【創造技法第一回】ブレインストーミングとはなにか

発散技法
  1. はじめに
    1. 動画での説明
  2. 【前提】はじめに
    1. 【1】創造技法の位置づけ
    2. 【2】発散技法と収束技法
  3. 【定義】ブレインストーミングとは
    1. 【1】ブレインストーミングの定義
    2. 【2】ブレインストーミングの4つのルール
    3. 【3】会議のメンバー数はどう決めるのか、1人でもできるか
    4. 【4】会議のリーダーは何をすればいいのか
      1. 制限の明示とは
      2. 呼び水の質問とは
    5. 【5】道具は何を揃えればいいのか
    6. 【6】時間はどう決めるのか
  4. 【やり方】ブレインストーミングのプロセス
    1. 【1】基本的なプロセス
    2. 【2】細かいプロセス
      1. 準備段階
      2. アイスブレークとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      3. 整理・討論・評価段階
      4. ブレインストーミングのプロセスの例
    3. 【3】ヒント
  5. 【応用】ブレインストーミングの変化型
    1. 【1】逆ブレインストーミング(RBS法)
    2. 【2】電子ブレインストーミング(EBS法)
    3. 【3】AMA法、MBS法、SBS法、CBS法
      1. アメリカ経営管理協会法(AMA法)とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      2. 三菱樹脂ブレインストーミング法(MBS法)とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      3. 順番ブレインストーミング(SBS法)とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      4. カードブレインストーミング(CBS法)とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
    4. 【4】ルーマンが使用したツェッテルカステン(カード・ファイル・システム)
      1. ツェッテルカステンとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      2. ルーマンによるツェッテルカステンのやり方
      3. デジタルでツェッテルカステンをやる方が合理的ではないか
  6. 【コラム】創造は個人と集団、どちらが効率的か?
    1. 【1】創発性とはなにか
      1. 創発性とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説
      2. ブレインストーミングにおける創発性とは
    2. 【2】一人ブレインストーミングのほうがアイデアがたくさん出るという実験結果
      1. 1人でやるほうが集団でやるよりも生産性が高いケース
      2. 一人でやるより集団でやるほうが生産性が高いケース
  7. 参考文献リスト
    1. 汎用文献
      1. 高橋 誠「問題解決手法の知識」
      2. 鷲田 小彌太「分かる使える思考法事典: アイディアを生み出し、形にする50の技法」
      3. 三谷宏治「マジビジプロ 超図解 三谷教授と学ぶ 「拡げる」×「絞る」で明快! 全思考法カタログ」
      4. B.ミラー (著), 弓野 憲一 (監修, 翻訳), 宗吉 秀樹 (翻訳) 「創造的問題解決: なぜ問題が解決できないのか?」
      5. 高橋 誠 「新編創造力事典: 日本人の創造力を開発する」
    2. 参考論文
      1. 画像の出典(フリー画像)

はじめに

動画での説明

・この記事の「概要・要約」はyoutubeの動画の冒頭にありますのでぜひ参照してください

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【前提】はじめに

【1】創造技法の位置づけ

前提条件を整理していく。創造認識学、創造美学、創造発見学、創造技法という各用語を定義づけて、それらを関連付けた図がこちら。

「創造をなんのためにするのか(why)」といった分野への規範的な追求は、創造認識学や創造美学で行っていく。「創造とはなにか(what)」というプロセスや定義については、創造発見学の分野で行っていく。

創造の定義は、「社会的な評価」が不可欠な創造と、不可欠ではないケースの2つに分類することができる。前者では「独自性のある有用な成果」が重視されがちであり、後者では「創造的な過程、および健全な人格」が重視されがちである。

他にも、社会や個人(心理など)を一旦、創造のプロセスから切り離して「純粋な創造過程(創造システム)」を観察する立場もあることを創造発見学の第二回の動画で学んだ(井庭崇さんの創造理論)。

たとえば創造認識学においては「適切な認識論の形成のために創造が行われるべきである」と仮定する。

たとえば創造発見学のひとつである社会学では、「社会(全体)のために個人(部分)が創造をする」という位置づけが重視されることを学んだ。単純に「他の人との違い」という新奇性・独自性や生産性があればいいのではなく、それが健全で、美しく、聖性を帯びているようなあり方をするものが望ましいと仮定し、その条件や前提を探っていくという方向が創造認識学の根幹となる。

もちろん、表面的には創造が「自分のため」、「家族のため」、「会社のため」、「お金を稼ぐため」といった具体的な目的のために使用されることがほとんだろう。

いずれにせよ、「何らかの解決すべき問題発見」が生じ、そのための手段として創造技法が用いられることになる。つまり、創造技法は「問題解決のための手段」なのである。

そして、創造技法は「手段」の問題、つまり「どうやって創造が可能になるのか、創造性が高まるのか」という問題にアプローチしていく分野であるといえる。

いわば「道具」の探求である。そしてその道具の一つにブレインストーミングという技法があるという位置づけになる。

創造発見学第四回:「創造発見学とはなにか」

【2】発散技法と収束技法

問題解決技法を整理すると上の図のようになる。

POINT

発散的思考あるテーマや問題に対して、多数の多様なアイデアを自由に広げていく段階の思考のこと。例: 思いつく限りの使い道を出す、新しい視点を探る、型にはまらない発想をする。

POINT

収束的思考出されたアイデアを整理・評価し、目的に合うものを選び取る段階の思考のこと。例: 実現可能性を検討する、効果的な解決策を絞り込む。

要するに発散技法とは「アイデアをたくさん出していく道具」であり、収束技法とは「出てきたアイデアを用いて問題を解決していく道具」であるといえる。

そして今回扱うブレインストーミングは発散技法の代表的な技法である。

【創造発見学第二回】創造性とはなにか

【定義】ブレインストーミングとは

【1】ブレインストーミングの定義

POINT

ブレインストーミング(brain storming)ある課題や問題に対して、自由にたくさんのアイデアを出すことで、創造的な解決策を見つけようとする発想法のこと。

ブレインストーミングを発案したのは米国の広告会社の副社長であったオズボーンである。

オズボーン自身の定義によれば「少人数の人々が1時間ほどクリエイティヴなイマジネーションを働かせるためにのみ行う会議の一種」であるという。

ブレインストーミングを直訳すると「脳(頭)の嵐」となる。ブレインストーミングという用語自体はオズボーンが発案した以前にも存在しており、「突然のひらめき、インスピレーション」や「突然の精神錯乱」といった意味で用いられていたらしい。

