【1ワード社会心理学第一七回(1)】ホーソン効果に関わる日常の具体例

社会心理学

動画での説明

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はじめに

社会心理学とは、人間の社会的な振る舞いの法則や仕組みを解明する学問である。

この動画シリーズは下の図に示すように、創造発見学に位置づけられている。

この記事のシリーズは創造発見学に位置づけられている。要するに、アイデアをひらめくための情報を学ぼうというわけである。ビジネス、友人関係、学業、さまざまなものにそれぞれ活かしてほしい。

できるだけ1ワードに説明する対象を絞っていく。※社会心理学だけではなく他の心理学を扱うこともある。

基本的な説明プロセスは、上の図の通りである。

記事の分割について

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この記事の見取り図

POINTホーソン研究におけるホーソン効果実験対象者が受けた特別な社会的位置や取り扱い(実験条件の人工的側面)によってグループの作業量が上がった効果のこと。

具体的な要因としては「人間として扱われ、感情や考えが尊重されたこと」や「監督方法や実験担当者との関係が変化したこと」、「特別な注目や扱いを受けていると感じたこと」などが挙げられている。

特別な社会的位置や取り扱いが友好的・参加的・開放的な場合を「積極的なホーソン効果」という。そうではない場合を「消極的なホーソン効果」という。ホーソン研究で見られた効果は主に「積極的なホーソン効果」である。

たとえば「特別に人格を尊重して実験を行って生産性が上がる(もしくは下がる)」場合は積極的なホーソン効果であり、「反発や不満を多くもたらす形で実験を行って生産性が下がる(もしくは上がる)」場合は消極的なホーソン効果であるといえる。

POINTホーソン効果(英:Hawthorne effect):一定の方法により観察対象であるという特別な意識を実験を通して人為的に生じさせることによって、対象者の行動が変化する効果。

たとえば教育心理学によるホーソン効果では「特別な意識」の例として、「特別に注目されていると感じること」、「実験やテストに参加していると意識すること」、「新しい教育方法やテストに刺激されること」が挙げられている。医療の現場では「専門職として優れた人間だと見られたい」意識などが挙げられている。

心理学では、ホーソン効果に類似する効果として、人に見られていることで、一人で行うときと比べて行動が変化するという「観客効果」が挙げられることがある。

観客効果は「単に見られている効果」であり、偶然の要素が強い。必ずしも「研究や観察の対象」として特別扱いされているわけではない。ホーソン効果では「実験の具体的な内容」ではなく「実験の対象であるという人為的な形式」によって特別扱いされているという意識が対象に生じる、あるいは生じてしまう点が重要である。

ホーソン効果は、生産性や成績を上げたい場合に「人間関係」が重要であるという視点を与えてくれる点で有用である。

この研究は「労働者の生産性を上げたいなら、実験を行って労働者を観察対象とすればいい」と述べているわけではない。「人間関係を良くする」という結果をもたらす機能は実験だけではないからである。たとえば職場の雰囲気を明るくする、ちょっとした旅行、言葉遣い、態度でも変わりうる。そして賃金や社内規則などの構造的な要素によっても「尊重されている」という意識が生じうる。

また、ホーソン効果は「実験」において特に知っておくべき効果であるといえる。なぜなら、「本来調べたい効果」をAとした場合、観察される効果が「A+ホーソン効果」の場合があるからである。

たとえば新しい教材の効果を確かめたいのに、「教材のテストの対象となっている」という特別な意識が生じたゆえに本来のパフォーマンスよりも高いものが出てしまっている可能性がある。それゆえに、いかにしてホーソン効果を抑制するかという「ホーソン効果コントロール」が重要になる。

 「ホーソン効果」に関わる問題発生の例

日常生活での失敗

親が見ているときだけ子どもが勉強を頑張り、見ていない間は勉強をしないようなケース。「接客調査期間」だけ店員が仕事を丁寧に行い、それ以外では適当になってしまうケース。

→観察されていることで行動が一時的に変化してしまい、普段の状況を正しく把握できず、現状を誤認する可能性がある。

「家庭の電力状況を記録します」と知らされると、観察されていないときよりも使用電力が低くなることがある。「いつもトイレを綺麗に使っていただいてありがとうございます」という張り紙も、一種の「あなたの行動を記録しています」というメッセージだと受け取ることができる。

→隠れた意図があったとしても気づかないうちにコントロールされてしまう。たとえば「キーボードの打鍵数や画面の動きを記録している」という表面上の理由でオーバーワークをもたらすケース。

「特別扱いする、注目する、観察すると生産力が上がる」という安直な理解のもとで他者をコントロールするケース(とりあえず監視する、注目するといった形式的なマニュアル化など)。

→実際は内心では特別だとは思っていないのにもかかわらず、さも特別であるかのように表面上で言及され続けると人間関係が歪になってしまう可能性がある。「単に生産性を上げようとしているだけなのではないか、制御したいだけなのではないか」という疑いのもとで生活を送らなければいけない問題が生じる。

[2-2]その他

新しい教材の効果を確かめたいのにも関わらず、「自分たちは新しい教材を使ってテストされている特別な集団だ」という意識が被験者に生じ、普段より高い成果を出してしまうケース。

→「新しい教材の効果」そのものを分析することが難しくなってしまう。学問の世界ではアンケートなどの実証研究でも問題になっている。いかにして自然な態度で実験に参加させることができるかが重要となる。

参考文献

汎用文献

社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)

社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)

デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」

デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」

亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」

亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」

参考論文

稲田勝幸「科学的管理法再論」(2015)[URL]

廣瀬幹好「 科学的管理と人的要素」(2021)[URL]
廣瀬幹好「科学的管理と産業民主主義」(2018)[URL]

大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」[URL]

大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果の実体をめぐる諸論調: ホーソン効果についてのいくつかの見解」(2006)[URL]
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008)
[URL]
大橋昭一「ホーソン実験についての批判的諸論調: 1960 年代ごろまでの状況を中心に」(2008[URL]

大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007)[URL]

藤原元一「ホーソン実験」(1972)[URL]

吉野直人「 限定合理性の理論的射程: バーナードの戦略的要因の理論と サイモンの科学観に注目して」(2014)[URL]

Steven D. Levitt and John A. List, “Was There Really a Hawthorne Effect at the Hawthorne Plant? An Analysis of the Original Illumination Experiments”, 2009年5月, NBER Working Paper No. 15016.[URL]

Daniel Schwartz, Baruch Fischhoff, Tamar Krishnamurti, and Fallaw Sowell, “The Hawthorne Effect and Energy Awareness”, 2013年, Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS).[URL]

Gabrielle Wong-Parodi, Tamar Krishnamurti, Joshua Gluck, and Yuvraj Agarwal, “Encouraging Energy Conservation at Work: A Field Study Testing Social Norm Feedback and Awareness of Monitoring”, 2019年, Energy Policy, 130, 197-205.[URL]

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Rob McCarney, James Warner, Steve Iliffe, Robbert van Haselen, Mark Griffin, and Peter Fisher, “The Hawthorne Effect: A Randomised, Controlled Trial”, 2007年, BMC Medical Research Methodology, 7, 30.[URL]

Fuhai Hong, Tanjim Hossain, John A. List, and Migiwa Tanaka, “Testing the Theory of Multitasking: Evidence from a Natural Field Experiment in Chinese Factories”, 2013年11月, NBER Working Paper No. 19660.[URL]

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