動画での説明
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はじめに
社会心理学とは、人間の社会的な振る舞いの法則や仕組みを解明する学問である。
この動画シリーズは下の図に示すように、創造発見学に位置づけられている。
この記事のシリーズは創造発見学に位置づけられている。要するに、アイデアをひらめくための情報を学ぼうというわけである。ビジネス、友人関係、学業、さまざまなものにそれぞれ活かしてほしい。
できるだけ1ワードに説明する対象を絞っていく。※社会心理学だけではなく他の心理学を扱うこともある。
基本的な説明プロセスは、上の図の通りである。
記事の分割について
記事を分割しています。
「ホーソン研究」
ホーソン研究とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
POINTホーソン研究:1924年から約8年間、ウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われた大規模な調査研究のこと。主に照明などの物理的環境や、賃金や休憩などの制度的環境を変えると生産性がどう変化するかを明らかにすることが目的。
実験を通してわかったことは、「従業員の生産性は、仕事そのものや職場環境だけで決まるのではない」という点である。
特に重要とされたのが実験によって変化した「人間関係論的な要因」である。
・特に参考にしたページ
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007),36-37p
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),89p
「人間関係論的な要因」とは
POINT人間関係論的な要因:職場における人と人との関係や、従業員の心理的・社会的な状態のこと。仕事の内容や賃金、照明などの「物理的要因」とは区別されている。
たとえばホーソン研究では、実験実施期間中に「従業員の意見を求めたり、相談をしたり、要望を聞き入れたり、おしゃべりが許可される」といった対応があったという。
こうした対応を経て、従業員たちは「特別に扱われている」という意識が生じていったのである。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),93p
「非公式集団」とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
実験グループでは「非公式集団」が生じていた点も重要である。
POINT非公式集団(英:informal group):会社が正式に作った組織ではない、従業員同士の自然発生的な仲間集団のこと。
ホーソン研究では非公式集団内部で「集団内の行動基準」が(暗黙に)作られ、メンバーの行動を規制することがわかったという。たとえば「集団内で1日に2個完成させればいい」ルールができれば、それを超えようとはしなくなる。
実験の時系列は右の図のようになる。
・特に参考にしたページ
藤原元一「ホーソン実験」(1972),53p
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),91p
照明実験
(1) 実験の目的
照明の明るさを変えると、従業員の生産量(一定時間に作った製品の量)がどう変化するのかを調べたい。
(2)実験の結果
明るさを変えないグループも、変えたグループも生産量が増えた。「物理的環境以外の要素」を考えるきっかけとなった実験である。
・特に参考にしたページ
藤原元一「ホーソン実験」(1972),54-55p
第一次、第二次継電器組立作業実験
(1) 実験の目的
従業員の人間的要素が生産性にどのような影響を与えるのかを調べたい(ただし心理学的実験であることが意識されたのは後半)。
(2) 実験の方法
6人の女性従業員を、通常の職場から離れた実験室に集め、小さな継電器を組み立ててもらった。
6人の女性従業員たちはもともと仲のよい人たちだった。作業中の会話がある程度(特別に)認められていた。生産量だけではなく、作業時間、室温、湿度、健康状態なども記録された。
実験は第1期から第13期まであり、細かく条件が変えられ続けた。たとえば休憩時間、労働時間、軽食、賃金などである。
第二次継電器組立作業実験は別の5人が選ばれ、賃金制度だけが変更されている。5人だけの集団出来高であり、他の労働者は100人単位の集団出来高である。
(3) 実験結果
「休憩時間や賃金などの労働条件を良くすると生産性が上がる」という単純な関係ではなかった。そうした要因よりも、「過度な監視から解放されているという感覚」、「尊重」、「仲間と協力できる人間関係」が重要だとわかったという。
「設備や作業方法の改善、労働時間の改善、休憩の導入による単調さの改善、賃金による刺激」以外に、「監督方法の変化」が特に重視されたのである。
特にホーソン効果が立証されたとされる論拠で用いられるのが、第一次継電器組立作業実験の、第三期と第十二期の比較である。同じような労働条件であるのにもかかわらず、一時間あたりの作業量が51個から60.7個へ増加している(19%上昇)。
1927年4月25日〜1932年2月27日の253週において、実験メンバー全体で見ると作業量は49.6個から72.4個へ、約46%上昇している。
第二次継電器組立作業実験では基準期間に比べて実験期間中、12.6%も労働量が増えたという。賃金制度をもとに戻すと、作業量は基準期間に比べて6.3%減ったという。