一人ではたどり着けないような異常な状態に集団でもっていくことによって、アイデアをひらめこうというわけである。比喩的に言えば一つの雨粒ではなく、まさに複数の雨粒によって嵐を起こすということになる。社会学的に言えばデュルケムの「集合的沸騰」に近いのかもしれない。

「ブレインストーミング(以下BSと略称)とは、米国の広告会社、BBDO社の副社長だったアレックス・オズボーンが創始した発散技法です。『独創的な問題に突撃するために頭を使う』からこの名がよいと、オズボーンは彼の著書『独創力を伸ばせ』(ダイヤモンド社)の中で述べています。」

備考:Batton, Barton, Durstine & Osborn社の略
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,67p

「BSのもう一つの特徴は、集団技法であるということです。当初はメンバー数は十名くらいが適切といわれていたのですが、私の経験では五~八名くらいが最適と思われます。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,67p

「ブレインストーミングの提唱者であるAlexander Faickney Osbornによれば,「ブレインストームとは少人数の人々が1時間ほどクリエイティヴなイマジネーションを働かせるためにのみ行う会議の一種――特定の問題についてアイデアを出し合うもの」とされている。」
神原理, 大林守「創造的な思考と関係性を生み出すブレインストーミングの手法: アクティブラーニングのための思考トレーニング」[2014],133p

【2】ブレインストーミングの4つのルール

  1. (ルール1) 批判厳禁:人の発言を一切批判してはいけない。アイデアを出す段階ではそれのみに集中し、他人のアイデアを評価したりしない(判断を遅延させる)。
  2. (ルール2) 自由奔放: アイデアは自由奔放であればあるほどよい。奇想天外なことでも何でも発言してみることを歓迎する空気を作る。
  3. (ルール3) 質より量:「アイデアの数が多ければ多いほどいいアイデアが増える可能性が多くなる」ので、まずは質を気にせずに量を重視していく。
  4. (ルール4) 結合改善:チーム内のメンバーが出したアイデアを組み合わせたり改善してアイデアを発展させていく。「このアイデアは私のものだと」いう意識をできるだけなくし、貪欲に他者の出したアイデアを取り入れていく。

「①批判厳禁、②自由奔放、③質より量、④結合改善」
「『批判厳禁』とは、発散思考そのものの特徴です。人の発言を一切批判してはいけないというわけです。何を言っても批判されないということになれば、グループが自由になります。その上、次の『自由奔放』のルールで、大いにリラックスして、『ヘンなことを言っても許される』という雰囲気づくりをします。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,68p
「『質より量』、一番誤解されるのがこのルールです。もちろん、質はどうでもいいと言っているのではありません。量が質を生むという考え方です。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,68p
「集団発想の時『もっとよいものを』などと言われると、メンバーは頭の中で批判をし始めます。すると『批判厳禁』になりません。批判を辞めることは、この意味からも大切です。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,68p
「最後のルールは、『結合改善』。これはBSが集団技法である証拠です。人の言ったアイデアに他の人が便乗してよりよりアイデアにする。このルールがあるからそれができます。このアイデアは俺のものだという意識をなくさせ、全員のものとするわけです。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,68p

「Osborn(1953)はブレインストーミングの実施ガイドとして,以下の4つの原則を挙げている。①よい悪いの批判はしない。②自由奔放を歓迎する。③量を求める。④結合と改善を求める。「①よい悪いの批判はしない」とは,アイデアを出す際には出すことに専念し,判断はあとで行うということである。すなわち判断遅延とも言われる。「②自由奔放を歓迎する」とは,奇想天外なことでも何でも発言してみることを歓迎する(川喜田,1996)ということである。「③量を求める」とは,アイデアの数が多ければ多いほどいいアイデアが増える可能性が多くなるというOsbornの経験値や実験の結果に基づくものである(Osborn,1953)。「④結合と改善を求める」とはチーム内のメンバーが出したアイデアを組み合わせたり改善して,アイデアを発展させることである。」

仙波真二 「 ブレインストーミング再考―意味のイノベーションにおけるブレインストーミングの解釈に関する一考察―」、328-329p「ブレインストーミングの提唱者であるAlexanderFaickneyOsbornによれば,「ブレインストームとは少人数の人々が1時間ほどクリエイティヴなイマジネーションを働かせるためにのみ行う会議の一種――特定の問題についてアイデアを出し合うもの」とされている8)。そして,それは以下の4原則に則って進められる9)。①批判の先延ばし…提案されたアイデア(意見)は,その場で良否を判断するのではなく最後まで控えておく。自分自身のアイデアに対しても批判は控える②自由な発言を歓迎する…メンバーが提案するアイデアは自由奔放であればあるほどよい③できるだけ多くのアイデアを出す…質より量で,提案されるアイデアの数が多ければ多いほど,よいアイデアが増える可能性が高くなる④アイデア同士を結びつけてさらによいアイデアを生成する…メンバーは自身のアイデアを提案するだけなく,他人のアイデアをもっとよいものに変えるにはどうしたらよいか,また2-3のアイデアを別のアイデアにまとめるにはどうしたらよいかを考える。」
神原理, 大林守「創造的な思考と関係性を生み出すブレインストーミングの手法: アクティブラーニングのための思考トレーニング」[2014],133p

【3】会議のメンバー数はどう決めるのか、1人でもできるか

オズボーンは5人から10人のメンバーが理想だと述べている。3人から5人という人もいたり(仙波真二さん)、5人から8人という人もいる(高橋誠さん)。最後のコラムで検討するが、人数が多ければ多いほど生産性が高くなるブレインストーミングの種類もある。

