率は低いままである。しかし、エリート以外、商人や中産階級にも手が届き始めた点が重要になる。
また、ドイツ語(俗語)さえ読めればキリスト教の教えを理解できるという利益がある点が重要である。「話せるが読めないドイツ語」と「話せないし読めないラテン語」では前者のほうが学びやすい。このようにしてラテン語は衰退していくのである。
・特に参考にしたページ
ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』(白石隆・白石さや訳) 書籍工房早山、9刷,78-80p
参考文献リスト
今回の主な文献
ベネディクト・アンダーソン (著), 白石隆 白石さや (翻訳) 「定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行」
ベネディクト・アンダーソン (著), 白石隆 白石さや (翻訳) 「定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行」
ベネディクト アンダーソン (著), 糟谷 啓介 (翻訳)「比較の亡霊: ナショナリズム・東南アジア・世界」
ベネディクト アンダーソン (著), 糟谷 啓介 (翻訳)「比較の亡霊: ナショナリズム・東南アジア・世界」
ヴァルター ベンヤミン (著), Walter Benjamin (原名), 浅井 健二郎 (翻訳), 久保 哲司 (翻訳) 「ベンヤミン・コレクション (1)」
ヴァルター ベンヤミン (著), Walter Benjamin (原名), 浅井 健二郎 (翻訳), 久保 哲司 (翻訳) 「ベンヤミン・コレクション (1)」
J.(ユルゲン) ハーバマス (著), 三島 憲一 (翻訳) 「近代の哲学的ディスクルス I 」
J.(ユルゲン) ハーバマス (著), 三島 憲一 (翻訳) 「近代の哲学的ディスクルス I 」
汎用文献
佐藤俊樹「社会学の方法:その歴史と構造」
大澤真幸「社会学史」
新睦人「社会学のあゆみ」
本当にわかる社会学 フシギなくらい見えてくる
アンソニー・ギデンズ「社会学」
社会学
社会学 新版 (New Liberal Arts Selection)
クロニクル社会学
社会学用語図鑑 ―人物と用語でたどる社会学の全体像
参考論文
原田一美,「「ナチズムと人種主義」考(1) : 20世紀初頭までの系譜」(2006)[URL]
・人種主義の参考に
牲川波都季「『想像の共同体』 試論: ナショナリズムにおける言語の役割に着目して」(2005)[URL]
・アンダーソンの主張の参考に
粟津賢太「記憶と追悼の宗教社会学: 追憶の共同体をめぐる考察」(2015)[URL]
・ナショナリズム全般の参考に、特にウェーバー
竹内詩織< 査読付研究ノート> 1980 年代のナショリズム研究とローカリティ接続の試み:「創られた伝統」 と 「想像の共同体」 からの系譜(2022)[URL]
・アパデュライの主張の参考に
竹内詩織「<査読付論文>二項対立からの脱却を目指すということ:ノンダモンの視点から戯曲『タージマハルの衛兵』を記述するという試み」(2021)[URL]
・アパデュライの主張の参考に
大森いさみ 「「感覚」をつなぐ媒体としての食物:テレビ番組「今日の料理」をとおした「味」の共有」(2014)[URL]
・アパデュライの主張の参考に
梅森直之「想像の共同体」 以後のナショナリズム研究(2006)[URL]
・「比較の亡霊」の参考に
三尾稔「人類学における比較とナショナリズム: 比較の視線の転回を求めて」(2010)[URL]
・「比較の亡霊」の参考に
蔡悦「中国におけるファンダム・ナショナリズム: 現状と発展要因の考察」(2025)[URL]
・中国におけるナショナリズム論の参考に
山口裕之「歴史の天使が現れる世界ーあるいは, ベンヤミンのメシアニズムにおける二つの時間構造について」(2015)[URL]
・メシア的時間、歴史の天使の理解の参考に
三宅晶子 「ベンヤミンの< 想起> と私たち三宅晶子最終講義 (2020 年 1 月 28 日) II. テクストにおける 「想起」(2020)」[URL]
・ベンヤミンテーゼの理解に
上田廣美「ベンヤミン 「複製技術時代の芸術作品」 を読み直す」[URL]
・ベンヤミンの「複製技術の時代」の参考に
新倉 貴仁「海賊版としてのナショナリズム : ナショナリズムとメディアをめぐる理論的視座の構築」(2008)[URL]
-アンダーソンの構築主義的アプローチについて参考に
新倉 貴仁「ナショナリズム研究における構築主義 ベネディクト・アンダーソンの知と死」(2008)
[URL]
-アンダーソンの構築主義的アプローチについて参考に
遠藤英樹「ツーリズム, 創造性, オーセンティシティ」(2002)[URL]
– ヴィクター・ターナー関連
板東充彦, 飯嶋秀治, 髙橋紀子「社会科学分野におけるコミュニティ研究の概観─ 臨床心理学的コミュニティ・アセスメントへの接続─」[URL]
– ヴィクター・ターナー関連
土佐昌樹 「リミナリティと東アジアの近代性をめぐる理論的ノート」(2024)[URL]
– ヴィクター・ターナー関連
– アガンベンのホモ・サケル
井口由布「B・アンダーソン 「想像の共同体」 再考:「文化」 概念の脱構築:「文化」 概念の脱構築: 報告 2 (< 企画> シンポジウム: 世界システムの変容と地域研究の再定義)」(2004)[URL]
– アンダーソン関連
三宅晶子「「小さな門」 は開くのか?-ヴァルター・ベンヤミン 「歴史の概念について」 最後の言葉」(2002)[URL]
– 「歴史の天使」関連
鳥光美緒子「ベンヤミンは実存哲学者か?(コメント論文, 歴史に非常ブレーキをかけるもの-歴史の天使が眼差す行方-, Forum 1)」[URL]
– ベンヤミン関連、特にハーバーマスのベンヤミン解釈
小野 文生「夜が織りあげたものを昼がほどく : シェリングとベンヤミンをめぐる「交感の非歴史的テーゼ」の序にかえて(コメント論文,歴史に非常ブレーキをかけるもの-歴史の天使が眼差す行方-,Forum 1)[URL]
池田 全之「歴史に非常ブレーキをかけるもの : 歴史の天使が眼差す行方(報告論文,歴史に非常ブレーキをかけるもの-歴史の天使が眼差す行方-,Forum 1)」[URL]
井尻 直志「『密林の語り部』とナショナリズム小説—語りの構造をめぐって—」(2014)[URL]
– ベンヤミンの均質で空虚な時間意識の参考に
– アンダーソンの均質で空虚な時間意識の理解、及び「小説」についての理解。とくにジョナサン・カラーの主張。
浜 日出夫「記憶と場所 近代的時間・空間の変容」(2010)[URL]
– 時間意識の変遷について参考に
長谷正人「複製技術時代における思考の可能性-ベンヤミンの複製芸術論を読み直す」(2019)[URL]
菅谷優「ベンヤミンにおける習慣化の契機について」(2024)[URL]
佐藤貴史「問いとしての余白 拙著 『ドイツ・ユダヤ思想の光芒』 をめぐって」(2017)[URL]
– ユダヤ神秘教について
新田滋「資本主義, 資本主義的生産, 資本主義社会の区別について」(2020)[URL]
– 資本主義について
長島誠一「資本主義発展の段階理論」(2021)[URL]
– 資本主義について










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