レスリスバーガーらは、実験期間に作業量が増えたのは、「賃金そのものよりも、5人のメンバーが第一次継電器組立作業実験のメンバーと競争しようとしたから」だと考えた。「人間関係論的要因」、「社会的要因」を重視したのである。一般に考えられているほどには、賃金に作業量を増やす刺激効果はないと結論づけられている。
・特に参考にしたページ
藤原元一「ホーソン実験」(1972),56-62p
「社会心理学」,有斐閣,補訂版第二刷,354p
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),96p
大橋昭一「ホーソン実験についての批判的諸論調: 1960 年代ごろまでの状況を中心に」(2008),19p
雲母剥ぎ作業実験
(1) 実験の目的
休憩や超過勤務などの影響を調べたい。
(2) 実験方法
実験ルームでは一般作業場と異なって午前午後に10分間休憩を各1回設けて作業量変化を記録していく。新たな五名の女子従業員が対象とされた。途中から「超勤(時間外労働)」がなくなった。
(3) 実験の結果
実験期間中に約15%の作業量増加が見られた。賃金制度を変えなくても作業量が変化することを確認することができた。
ただし、他の実験とは違い、集団出来高給制ではなく個人出来高給制である。そのため、実験メンバー同士の「集団的連帯感」が生まれにくかったという。
データだけを見れば「休憩や超勤」があるかないかだけで作業量が15パーセント増えたかのように見える。
レスリスバーガーが重要だと考えているのは、「賃金以外の要因でも生産性は上がる」という主張である。そのひとつに休憩や超勤の有無が関係しているというわけだ。
とはいえ、「休憩が許される、超勤が免除されるという事実」と、「実験室で自分たちが特別な待遇を受けているという心理的意識」のどちらがどれくらい働いたのか、ここでは特定することが難しい。
・特に参考にしたページ
藤原元一「ホーソン実験」(1972),62p
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),91p
大橋昭一「ホーソン実験についての批判的諸論調: 1960 年代ごろまでの状況を中心に」(2008),23-25p
バンク捲き線作業観察実験
(1) 実験の目的
従業員の相互関係や集団的関係をあるがままの姿・状況において調べたい(これまでも調査や面接などにより、従業員内部で作業量制限行為などがあることが認められたという経緯がある)。
(2) 実験の方法
14名の男性従業員を別室で観察した。賃金や休憩などの条件は通常の職場と同じにし、観察者が従業員の行動や会話を記録した。
(3) 実験結果
非公式集団の存在が明らかになった。非公式集団とは、会社が正式に作った組織とは別に、従業員同士の人間関係や仲間意識から自然に形成される集団のことである。
非公式集団には独自のルールや規範があり、たとえば「仕事を頑張りすぎない」という作業量制限行為を行うなど、メンバー同士の行動をコントロールする働きがあったという。
ボギーと組織的怠業の関係
この実験では一日に二個までが慣例となっていたという。「もっと生産できるのにもかかわらず、一定の量にキープする」というようなケースを一般に「組織的怠業」と表現することがある。
この実験は出来高給制度であるが、その仕組みがやや複雑である。
(1)「ボギー」という熟練作業者が達成した作業量を基準に設定された目標作業量が存在する。
(2)作業者の実績が、ボギーに対してどの程度だったかによって、その人の時間あたりの賃金率が決められる。
例:仮にボギーが100個/1時間で、実績が50個/1時間なら50%になり、ボギーの時給を1000円とすれば500円となる。
実績が高くなればなるほど時給は上がるのにもかかわらず、なぜ非公式集団は一定の量に抑えようとするのか。たとえば労働者が頑張って作業量を増やし続けた結果、「ボギー」が上がる可能性がある。
100個/1時間がボギーだったのにもかかわらず、150個/1時間がボギーになる可能性がある。これは実質的な賃率切り下げである。
レスリスバーガーの解釈では「作業量を増やしたことを理由として賃率を下げるという前例」がなく、また、「経済的な仕組みを、作業者たちが明確に理解していたとはいえない」という。
そのため、「経験したこともない賃率切り下げを恐れて、作業量をわざと制限した」のではなく、「仲間との関係を守りたい、集団のルールに従いたい、仲間から浮きたくない」という人間関係論的なセンチメント(感情、仲間意識、集団意識)が理由だと考えられている。
仮に本人が「賃金が下がるから仕事を抑える」と表面的に言っていたとしても、その背後には「仲間と同じペースで働きたい」、「仲間から嫌われたくない」といった意識が深層(実際の理由)にはあると考えられている。
したがって、合理的・経済的な理由は行動を説明する表面的な形に過ぎないとレスリスバーガーは考えたのである。
・特に参考にしたページ
藤原元一「ホーソン実験」(1972),67-68p
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008),104p
大橋昭一「ホーソン実験についての批判的諸論調: 1960 年代ごろまでの状況を中心に」(2008),1920p
従業員面接調査
(1) 実験の目的
従業員の仕事への不満や意識などを調べたい。
一般従業員面接調査は1928年9月に始まった。時系列的には第一次継電器組立作業実験の途中から開始されたということになる。1931年5月からは、一般従業員だけではなく監督者に対して同じような面接が始まっている。