オズボーンはブレインストーミングの人数を個人(1人)、2人組、3人以上の三つのパターンに分けている。

ここで大事なのは一人でもブレインストーミングが可能だという点である。これも最後のコラムで検討するが、1人や2人のブレインストーミングの方がアイデアの数が多くなるという研究もある。オズボーンによると、3人以上の場合は批判がアイデア創出の邪魔になりやすいが、2人組の場合はそれほど邪魔にならないという。また、2人組の場合は、1人の時間とペアの時間を組み合わせるといいという。

高橋さんの説明によれば、専門家は半数以下としたほうがいいという。たとえば「コンビニでよく売れる食べ物」がブレインストーミングのテーマだとすれば、コンビニの専門家は半数以下がいいということになる。

また、できるだけ同じ階層同士のメンバーがよいという(上司と部下よりも、部下同士のほうが望ましいことになる)。上司が入る場合は、あまり権威的に、偉そうにならないように空気を調整する必要がある。

たとえば食べ物の専門家、都市構造の専門家、心理学の専門家、マーケティングの専門家などが集まると、たくさんのアイデアが生まれていきそうな気がする。専門家を揃えることが難しければ、性別や年齢、趣味や部署といった違いでもいいのだろう。

「④メンバーは混成部隊。メンバーの数は五~八名程度。十名以上では多すぎます。そのテーマの専門家は半数以下とし、他はいろいろな専門分野の人が望ましいのです。同じ階層同士がよいのですが、やむをえない時でも、権威主義の上司には遠慮してもらいましょう。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,70p

「ブレインストーミングの人数について,Osborn(1953)は以下の3パターンについて述べている。個人によるブレインストーミング、二人組のブレインストーミング、三人以上のブレインストーミング。一般的にブレインストーミングというと「三人以上のブレインストーミング」を思い浮かべるであろう。Osborn(1953)によると,ブレインストーミングの人数は5人から10人の間を理想とするとしているが,筆者の経験では社会的手抜き(Finke,1996)などを考慮すると3人から5人がベストな人数である。一方,Osborn(1953)は個人によるブレインストーミングと二人組のブレインストーミングについても述べている。「個人によるブレインストーミング」とは,一人でアイデア創出を行うことであり,Osborn(1953)は絶対必要であると強調している。「二人組のブレインストーミング」とは,二人の気のあった仲間でアイデア発想を行うことで,「デートする」というメタファーを用いている(Osborn,1953)。興味深いことに,二人組のペアで実施する場合は,批判がたいした邪魔にならない(Osborn,1953)。また,ペアで実施する場合のテクニックとして,一人の時間とペアの時間を組み合わせることであるとしている(Osborn,1953)。」
仙波真二 「 ブレインストーミング再考―意味のイノベーションにおけるブレインストーミングの解釈に関する一考察―」[2021],329-330p

【4】会議のリーダーは何をすればいいのか

メンバーの中には「リーダー(ファシリテーター、司会)」と「記録係」という2つの役割が必要になる。メンバーが少ない場合、記録係(書記)はリーダーが兼用してもいいらしい。メンバーが少なければリーダーもアイデアを出す役割も同時にこなしていく必要があるだろう。リーダー役を順番に交代するという手もある。

ファシリテーターとは、議論や会議、学習の場などで参加者の対話を円滑に進め、目的達成を支援する役割を担う人を意味する。リーダーはファシリテーターという意味であり、メンバーとの上下関係を意味するものではない。

リーダーには「制限の明示」と「呼び水の質問」という2つの重要な役割があるという。また、基本として「メンバーの気持ちを乗せる」という役割も挙げられるだろう。(どんなものであっても)アイデアを出してきたメンバーに笑顔で、「いいね!」と対応していくケースなども、自由奔放な空気をつくり出すことができるといえる(リーダー以外にも言えることだが)。

「ブレインストーミングというネーミングがあまりにも秀逸だったせいで、結構誤解されていますが、ただヒトが集まって自由に論じることがブレインストーミングではありません。テーマを決め、メンバーを選び、事前に連絡し、当日も細かなステップが考えられています。アイスブレークに始まり、アイデアを出してもらって、詰まれば『呼び水』質問を投げかけて、さらなるアイデアの発露を促します。個々のアイデアの評価は、最後までしません。そういったプロセス(進め方の手順)が備わったものなのです。」
三谷宏治「全思考法カタログ」,Discover,第一版,16-17p

「『呼び水』質問の例。目的を問い直す『コンビニって何?』。意図を確認する『売上じゃなくて新規客を増やしたい』。アイデアの源を問う『どうしてそれを思いついたの?』」
三谷宏治「全思考法カタログ」,Discover,第一版,19p

「③リーダーは乗せ上手な人。BSの鍵はリーダーです。リーダーはテーマについて事前によく考え、考えるべき観点を多角的に洗い出しておきます。実践する時には、全員をうまく乗せながら的はずれな方向に行かないよう、うまくリードし、さまざまな角度からアイデアを出せるよう方向づけます。人数が少ない時は、リーダーは書記兼用でいいでしょう。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,70p

制限の明示とは

制限の明示とは、テーマを具体的に絞らせるということである。たとえば「コンビニの売上を伸ばす」というテーマにおいて、「日本の経済を良くする」、「法律の改正を目指す」といった抽象的なテーマに関するアイデアに移行しすぎないように調整する役割がリーダーにある。

もちろんリーダーも「批判」はしてはならない。アイデアを出した相手への批判にならないように、テーマを具体的に絞るように上手く、柔らかく誘導していく必要がある。

後でプロセスで詳細を述べるが、そもそもブレインストーミングではメンバーがアイデアを出す前にテーマを決める段階や制限を決める段階がある。

たとえば「コンビニの売上をよくする」というテーマにおいて、「食べ物に限定する」という制限を事前にルールとして盛り込むのである。その範囲なら自由奔放でよいということになる。どの範囲までなら制限を超えてもいいかなど、その時々の柔軟な対応が必要になる。

