【1ワード社会心理学第十七回(5)】ホーソン研究に対する批判

社会心理学

動画での説明

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はじめに

社会心理学とは、人間の社会的な振る舞いの法則や仕組みを解明する学問である。

この動画シリーズは下の図に示すように、創造発見学に位置づけられている。

この記事のシリーズは創造発見学に位置づけられている。要するに、アイデアをひらめくための情報を学ぼうというわけである。ビジネス、友人関係、学業、さまざまなものにそれぞれ活かしてほしい。

できるだけ1ワードに説明する対象を絞っていく。※社会心理学だけではなく他の心理学を扱うこともある。

基本的な説明プロセスは、上の図の通りである。

記事の分割について

記事を分割しています。

ギルソンによるホーソン研究批判

初期の批判では1940年に産業研究家であるギルソン(Gilson, M. B.)が、ホーソン研究によって知られた成果のほとんどを「人事管理や労務管理の現場では、実験以前からすでに知られていたことだ」と批判している。また、「労働組合や労使対立についての扱いがほとんどない」ことも批判している。

・特に参考にしたページ

大橋昭一「ホーソン実験についての批判的諸論調: 1960 年代ごろまでの状況を中心に」(2008),16-17p

フランケとカウルによるホーソン研究批判

1978年には、経営学者であるフランケ(Franke,R.H)とカウル(Kaul,J,D)が「統計の取り扱い」について批判を行った。

第一次継電器組立作業実験の資料を統計的に分析したところ、その要因の約97%は「管理的規律措置(約56%)」、「休憩時間設定などによる作業時間の変更(約32%)」、「大恐慌(約8%)」の3つの要因で説明でき、人間関係的要因や友好的管理の影響はきわめて小さいと批判した。※管理的規律措置とは、実験メンバー2名が他のメンバーと交代させられたことを指している。

・特に参考にしたページ

大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),98p

フランケらに対するウォードウェルの批判

1979年にはフランケらの分析に対して、社会学者のウォードウェル(Wardwell,W.L.)が批判を行っている。「従業員の感情や態度、相互関係を量的分析だけで判断することは難しい」という点、「管理的規律措置は処罰や脅しではなく、実験メンバーからの要望」であるという点、「実験は1929年の6月までの記録であり、10月から始まる大恐慌時の記録はない」という点が主な論点である。

※さらにこれに対するフランケの反論があるが、省略する。

・特に参考にしたページ

大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果の実体をめぐる諸論調: ホーソン効果についてのいくつかの見解」(2006)、20-21p

シュライファーによるホーソン研究批判

1980年に統計学者のシュライファー(Schlaifer.R)は「約5年間の実験(一次実験)である以上、時間的経過そのものが作業量増加に大きく影響した可能性がある」と指摘している。シュライファーによると、作業量の増加は96%が「時間的経過」で説明できるという。

・特に参考にしたページ

大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果の実体をめぐる諸論調: ホーソン効果についてのいくつかの見解」(2006)、22-23p

ピッチャーによるホーソン研究批判

1981年に心理学者のピッチャー(B.L. Pitcher)は、作業量増加の原因を「作業習熟効果」であると主張している。単に時間の経過ではなく、同じ作業を長期間続けることで、経験や学習によって作業能力が向上したという仮説である。

・特に参考にしたページ

大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果の実体をめぐる諸論調: ホーソン効果についてのいくつかの見解」(2006)、24-26p

パーソンズによるホーソン研究批判

1974年に人間工学者のパーソンズ(Parsons, H. M.)は、第1次継電器組立作業実験で作業量が増えた理由を、「単に研究者から注目されたからだ(作業者の意見を聞く、人間関係を重視した管理をするなど)」とする通俗的な見解は「神話(根拠がないのにもかかわらず正しいと信じられている言説)」となっていると批判している。

パーソンズの見解では、「情報フィードバック(作業者の作業量が自動的に記録され、その結果が作業者に伝えられていた)」と「賃金制度」が作業量が上がった理由として考えられるという。

・特に参考にしたページ

大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),90-92p

ギレスピーによるホーソン研究批判

1991年に科学史学者のギレスピー(Gillespie, R.)は「実験結果そのものと、そこから作られた理論との間にズレがあった」と批判を行っている。パーソンズと同じように、通俗的なホーソン効果の説明を「誤った神話的なもの」であると批判している。

ホーソン実験から人間関係論がそのまま発見されたのではなく、 実験結果を特定の理論に合うように解釈し、「人間関係論」という理論が作られていったという批判である。

ギレスピーは「経営側の権力が隠されている」、「5人程度の実験結果から労働者全体への一般化」、「労働者の自主性が尊重されていないケース」などを批判している。

メイヨーの人間関係論は「労働者の自由を広げる理論」というより、「経営者が労働者をうまく統合し、協働させ、生産性を高めるための理論」であるとギレスピーは結論づけている。