照明実験を経て、「物理的条件以外になにか従業員の生産性を上げるものがあるのではないか」という疑問が会社では生じていた。さらに第一次継電器組立作業実験の開始によって「賃金制度の変化」、「休憩の導入」、「監督者の接し方の変化」のいずれかの要素が要因ではないかと社内で考えられていた。
この原因を詳しく調べるために、メイヨーなどの専門家にアドバイスを求め、追加の実験や面接調査を行っていたということが全体の経緯となる。
さらに背景として、ホーソン工場の従業員は1927年から1929年にかけて、およそ2倍の4万人に増えており、「多くの監督者を新しく育成する必要」があったという点がポイントである。
面接以前にも、監督者を集めて会議をしたり、勉強をする「監督者訓練」が行われていた。しかし、「実際の従業員が何を考え、何に不満を持っているのかという具体的な情報」が不足していたという問題があったのである。そのため、一般従業員(監督者より下位の社員)の意見を直接聞く必要があった。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」,54-55p
(2) 実験の方法
「暫定的面接調査」が1928年9月に検査部門の1600名を対象に行われた。本格的調査は1929年に製造部門で行われ、1930年にはホーソン工場全部門で行われた。ただし、1930年末には大恐慌の影響が深刻となり一般作業員面接調査は21126名の時点で中止となった。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験についての批判的諸論調: 1960 年代ごろまでの状況を中心に」(2008),14-15p
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」,54p
暫定的面接調査の方法
面接担当者は監督者5人で、男性3人、女性2人から構成されている。男性従業員には男性の監督者が、女性従業員には女性の監督者が面接を行った。
面接では「面接の内容は秘密にする(誰がどの発言をしたかわからないように加工する)」、「仕事を中断して面接する場合でも、賃金を減らさない」、「面接担当者は賛成・反対の意見を言わない」、「助言をしない」といったルールが設けられている。
面接は30分程度で、「監督」、「作業条件」、「職務」について、それぞれ「気に入っている」か「気に入らないか」を記録するというものであった。
たとえば備品や設備、室温、照明、騒音、不潔さ、昇進、単調さ、監督方法、配属、休暇・・・といったさまざまなリストにそって従業員は回答していくことになる。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」,54-55p
本格的面接調査の方法
暫定的面接調査では「従業員が何に不満を持っているか」の集計であった。本格的面接調査では「従業員がどのように感じ、なぜそのように感じるのか」を数量的ではなく、質的に把握することが目的となる。
1929年2月には、面接の調査を担当する「産業研究部」が設置されている。メイヨーの指示によってこのときレスリスバーガーが調査に参加し、調査方法を練り上げている。
面接時間は30分から90分へと増え、記録のページ数も2.5ページから10ページに増えている。新しい方法では「従業員に自由に話してもらうこと」が重視され、「間接的手法」と呼ばれている。
面接で集めたコメントは「客観的事実」(例:機械が故障している)、「本人が感じたこと」(例:職場が暑い)、「個人的な意見・希望」(例:賃金が低い)の三種類に分けて整理されている。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」,56-58p
本来的面接方法の確立
自由に話してもらう方法(間接的手法)では、記録が長くなり、分析に時間がかかってしまうという問題があった。
相手の話を妨げずに、かつ必要な情報を効率的に得るための方法が検討されていったのである。たとえば「相手が話している内容について、その意味を理解しながら、必要に応じて話を促すこと」、「相手自身が自分の経験や感情を自由に表現できるようにすること」が重視されている。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」,59-60p
ホーソン研究におけるセンチメントとは
レスリスバーガーらは面接の本質を、「質問して答えを集めるのではなく、本人に自分の経験や感情、いわゆるセンチメントを語ってもらうこと」であると考えていたという。
POINTセンチメント(英:sentiment):ある出来事や人間関係について、本人が抱いている感情的な態度や感じ方のこと。
例:従業員が「監督者が自分に冷たい」と言った場合、単に「監督者が実際に何をしたのか」を調べるだけでは不十分である。
発言の背景(社会的文脈)として、従業員の過去の経験、監督者との人間関係、同僚との関係、昇進への期待、職場での立場などをセットで理解する必要がある。
気に入るかどうかといった単純な感情だけではなく、態度、人間関係、集団関係といった「社会的意味」を明らかにすることが必要なのである。
1931年以降は、監督者を対象とした面接活動が始まり、間接的面接方法ではなく本来的面接方法が採用され始める。
また、実験対象者(第一次継電器組立作業実験の五人などに対して)に個人的な問題まで詳しく聞く面接活動が行われるようになる。