たとえば高橋さんの例では、「現場の事故を少なくするには」では有効なアイデアがほとんど出てこなかったが、「ヘルメットを全員にかぶらせるには」という具体的な制限されたテーマではアイデアがたくさん出たそうだ。

「①テーマは具体的に。BSがうまくいかない最大の原因は、テーマ選びの失敗です。テーマは具体的にしましょう。ある建築会社で『現場の事故を少なくするには』というテーマで実施したところ、ほとんど有効なアイデアは出てきませんでした。そこで『ヘルメットを全員にかぶらせるには』というテーマにしたところ、驚くほどよいアイデアがたくさん見つかったそうです。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,69p

呼び水の質問とは

呼び水とは一般に「物事の本格的な流れや動きを引き出すために、最初に与える小さなきっかけ」のことを意味する。

この言葉は昔の手動ポンプのしくみに由来する。ポンプに空気が多く残っているとポンプが機能せず、水を入れることで空気が抜けてポンプが機能するようになるそうだ。

少量の水がきっかけとなって、密閉されて水を吸い上げる仕組みが生じ、大量の水が出るようになるということである。

ではブレインストーミングにおける「呼び水の質問」とはなにか。

たとえば「そもそもどういう時に客はお菓子を食べたいと思うのだろうか」といった質問をメンバーに投げかけてみるケースなどが考えられる。目的や因果関係など、さまざまな質問のあり方が考えられる(オズボーンの強制連想法なども参考にするといいのかもしれない。強制連想法はいずれ、違う回で扱う)。

【5】道具は何を揃えればいいのか

ブレインストーミングはさまざまなタイプがあるので一様にはいえない。たとえばインターネット上のチャットだけのやり取りで行う場合やリモートで対面しながら通話する場合では大きな机や大きな用紙はいらないだろう。

この場合はスマホ、PC、カメラやアプリなどが必要になるのかもしれない。ブレインストーミングのツールは検索すれば出てくる。各人が一つのページに書き込んでいけるような環境が望ましいと言える。

オフラインでやり取りする場合は、大きな用紙や机などが必要になる。文字はできるだけ大きく太く書くと、全員が見やすくなる。

机は楕円形など、全員の顔が見渡せるようにするといいらしい。記録は保存する必要があるので、黒板や白板に直接記入するのではなく、模造紙を貼ったほうがいいという(カメラで撮ればほとんど同じではあるが、再利用という点では異なる)。その点、電子黒板はより使いやすい道具だと言える。

比較的大きな付箋(糊のついた部分で簡単に貼ったりはがしたりできる小さなメモ用紙)があると、より整理しやすくなる。

各人が付箋(ポストイットなど)に書き込みながら、大きな模造紙にそれぞれ貼っていくのである。類似したアイデアがあった場合は、まとめて近づけておくと整理しやすい。付箋がない場合は紙をちぎって両面テープやセロテープなどで貼っていくことも可能なのかもしれない。

「②会場は四角く並べた机、大きな用紙も用意。落ち着いた会議室で、机は四角形、できれば楕円形で全員の顔が見渡せるようにします。あとで評価するため、記入用紙は保存する必要があるので、黒板や白板への記入はよくありません。ですから、黒板に模造紙を貼り、フェルトペンで発言を書きます。あるいは机上にA3サイズの用紙を置き、全員が見える大きさの字でアイデアを書きます。コピーのできる電子黒板は、BSには最適な道具といえます。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,70

【6】時間はどう決めるのか

だいたいどの書籍でも「(最大)1時間」と解説されている。問題は、どのプロセスにどの程度時間が割かれるかということである。

プロセスは後で詳細に検討するが、基本的に「(テーマの提示やルールの提示、自己紹介などをも含めて)アイデアを出し切るまでの時間が最大1時間」と考えていいだろう。アイデアを実際に評価したりする時間は1日置くこともあるようだ。

「ブレインストーミングの提唱者であるAlexanderFaickneyOsbornによれば,「ブレインストームとは少人数の人々が1時間ほどクリエイティヴなイマジネーションを働かせるためにのみ行う会議の一種――特定の問題についてアイデアを出し合うもの」とされている8)。」
神原理, 大林守「創造的な思考と関係性を生み出すブレインストーミングの手法: アクティブラーニングのための思考トレーニング」[2014],133p
「⑥時間は一時間程度、それ以上なら休憩を。時間は一時間程度が適当です。途中で発言がつまったら各自に数分考えさせ、再度発言を求めます。一時間以上やる場合は、途中で五分くらい休憩をとると効果的です。一時間もあれば、テーマにもよりますが、最低でも百くらいのアイデアは出るでしょう。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,71p

【やり方】ブレインストーミングのプロセス

【1】基本的なプロセス

  1. [第一段階] 発散段階:メンバーが自由に、大量にアイデアを出す段階
  2. [第二段階] 収束段階:出されたアイデアを評価し、分類・選別する段階。

第1段階である発散段階は、先程学んだ4つのルール(批判厳禁、自由奔放、質より量、結合改善)に従って行われる。

第二段階である収束段階は、独自性、実現可能性、効果などさまざまな尺度においてアイデアを「評価」する段階である。最終的に最も望ましいアイデアが「選択」されることになる。

【2】細かいプロセス

準備段階

「アイデアを出して、検討する」という単純な段階の他にも、「準備段階」が存在する。

たとえばまず「テーマを決める」という段階があったり、「メンバーを決める」という段階がある。もちろん、テーマは会議の中でより具体的に深まったり、すこし抽象的に薄まったりと変動する可能性もある。1日でメンバー決めもアイデア出し、評価も全てやる場合もあれば、分ける場合もあり、規模や緊急性など、ケースバイケースだといえる。

アイスブレークとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

テーマやメンバーが決まったあとには、アイスブレークの時間がある。

POINT

アイスブレーク一般に、初対面の人同士や緊張した場面で、場の雰囲気を和らげ、打ち解けるために行う短い導入的コミュニケーション活動を意味する。

たとえばアイスブレークとして「自己紹介」が存在する。名前や所属、趣味や出身地などをそれぞれのメンバーが話すことで、すこしはぎこちない空気が緩和するはずである。

メンバーが打ち解けずに固いままだと、自由奔放というブレインストーミングのルールが徹底されず、お互いに遠慮してアイデアがあまり出てこないかもしれない。自己紹介だけで空気が緩和しない場合はもっと特別な工夫が必要になるだろう(簡単なゲームをしたり、インタビューをし合ったりするなど)。

整理・討論・評価段階

アイスブレークが終わった後で、リーダーがテーマの説明を行ったり、ルールの説明を行ったりすることになる。

その次にやっとアイデアをメンバーで出し合う段階となる。それで終わりではなく、次はアイデアを整理する段階がある。

たとえば似ているアイデアをグループにまとめたり、相反するアイデアを矢印などでわかりやすく対比させたりすることができる。経済性やイメージアップといった要素でも分類することができるだろう。

そして最後に、整理されたアイデアをもとにメンバーで評価を行い、選択する段階が来る。

ブレインストーミングのプロセスの例

図にするとこのようなイメージとなる。時間はあくまでも例である。

「BSを一度やると意見が数多く出るので、その数に安心してしまいがちです。BSは一度で済ますのではなく、翁テーマでまずラフ発想をし、そして次には、前のBSの中の重要なポイントを選び、細かなテーマとしてBSを再度行うなど、繰り返していくことが大切です。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,72p

【3】ヒント

アイデアを出す際は付箋(ポストイットなど)を使い、付箋は「1枚につき1案のみを簡潔に書く」と効率的だという。

メンバーは付箋に書かれた自分のアイデアを説明し、模造紙やホワイトボードなどに貼り付けていくということになる。

付箋なので、いつでも移動が可能という点で便利になる。また、整理の際も同じグループでまとめやすくなるという利点がある。

付箋には「番号」をふっておくと整理しやすくなる(呼びやすくもなる)。模造紙や黒板、白板にはテーマを大きく書いておくと話題から大きくそれにくくなるだろう。誰が出したアイデアかなどの名前は書かないほうがいいだろう。

【応用】ブレインストーミングの変化型

【1】逆ブレインストーミング(RBS法)

コロンビア大学のウィリアム・ダガンという経営者が提唱しているという新しいブレインストーミングだという。ただしこれに関する情報はあまり多くない。

ブレインストーミングが短時間(1時間程度)だとすれば逆ブレインストーミングは一週間のように長時間をかけて行うという。

ブレインストーミングは「その場の思いつきへの依存」としてネガティブに評価されており、長期間によって「無意識部分」を時間をかけてアイデアを創出する方法をダガンは提唱している。たとえばニュートンが単に木から林檎が落ちただけで、その場の思いつきとして重力を発見したわけではなく、長時間にわたる思考によって無意識下でアイデアがそれぞれつながり、連鎖し、質の高いアイデアが生じたといえるのだろう(このプロセスを言語化することが難しい場合は、たんに暗黙知などとも言われるのだろう)。

ここで重要なのは、アイデアを考えている時間はほとんど「ひとり」であるという点だろう。ブレインストーミングで他人のアイデアを聞きながら、「その手があったか!ではこれはどうだ」とアイデアを出していく、一体感のあるイメージではない。

もちろん、長期間考えられたアイデアを各メンバーで持ち寄って、それぞれ説明し、集団で議論し、結合や改善が行われるプロセスもある。アイデアを出す段階の改変といったところだろう。「質より量」ではなく、「量より質」の立場であるともいえる。

海外のサイトでは、逆ブレインストーミングには「否定的な思考」を取り入れることがポイントだと説明されている(もちろん、批判は厳禁である)。

たとえば「どうしたらコンビニでおにぎりがもっと売れるか」ではなく、「どうしたらコンビニでおにぎりがもっと売れないか」を徹底的に考えるということになる。逆のアイデアをたくさん出すことによってアイデアが反転し、肯定的な思考のヒントになると言ったところだろう。店がお客様のアンケートなどでネガティブな意見を集めたがるのも、その一種なのかもしれない。

「ブレインストーミングはその会議の1~2時間に勝負を賭けるやり方です。それに対して、コロンビア大学のウィリアム・ダガンが提唱するのが、逆ブレインストーミング(Reverse Brainstorming)です。彼は、通常のブレインストーミングは『その場の思いつきへの依存』だといいます。それよりも自分の脳、特に無意識部分を信じて、時間をかけてアイデアを探せ、と。具体的には、・テーマを限定せずアイデア会議を定期開催する(毎週、隔週など)・過去一週間思いついたアイデアを持ち寄る・面白いアイデアにはそれを思いついた理由や背景の説明を求める・必要なら各自がそれを次回まで考え続ける。こんな感じです。」
「ダガンは『創造性を高めるのは想像力ではなく発見力だ』『新しい発見は幅広い知的記憶と組み合わせから生まれ、それらは無意識に行われる』と考えます。つまり、・集団戦より個人戦、・意識より無意識、・短期集中でより長時間で、ある意味・量より質を目指すやり方です。」

三谷宏治「全思考法カタログ」,Discover,第一版,20p

【2】電子ブレインストーミング(EBS法)

POINT

電子ブレインストーミング(EBS,Electronic Brainstorming)コンピュータやネットワークなどの電子的手段を用いてブレインストーミングを行う技法のこと。

※アリゾナ大学のNunamaker,Appleate,&Konsynski(1987)によって開発されたらしい。

従来型ブレインストーミングを単に電子黒板で行うという単純な置き換えではない。

たとえば単純なツールとして上の図のような入力画面を考えることができる(参考文献を参考に作成)。自分がアイデアを入力すると、メンバーに自動で画面にアイデアが共有され、かつ誰のアイデアかは特定されないという状況をつくることができる。オフライン(アナログ)の場合は、誰がいれたかわからないように箱に一巡して入れさせ、書記がランダムに読み上げていくという方法も可能かもしれない。