2000年に経営学者のパーサー(Purser, R.)は、実験室を「精神的監獄」と表現し、厳しく監視・管理する職場の側面を強調している。

・特に参考にしたページ

大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),90-98p

大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),103p

ジョーンズによるホーソン研究批判

1992年に労働経済学者のジョーンズ(Jones, S. R. G.)は「ホーソン効果は短期的な効果だけではなく、長期的な効果についても実証できたとする十分な根拠はない」と批判している。

ジョーンズは作業条件が変更されたときに、その前後で1時間あたりの作業量がどう変化したかを調べたという。その結果、作業量はむしろ下がる傾向すらあったという。30週間まで追跡しても、変更後に明確な作業量の増加を示したのは一部のメンバーだけだったという。

ただし、ホーソン研究によって効果が実証されたとするときに論拠とされるのは「約5年間にわたって作業量が増加した」という点である。全メンバーの平均作業量は49.6個/時から72.4個/時へ、約46%も増加しているからである。

ジョーンズによると、「長期的なホーソン効果を検証するために必要な十分なデータが、もともとの実験資料に存在しない」ゆえに、実証されたとすることはできないという。ホーソン効果全般ではなく、ホーソン研究による実証の可否がここでは問題となる。

・特に参考にしたページ

大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),101-103p

レヴィットらによるホーソン研究批判

2009年のレヴィットら(Steven D. Levitt and John A. List)による研究では、「照明実験」の統計分析をしなおしたという。照明実験では「照明を明るくしても暗くしても生産性が上がった」とされる研究である。

しかし、照明の変更は基本的に「日曜日」に行われ、検証は月曜日に行われることになる。労働者の生産性はもともと月曜日に高く、週の後半に低下する曜日効果があったという。また、照明実験をしていなかった部屋でも同じような現象があったという。

一方で、自然に照明が変化した場合と比べて、実験者による照明変更のときには、生産性がやや変化したという結果もみられたという。

つまり、「実験者が意図的に環境を変えた」という人為的な操作、視線、尊重といった人間関係論的効果が微量に生じていた可能性があるというわけだ。ただし、生産性は1%未満の変化であり、強い証拠もないという。

・特に参考にした論文

Steven D. Levitt and John A. List, “Was There Really a Hawthorne Effect at the Hawthorne Plant? An Analysis of the Original Illumination Experiments”, 2009, NBER Working Paper No. 15016.

参考文献

汎用文献

社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)

社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)

デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」

デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」

亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」

亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」

参考論文

稲田勝幸「科学的管理法再論」(2015)[URL]

廣瀬幹好「 科学的管理と人的要素」(2021)[URL]
廣瀬幹好「科学的管理と産業民主主義」(2018)[URL]

大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」[URL]

大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果の実体をめぐる諸論調: ホーソン効果についてのいくつかの見解」(2006)[URL]
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008)
[URL]
大橋昭一「ホーソン実験についての批判的諸論調: 1960 年代ごろまでの状況を中心に」(2008[URL]

大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007)[URL]

藤原元一「ホーソン実験」(1972)[URL]

吉野直人「 限定合理性の理論的射程: バーナードの戦略的要因の理論と サイモンの科学観に注目して」(2014)[URL]

Steven D. Levitt and John A. List, “Was There Really a Hawthorne Effect at the Hawthorne Plant? An Analysis of the Original Illumination Experiments”, 2009年5月, NBER Working Paper No. 15016.[URL]

Daniel Schwartz, Baruch Fischhoff, Tamar Krishnamurti, and Fallaw Sowell, “The Hawthorne Effect and Energy Awareness”, 2013年, Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS).[URL]

Gabrielle Wong-Parodi, Tamar Krishnamurti, Joshua Gluck, and Yuvraj Agarwal, “Encouraging Energy Conservation at Work: A Field Study Testing Social Norm Feedback and Awareness of Monitoring”, 2019年, Energy Policy, 130, 197-205.[URL]

Kenneth L. Leonard and Melkiory C. Masatu, “Using the Hawthorne Effect to Examine the Gap Between a Doctor’s Best Possible Practice and Actual Performance”, 2010年, Journal of Development Economics, 93(2), 226-234.[URL]

Rob McCarney, James Warner, Steve Iliffe, Robbert van Haselen, Mark Griffin, and Peter Fisher, “The Hawthorne Effect: A Randomised, Controlled Trial”, 2007年, BMC Medical Research Methodology, 7, 30.[URL]

Fuhai Hong, Tanjim Hossain, John A. List, and Migiwa Tanaka, “Testing the Theory of Multitasking: Evidence from a Natural Field Experiment in Chinese Factories”, 2013年11月, NBER Working Paper No. 19660.[URL]

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