動画での説明
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はじめに
社会心理学とは、人間の社会的な振る舞いの法則や仕組みを解明する学問である。
この動画シリーズは下の図に示すように、創造発見学に位置づけられている。
この記事のシリーズは創造発見学に位置づけられている。要するに、アイデアをひらめくための情報を学ぼうというわけである。ビジネス、友人関係、学業、さまざまなものにそれぞれ活かしてほしい。
できるだけ1ワードに説明する対象を絞っていく。※社会心理学だけではなく他の心理学を扱うこともある。
基本的な説明プロセスは、上の図の通りである。
記事の分割について
記事を分割しています。
「ホーソン効果」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
POINTホーソン効果(英:Hawthorne effect):一定の方法により観察対象であるという特別な意識を実験を通して人為的に生じさせることによって、対象者の行動が変化する効果のこと。
より端的に、広義に定義すれば「観察されると行動がそうでない場合と比べて変化する」ということになる。ただし、ただ観察されるだけだと「観客効果」と区別できないので、「意図的・人為的・制度的に観察される意識を生じさせる試み」が重要になる。
ホーソン効果は「ホーソン研究(ホーソン実験)」に由来するものである。
・特に参考にしたページ
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007),36-37p
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,353p
「ホーソン研究」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
ホーソン研究
POINTホーソン研究(英:Hawthorne experiments):1920年代後半から1930年代前半に、ウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われた、労働者の作業条件と生産性の関係を調べる一連の調査・実験のこと。
例:照明、休憩時間、賃金制度、作業時間を変えた小集団を作り、他の基準集団との違いを明らかにする。
ホーソン実験は当初、ウェスタン・エレクトリック社の企業内調査であり、実験の担当者は会社の人間だった。しかし実験が進むにつれて、ハーバード大学のエルトン・メイヨー(Elton Mayo)やフリッツ・レスリスバーガー(Fritz J. Roethlisberger)といった専門家が研究に参加するようになる。
特にメイヨーは実験のアドバイザーとして1928年の4月下旬から参加している(実験は1927年4月25日開始)。また、メイヨーは従業員を対象とした面接調査の指導を積極的に行っている。
研究によって生じたデータを解釈し、理論を構成したうえで、学者によって論文として世に出されていった。
1939年には、レスリスバーガーとディクソン(Dickson, W. J.)が公的報告書(「Management and the Worker」)を著したことで「ホーソン研究(実験)」が広く世に知られるようになる。心理学、経営学、社会学、教育学などに広く影響を及ぼしたという。
・特に参考にしたページ
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007),36-37p
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),89p
ホーソン研究ではホーソン効果という言葉が用いられていない
レスリスバーガーらは1939年の著作で「ホーソン効果」という用語を直接的に用いていない。
心理学者のアデア(Adair, J. G.)によると、1950年にフィールド調査に関するフレンチ(French, J. R. P. Jr)の論稿によって使用されたのが最初だという(※広く知られたのは1953年の論文)。
フレンチによると、ホーソン効果とは「実験対象者が受けた特別な社会的位置や取り扱い(実験条件の人工的側面)によってグループの作業量が上がった効果」を意味している。
・特に参考にしたページ
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007),36p
積極的なホーソン効果と消極的なホーソン効果の違い
1966年に、レスリスバーガーはホーソン効果には積極的なものと消極的・否定的なものの二種類があると説明している。
POINT積極的なホーソン効果ここ英語:実験担当者と対象者との間の友好的・参加的・開放的な関係によって対象者の行動が変化する効果のこと(※言及をまとめた仮の定義)。
POINT消極的なホーソン効果:実験担当者と対象者との間の一方的・非参加的・閉鎖的な関係によって対象者の行動が変化する効果のこと(※言及をまとめた仮の定義)。
ホーソン研究で明らかになったホーソン効果は、主に積極的なホーソン効果である。なぜなら、「実験者と対象者の間には監督者と一般従業員の関係の改善などが主要な理由になって行動が変化した(作業量が増大した)」とされているからである。
照明や休憩時間、賃金の制度などの物理的条件をさまざまな形で変化させても、実験グループの作業量(生産性)は向上し続けたことから、そうした「実験に由来する人間関係論的要因」が着目されるようになったのである。
「生産性の向上は物理的条件だけではなく、心理的要素、人間関係論的要素が重要であった」とレスリスバーガーらは結論づけている。