もちろん現在では無料や有料のブレインストーミングツールがたくさんある。

たとえばGitMindではこのようなツールを用いることができるという。

Microsoft Whiteboardのように、非匿名的に顔をオンラインで表示させてブレインストーミングを行うこともできる。

もちろん顔を表示させずに、名前も全員同じにすれば匿名的に行うことも可能だろう。

たとえば他のメンバーのアイデアを全て画面で共有するのではなく、ランダムにいくつかのアイデアを共有するような仕組みで行う場合があるらしい。

ランダムにすることによって異なる流れが生じ、一つの流れにメンバーがとらわれることなく、自由に多くのアイデアを生み出すことができるという。

項目 従来型ブレインストーミング 電子ブレインストーミング(EBS)
実施形式 対面での会話による口頭発言 コンピュータやネットワークによる入力・共有
発言の匿名性 基本的に匿名ではない 匿名での発言が可能 (心理的安全性が高い)
同時発言の可否 一度に1人のみ 複数人が同時に発言可能
発言の記録 手動での記録や書記が必要 自動的に記録される
発言への影響・忖度 他人の意見に引っ張られる傾向がある 他者の意見に影響されにくい
アイデア数 少なくなりがち(順番待ちや遠慮で) 多くのアイデアを短時間で出せる
機材やシステムの必要性 不要 コンピュータや専用ツールが必要
コスト 低コスト システム導入や運用コストがかかる場合がある
向いている場面 少人数での自由な対話 大人数での短時間集中発想や匿名性が重要なテーマ

従来のブレインストーミングと電子ブレインストーミングを比較した図がこちらになる。

従来のブレインストーミングの欠点は最後のコラムで深堀りして検討する。

「EBS(ElectronlcBralnstormlng)は,Arizona大学のNunamaker,Appleate,&Konsynski(1987)によつて開発された,電子ブレーンストーミングシステムである.このシステムでは,各集団メンバーがアイデアを思いついた時点で,コンピュータ入力によつてそれを呈示できるため,他の人のアイデア呈示が終わるのを待つ必要がない.こうした平行的コミュニケーションによつて,ブレーンストーミングの最大の妨害要因である,生産妨害が制御・低減されることになる.また,このシステムでは,それまでに出されていた他者のアイデアのプールからランダムに選ばれたものが,各メンバーに送られる.これによつて,メンバーが,一つのアイデアに関して会話を始めるなど,流れにとらわれることがなくなり,多様なアイデアに注意を向けやすくなつているとみられる.」
塚本久仁佳, 坂元章「電子ブレーンストーミングの生産性 四つのテクノロジーの比較」[2001],20p

【3】AMA法、MBS法、SBS法、CBS法

アメリカ経営管理協会法(AMA法)とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

POINT

アメリカ経営管理協会法(AMA法,American Management Association method)アメリカ経営管理協会(AMA)によって開発されたブレインストーミングの変化型の一つであり、集団と個人の発想を交互に行うことで発想の広がりと深まりを目指す手法のこと。

・AMA法のプロセス

  1. [集団的プロセス]参加者全員がまず3分間、口頭で自由にアイデアを出し合う。
  2. [個人的プロセス]その後、各自が5分間、個人で静かにアイデアを考えて書き出す。
  3. この「集団→個人」のサイクルを交互に繰り返す。

・AMA法のメリット

  1. 集団の相乗効果と個人の深い思考をバランスよく活用できる。
  2. 話すのが苦手な人でも個人時間で発想に集中できる。
  3. 集団の意見に引っ張られるだけでなく、自分の視点も維持できる。

「1)AMA法(アメリカ経営管理協会法)」アメリカ経営管理協会で開発された方法で,課題について最初参加者全員がアイディアを3分間出し合い,ついで参加者各自がアイディアを5分間考えるというステップを順次交互に繰り返していく」
福間 誠之「ブレイン・ストーミング」[1986],455p

三菱樹脂ブレインストーミング法(MBS法)とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

POINT

三菱樹脂ブレインストーミング法(MBS法)三菱樹脂が開発した、発言の偏りを抑え、個人の思考力を最大限に活かすことを目的としたブレインストーミングの変化型のこと。

口数の多い人や上司の発言が場を支配してしまいがちな従来型ブレインストーミングの弱点を補い、全員が等しく発想に参加できる工夫がされているという。

・MBS法のプロセス

  1. 各メンバーが1人で10分間程度、アイデアを書き出す。
  2. 各メンバーはその中からアイデアを3~5個選び出し、発表する。リーダーはそれを書き出す。
  3. 全員のアイデアが出つくしたところで、リーダーはそれぞれのアイデアを読み上げ、質問を受け付けたり、追加発想や修正発想を受け付ける。
  4. 出たアイデアをカード化し、整理する。

・MBS法のメリット

  1. 開始時に全員がまず個別に10分間メモする段階が設けられ、内向的な人でも均等に発想できる構造になっている。
  2. 発言の回数や順番が統制されており、口数が少ない人も自動的に発表機会を得られる。
  3. 出たアイデアをカード化して整理・保存する仕組みが組み込まれており、後続の分析や活用を視野に入れている。

「BSの改良技法には、さまざまなものがあります。その一つは、個人思考をもっと生かそうとするものです。BSは発言しながら行うので、発言量の多い人や地位の高い人が場を支配しがちです。しかし、口数の少ない人が創造的でないということは決してありません。そこで、全員に満遍なく発現させるための工夫が考えられました。それが『MBS』です。MBSというのは三菱樹脂ブレインストーミングの略で、進め方は次のとおりです。テーマについて、各メンバーはメモ用紙に10分くらいでアイデアを書き出します。その後各自が自分のアイデアを三~五項目に絞って発表し、それをリーダーが模造紙に列記します。他人のアイデアから別のアイデアを思いついた人はさらに発表します。リーダーは全員のアイデアが出つくしたところで、模造紙のアイデアを順々に読み上げ、そこで質問を受け付けたり追加発想や修正発想を促します。出たアイデアはその後カード化し整理してまとめます。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,73p