ただし、対象者には強い抵抗感があり、この面接は約22回で終了したという。対象者からは「もう話すことは何もない」といった反応が最後の方には出ていたという。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」,59-60p
カウンセリング活動
こうした面接調査の成果は、「カウンセリング活動」へとつながっていった。カウンセリング活動は1936年から1955年まで続いたという。
担当者は単なるインタビュアーではなく、カウンセラーとして活動するようになる。話を聞くだけではなく、問題を整理し、自分自身で状況を理解するように働きかけ、助言も行うようになったという。カウンセラーは現場を巡回し、話しかけ、カウンセリングが必要かどうかを聞いていくという手法をとる。
カウンセリングは「従業員の不満や不安を把握し、会社との関係を維持するための手段」という意味合いもあったという。
ホーソン工場でカウンセラーとして活躍したヴィレンスキー(Wilensky,J.L.)はこのカウンセリング活動について、「これがなければ労働組合側に利用されたであろう従業員の不満や敵意を発散させるのに有用なものであった」と述べている。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」,70-71p
(3) 面接の結果
暫定的面接調査が始まると、従業員は「自分たちの意見を聞いてもらえることを好意的に受け止めた」という。また、「一部の監督者が従業員への接し方を改めるようになった」という。ただし、調査を警戒する監督者もいたという。
ホーソン効果との関わりでいうと、「実験担当者(監督者)と対象者(一般従業員)との間の友好的・参加的・開放的な関係」の改善につながったという点がポイントだろう。
監督者は一般従業員が何について不満をもっているかを把握できるようになる。明らかに不満を持たれている管理の仕方や態度を取り続けることは難しい。不満がなくなれば生産性も向上するであろうことも予想できる。
同じような物理的環境・制度であるのにもかかわらず、第三期と第十二期で一時間あたりの作業量が51個から60.7個へ増加している(19%上昇)のは、調査によって人間関係が改善されたことが関係していると考えることが可能になる。
こちらは間接面接例である(数値はコメント数)。
1929年の最初の1600名にはイエス・ノーのみで、コメントを求めなかった(暫定面接)。そのあとの対象者ではより本格的に、コメントがもしあれば好きなように話させ、記録された(間接面接)。
不満のコメントは照明やロッカーなど、物理的な作業条件に関連したものが多かったという。賃金制度や監督、勤務時間などの労働条件は満足・不満が拮抗していた。福利厚生では満足のコメントが多かった。コメントが最も多かったのは「賃金・給与」であった(満足が4987、不満が6816)。
ただし、状況が良い場合はわざわざ満足というコメントをするものが少なかったという。状況が悪い場合はコメントをするものが多かった。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」,55-57p
非合理的な産物
メイヨーは面接調査の結果から、「従業員の不満というものがほとんどすべて非合理的な産物(irrational constructions)として理解していいものである」という見解を述べている。
たとえば「賃金は時給10ドルである」、「室温は28度である」といった事実は誰の目にも明らかである。それに対して、時給10ドルや室温28度に不満をもつかどうかは主観的事実が関係してくる。「同僚より低いと不満に感じる」、「監督者が横柄だと感じている」といったセンチメントが不満に含まれているのである。
POINT非合理的な産物(英:irrational constructions):現実の客観的事実をそのまま反映した不満ではなく、本人の感情や認識によって作られた不満のこと。
例えば職場の不満として「賃金が低い」というものがあれば、「賃金を上げさえすれば解決する」かのように思える。しかし「同僚より低い」という人間関係的なセンチメントが関係している場合、両方の賃金を上げたとしても不満は残り、片方だけ上げるともう一方に不満が残る可能性がある。
したがって、そもそもその人はなぜライバル意識を燃やしているのか、どういう状況でそうした心理は生じやすいのかといった「社会的コンテクスト」を明らかにする必要がある。
メイヨーらは「センチメントこそが実は行動を左右する」という理解をもとに、引き続きそれを引き出すための調査を展開していった。レスリスバーガーは従業員面接調査で担当者たちに対し、「従業員が本当のことを話しているかどうかは重要ではない、その者が本当だと信じていることが重要だ」とすら述べている。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」,58p
従業員の5つの関心事シンドローム
カウンセリングの結果から、従業員は大きく5つの関心事シンドローム(シンドロームとは、複数の問題や感情が互いに関連してまとまっていることを意味する)をもっていると整理されている。
1:職務の確保(英:keeping a job)
仕事を失わず、安全に働き続けたいという関心。
2:友好と所属(英:friendship and belonging)
同僚と良好な関係を築き、集団に受け入れられたいという関心。
3:不公平排除の感情(英:felt injustices)