レスリスバーガーらは、「積極的なホーソン効果」は、以下の事項によって生まれたと仮定している(第一次継電器組立作業で明らかになったもの。17事項挙げられているが、コンパクトにまとめた)。
- 特別な注目や扱いを受けていると感じたこと。
- 実験によって、監督方法や実験担当者との関係が変化したこと。
- 自分たちの社会的な立場や態度、相互関係が変化したこと。
- 自分たちの社会的な立場や態度、相互関係が変化したこと。
- 集団の規範や作業上の協力関係が変化したこと。
- 実験対象者と実験担当者・経営側との間で、目的の一致が生まれたこと。
こうした積極的なホーソン効果によって、仕事への意欲や成果が高まったことをホーソン研究は実証したとされている(後で扱うが、批判も多い)。
こうした研究成果を要約すると、ホーソン効果とは「対象者が『自分は特別に注目されている、気にかけられている』と感じることで、仕事への意欲や成果が高まる現象」である。労働者なら作業量が増大し、学生なら成績が上昇する。
問題は、人間的、社会的存在として扱われるという「人間関係論的効果」がいかなる方法によって達成されたかである。
ホーソン研究で用いられた方法によって達成されていないと仮に反証されたとしても、「人間関係論的効果によって対象者の行動がポジティブに変化しない」ことが実証されているわけではない。
ホーソン研究の妥当性と、ホーソン効果の妥当性を区別して考える必要があるといえる。方法を換えればホーソン効果が確認される可能性がある。
・特に参考にしたページ
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007),37p
観客効果や実験者効果との区別
観客効果、自己提示、評価懸念とホーソン効果の違い
ホーソン効果をより抽象的に定義すればするほど、他の効果と区別することが難しくなるという問題がある。
たとえば、他人に見られていることで、課題をするときの成績や行動が変化する現象を心理学では「観客効果」という。他人からよく見られるように意図的に振る舞うことを「自己提示」という。他人から評価されると思うことで行動が変わることを「評価懸念」という。他にも社会的促進効果、共行動効果などが考えられる。
ホーソン効果と観客効果の違いは、主に「人為的手段が意図的に講じられていること」にあると考えられる。
たとえば、たまたま教室で友人に評価されたり、観察されたりしたことから成績が上がった場合は「観客効果」であり、「ホーソン効果」と区別できる。
ただし、「あなたは実験・研究対象です」と必ずしも言う必要はない。実験と知らされずとも、実験の操作が原因で「特別な対象である」という認知が生じていればホーソン効果になりうる。
・特に参考にしたページ
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007),52p
ホーソン効果と実験者効果の違い
ホーソン効果は「実験者効果」とも類似していると言及されることがある。
POINT実験者効果(英:experimenter effect):実験者が望んでいる結果や態度が、意図せず被験者に伝わり、被験者の行動や実験結果に影響を与える現象のこと。
経営学者の大橋昭一さんによると、ホーソン効果は「被験者側が特別扱いや注目を意識すること」に焦点があり、実験者効果は「実験者側の期待や態度が被験者に伝わること」に焦点があるという。
たとえば「この勉強法はかなり効果があると思っています」と実験者が被験者に知らせる場合、被験者は「実験者の期待」を明確に理解することができる(プラセボ効果にもなりうる)。
一方で、「教材を変化させる」、「照明条件を変える」、「アンケートを行う」といったケースでは必ずしも被験者は「実験者の期待」を明確に理解することはできない。しかし、「自分は見られている、尊重されている、特別視されている」という認識が被験者に生じ、なんらかのポジティブな変化がもたらされる場合がある。
・特に参考にしたページ
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007)
「逆ホーソン効果」とは
ホーソン効果コントロール
教育心理学において、ホーソン効果は「自分が実験やテストの対象として特別に扱われていると知ることで、普段とは違う行動をして、結果が変化すること」であると考えられている(Cook, D. L.,1962)。
ホーソン研究におけるホーソン効果のうち、「参加している、特別扱いされているという知覚をもつだけで、作業増加・能率向上などの多様な結果をもたらす」という部分に限定されている。
たとえば普段の授業では普通に勉強している生徒が、「この授業は研究の対象になっています」と知らされるとする。
すると、「自分たちは特別に見られている」という知覚が生じ、「頑張らなければならない」と思うようになる。その結果、普段より熱心に授業に集中するなどしてテストの成績が高くなるというケースが考えられる。
教育心理学ではこうしたホーソン効果をいかにして生み出すかではなく、いかにして抑制するべきかという点で研究が進んでいる(ホーソン効果コントロール)。そもそも実験は「授業の効果」を測定することが目的である。それなのにもかかわらず、ホーソン効果によって結果が歪められてしまっていることになる。
たとえば新しい授業の形式では本来、70点程度の成績しかとれないはずが、90点とったとする。しかし「新しい授業の形式が20点の成績上昇をもたらした」とはいえなくなってしまう。
・特に参考にしたページ
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007),41p
「逆ホーソン効果」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