順番ブレインストーミング(SBS法)とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

POINT

順番ブレインストーミング(SBS法,Sequential Brainstorming)参加者が決められた順番に沿って必ず発言する形式で行われるブレインストーミングの変形型のこと。

※SBSという略称は他と揃えるための仮のもの。MBS法と同義的に扱われる場合もある。一般には順番BSなどと略されるようだ。

発言の強制性と構造的な進行を特徴とし、沈黙や遠慮によるアイデアの停滞を防ぐことを目的としている。

・SBS法のプロセス

  1. 「自分の順番がまわってきたら必ず何か発言しなければならない」というルールのもと、各メンバーはアイデアを出す(複数でもよい)。
  2. 最低、三巡程度繰り返す。

・SBS法のメリット

全員が発言せざるを得ないルールを設けることによって、受動的・消極的なメンバーもアイデアが出てくるようになる。

記録係は各メンバーの発言を「一行見出し」の形式でカードに記載していくという。

POINT

一行見出し20~30字以内で簡潔に、平易に発言者のアイデアを要約したもの。

順番BSのあとには、質問BSを行うとよりアイデアが出るようになるという。なぜそのアイデアを出したのかを質問したりして発言の背景を深堀りしたりして討論していく段階である。

参考サイト1(順番BS、質疑BS):https://www.ritsumei.ac.jp/~yamai/kj.htm

カードブレインストーミング(CBS法)とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

POINT

カードブレインストーミング(CBS法,Card Brainstorming)小型カードに1アイデアを記入する形式で個人思考(沈黙思考)と集団思考(外部思考)を交互に行うことで、創造性の質と整理性を高めるブレインストーミングの変化型のこと。

※高橋誠さんがMBS法を参考に発案した方法だという。カードBS法と高橋さんは略している。

・CBS法のプロセス

  1. 各メンバーがカード(2.5cm×5cmくらいの付箋)にアイデアを書く時間(1枚につき1アイデア)。黙ったまま5分くらい。カードはA4用紙に貼っていく。
  2. 順番に1枚ずつカードのアイデアを発表していき、読まれたカードは大きな模造紙などに貼り付けていく。既に発表された同じようなアイデアは発表することができないことに注意。
  3. 1と2を繰り返し、もうアイデアが出なくなった辺りで終了する。
  4. 最後に評価を行う。この辺りは従来のブレインストーミングと基本的に同じである。

・CBS法の利点

MBS法と同じように、順番が必ずまわってくるので消極的な人もアイデアを出すことができる。カードでアイデアを出すので、整理が楽であり、書記がわざわざ転記する必要がなくなる。MBS法(SBS法)もカードを用いるが、CBS法の場合は最初から各メンバーが自分でカードを所有し、書き込み、1枚ずつ順に発表していくという点が違いだと言える。

高橋さんによると、CBSは一人でもできるという。カードを自分で作り、並べ、また考えて、並べてを繰り返していくのである。

「『カードBS法』は、この『MBS』からヒントを得て私が作成したものです。カードBS法では、全員がカード(二・五センチ×五センチの付箋が適切)をもってアイデアを書きます。個人が沈黙による発想をし、次に集団の前でそれを発表するということを繰り返します。これは個人の記憶による内部思考と、他人の発表を聞き考えるという外部思考を、順番にミックスしていくというやり方です。個人思考と集団思考をうまく融合させています。出されたアイデアは、すべてがカードになっていますから、あとで整理やまとめがすぐできます。転記の手間を省き、時間の短縮がはかれます。これは個人でも実施できるのが、もうひとつの特徴です。ちょっと時間ができた時、テーマについてアイデアをカードに書きます。そしてそれを机の上に並べ、また発想をします。個人でも集団でも用いることができるのがカードBS法のよさです。」
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,74p

「CBS法(カード式ブレイン・ストーミング法)。1.参加者各自に名刺程度の大きさのカード約200枚を配布する.2.課題に関連した問題点1件についてカードを1枚ずつ使用して記入する.3.参加者がカードに記入した問題点を1件ずつ順次発表し,他の参加者はそれを自分のカードに記入する.4.参加者が自由討議を行い,そこで出された問題点を各自カードに記入する.5.インストラクターが自分の記入したカードを発表し,参加者は各自のカードを調べ,不足部分を補足する.」
福間 誠之「ブレイン・ストーミング」[1986],455p

【4】ルーマンが使用したツェッテルカステン(カード・ファイル・システム)

ツェッテルカステンとはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

画像の出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:HSGH_022-000941_Niklas_Luhmann_(cropped).png

CBSを聞いて思い出すのが、社会学者のニクラス・ルーマンのカード分類法である。

POINT

ツェッテルカステン(独:Zettelkasten)数字を付すことで明確に識別できる紙のファイルにさまざまなアイディアを書きとめるという方法のこと。※Zettel = 紙片、Kasten = 箱。

カードファイルによる思考法、整理法は16世紀など、比較的昔から存在するようだ。

昔の方法は比較的大きな紙に小さなメモ用紙を糊などで貼り付け、ファイルや箱にいれて整理していく方法である。箱にメモ用紙をそのままいれる場合もある。

ルーマンによるツェッテルカステンのやり方

ここで大事なのはルーマンの独自性だろう。小さな紙(A6くらい)と箱を用意する点は同じである。

ただし、メインの箱と、文献管理用の箱(リファレンス箱)を使い分けるという点で違う。文献管理用の箱には、参考文献やその内容に関する短いメモをいれていくという。たとえば「問題解決手法の知識」という本を呼んだ場合、メモの表に本の題名を書き、裏にそのメモを書くということになる。