不公平に扱われていると感じ、それをなくしてほしいという関心。
4:権威の問題(英:authority)
監督者などの権威との関係について生じる関心。
5:職務上での発展と個人の発展(英:job and individual development)
昇進や技能向上など、仕事や自分自身が成長したいという関心。
・特に参考にしたページ
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」,71p
参考文献
汎用文献
社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)
社会心理学 補訂版 (New Liberal Arts Selection)
デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」
デイヴィッド・マクレイニー (著), 安原 和見 (翻訳) 「思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方」
亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」
亀田 達也(監修)「眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学」
参考論文
稲田勝幸「科学的管理法再論」(2015)[URL]
廣瀬幹好「 科学的管理と人的要素」(2021)[URL]
廣瀬幹好「科学的管理と産業民主主義」(2018)[URL]
大橋昭一「ホーソン実験・従業員面接活動の進展過程: インタビュー活動からカウンセリング活動へ」[URL]
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果の実体をめぐる諸論調: ホーソン効果についてのいくつかの見解」(2006)[URL]
大橋昭一「ホーソン実験についての近年の諸論調: 1990 年以降における諸論調を中心に」(2008)
[URL]
大橋昭一「ホーソン実験についての批判的諸論調: 1960 年代ごろまでの状況を中心に」(2008[URL]
大橋昭一, 竹林浩志「ホーソン効果をめぐる教育学分野の諸論調: 1990 年代ごろまでの状況を中心に」(2007)[URL]
藤原元一「ホーソン実験」(1972)[URL]
吉野直人「 限定合理性の理論的射程: バーナードの戦略的要因の理論と サイモンの科学観に注目して」(2014)[URL]
Steven D. Levitt and John A. List, “Was There Really a Hawthorne Effect at the Hawthorne Plant? An Analysis of the Original Illumination Experiments”, 2009年5月, NBER Working Paper No. 15016.[URL]
Daniel Schwartz, Baruch Fischhoff, Tamar Krishnamurti, and Fallaw Sowell, “The Hawthorne Effect and Energy Awareness”, 2013年, Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS).[URL]
Gabrielle Wong-Parodi, Tamar Krishnamurti, Joshua Gluck, and Yuvraj Agarwal, “Encouraging Energy Conservation at Work: A Field Study Testing Social Norm Feedback and Awareness of Monitoring”, 2019年, Energy Policy, 130, 197-205.[URL]
Kenneth L. Leonard and Melkiory C. Masatu, “Using the Hawthorne Effect to Examine the Gap Between a Doctor’s Best Possible Practice and Actual Performance”, 2010年, Journal of Development Economics, 93(2), 226-234.[URL]
Rob McCarney, James Warner, Steve Iliffe, Robbert van Haselen, Mark Griffin, and Peter Fisher, “The Hawthorne Effect: A Randomised, Controlled Trial”, 2007年, BMC Medical Research Methodology, 7, 30.[URL]
Fuhai Hong, Tanjim Hossain, John A. List, and Migiwa Tanaka, “Testing the Theory of Multitasking: Evidence from a Natural Field Experiment in Chinese Factories”, 2013年11月, NBER Working Paper No. 19660.[URL]


















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