POINT逆ホーソン効果(英:reverse Hawthorne effect):「自分たちは実験グループに選ばれなかった」と感じた人が、対抗意識から普段以上に努力し、結果を良くする現象のこと(Zdep, S. M. / Irvine, S. H.,1970)。過剰反応効果とも呼ばれることがある。
特別扱いされなかった基準グループが普段以上に成績を伸ばしてしまうと、実験グループとの差異を判定しにくくなってしまう。たとえば本来なら実験グループの方が10点プラスであったのにも関わらず、10点マイナスになる可能性もある。
・特に参考にしたページ
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007),43p
参考文献
汎用文献
社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)
社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)
デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」
デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」
亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」
亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」
参考論文
稲田勝幸「科学的管理法再論」(2015)[URL]
廣瀬幹好「 科学的管理と人的要素」(2021)[URL]
廣瀬幹好「科学的管理と産業民主主義」(2018)[URL]
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」[URL]
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果の実体をめぐる諸論調: ホーソン効果についてのいくつかの見解」(2006)[URL]
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008)
[URL]
大橋昭一「ホーソン実験についての批判的諸論調: 1960 年代ごろまでの状況を中心に」(2008[URL]
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007)[URL]
藤原元一「ホーソン実験」(1972)[URL]
吉野直人「 限定合理性の理論的射程: バーナードの戦略的要因の理論と サイモンの科学観に注目して」(2014)[URL]
Steven D. Levitt and John A. List, “Was There Really a Hawthorne Effect at the Hawthorne Plant? An Analysis of the Original Illumination Experiments”, 2009年5月, NBER Working Paper No. 15016.[URL]
Daniel Schwartz, Baruch Fischhoff, Tamar Krishnamurti, and Fallaw Sowell, “The Hawthorne Effect and Energy Awareness”, 2013年, Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS).[URL]
Gabrielle Wong-Parodi, Tamar Krishnamurti, Joshua Gluck, and Yuvraj Agarwal, “Encouraging Energy Conservation at Work: A Field Study Testing Social Norm Feedback and Awareness of Monitoring”, 2019年, Energy Policy, 130, 197-205.[URL]
Kenneth L. Leonard and Melkiory C. Masatu, “Using the Hawthorne Effect to Examine the Gap Between a Doctor’s Best Possible Practice and Actual Performance”, 2010年, Journal of Development Economics, 93(2), 226-234.[URL]
Rob McCarney, James Warner, Steve Iliffe, Robbert van Haselen, Mark Griffin, and Peter Fisher, “The Hawthorne Effect: A Randomised, Controlled Trial”, 2007年, BMC Medical Research Methodology, 7, 30.[URL]
Fuhai Hong, Tanjim Hossain, John A. List, and Migiwa Tanaka, “Testing the Theory of Multitasking: Evidence from a Natural Field Experiment in Chinese Factories”, 2013年11月, NBER Working Paper No. 19660.[URL]











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