メモには番号をふっておくことが重要になる。たとえば最初のメモなら1と左上に書いておく。

明らかに出典元からヒントを得た場合には必ずそれを忘れないようにリファレンス箱を使うという点がポイントになる。ふと思いついたことなどは最初からメインボックスを使うのだろう。

さらにメインの箱にもアイデアを同じように新しい紙に書くという(表に参考文献は書かない)。

メインの箱のナンバリングは基本的に1、2、3…とつけていくことになる。リファレンス箱も同様だろう。リファレンス箱も同じ数字でややこしい場合は、01、02….010などと区別すればいいのではないだろうか。

ルーマン自身のツェッテルカステンに関する情報があまり得られなかったため、詳細はよくわからない(後継のツェッテルカステン自体のやり方はあるが)。

メインの箱のカードのアイデアがリファレンスと同じ場合は、メインのカードにも01などと書いていったほうがいいのだろう。たとえばメインの箱の1も2も3もリファレンスの箱の01に関連している場合、わかりやすくするために右下などに01とそれぞれ記載したほうがいいと思われる。

箱にメモしたものをナンバリングしていれておくだけでは従来の技法と対して変わらない。

ルーマンで重要なのは「リンク(関連)」という概念である。たとえばカード1と関連するアイデアが浮かんだ場合、その新たなカードは1/aとナンバリングする。1/aと関連するアイデアが浮かんだ場合、その新たなカードは1/a/1となる。1/a/1と関連するアイデアが浮かんだ場合は、1/a/1/aとなる。さらに1/a/1と関連するアイデアが浮かんだ場合は、1/a/1/bとなる。

・具体例

図にすると階層構造はこのようなイメージになる。

パソコンのフォルダをイメージするとわかりやすい。フォルダの中にフォルダがあり、またその中にフォルダがあるといったような「階層構造」をなしている。

さらに索引のためのカードを作ったりするという。階層構造が複雑になるとややこしいので、まとめるカードをつくるというわけである。

「彼がその生産力を維持するために用いたおもな技術的手段の一つであるカード・ファイル・システム、いわゆる《カードボックス》はとりわけ有名である。ルーマンがこのカード・ファイル・システムを用いて仕事を始めたのは一九五〇年代始めであり、このシステムは彼の生涯を通じて膨張しつづけた。このシステムの意図するところを簡単に述べれば、数字を付すことで明確に識別できる紙のファイルにさまざまなアイディアを書きとめるということである。書きとめられるアイディアは、多くの場合、読書によって――たとえば、ルーマンがパーソンズの著作を読むことで――得られた。いずれのファイルもほかのファイルの参照を指示することが可能なので、参照指示が一直線ではなく縦横無尽になされたシステムができあがった。ルーマンは、何らかのテーマについての論文や本の章の準備に取りかかるとき、当該テーマに関わるすべてのカード・ファイルをずらっと並べ、それを一定の順序で並べては、またそれをまた考え直すということよくやっていた。カード・ファイルを新奇に組み合わせることで新たな相互参照の連関が見えてきて、それが当該テーマに関する新たなアプローチをもたらすのである。ルーマンは、カード・ファイルの新たな組み合わせが、どのように創造性の新たなレベルをもたらすかということについても記述している。多かれ少なかれカード・ファイルにもとづいて書かれる論文や章は、そうしたレベルで書かれたということである。」
クリスティアン・ボルフ「ニクラス・ルーマン入門」37-38p

参考サイト(ツェッテルカステン):https://president.jp/articles/-/52458
参考サイト(ツェッテルカステン):https://studyhacker.net/memo-zettelkasten

デジタルでツェッテルカステンをやる方が合理的ではないか

ルーマンは9万枚ものカードを作ったというが、私にはとても真似できそうにない。そもそもアナログでそのような作業をすることは大変であり、現代ならばデジタルで済ませたほうが楽だろう。もちろんアナログでしか得ることのできない機能もあるかもしれないが、私にはそこまで重要だとは思えない。

たとえばObsidianやnotionなどのメモアプリを使えば、より簡単に、場所を選ばずにいつでもツェッテルカステンが可能になるだろう(Obsidianは基本的にオフライン向けで、Notionはオンライン向けである)。変わった使い方として、自分でサーバーを借りてワードプレスでウェブページを作り、自分専用のカード保存庫とすることもできる。いわば記憶の宮殿をつくるのである。リンクもワンクリックで可能になる。

カフェでコーヒーを飲んでいるときも何万、何十万ものカードが参照可能になるのである。

数字だけでは可視化しにくいので、簡単なメモをタイトルにつけたり、お互いをワンクリックでリンクさせるようにコードを書いたりするなど、幅広い用い方ができる。日付なども書いたほうがわかりやすいだろう。

もちろん画像や動画、ウェブページのリンクなども貼ることができる。ただし、いっぺんに複数のカードを並べて出すことなどは難しいかもしれない。その場合はスクリーンショットなどでカードを撮って、画像としてマウスで動かして組み合わせたり話したりすると面白いかもしれない。

【コラム】創造は個人と集団、どちらが効率的か?

【1】創発性とはなにか

創発性とはなにか、意味、定義、わかりやすく解説

POINT

創発性一般に、複数の要素が相互作用することで、個々の要素には見られなかった新しい性質や機能が、全体として現れること。

たとえば分子ひとつひとつでは生命という現象を生じさせることができないが、たくさんの分子が相互作用し合い、恊働することによって可能になるといえる。

ここで重要なのは単なる要素の総和ではなく、要素の総和以上のなにか、新しい階層の、全体的な現象が生じているということである。

たとえばブロックを単に積み重ねて壁をつくるイメージではなく、科学の実験のように要素同士が合体したり、まるで違う性質をもち始めたり、爆発したりするようなイメージとなる。何が起きるかわからない、予測が難しい領域であるとも言える(いわゆる複雑系科学の話とも関連するのかもしれない)。

卑近な例で言えば、新品の鎖はどの部分からちぎれるか、科学的にも予測がつかないという。どの部分からちぎれるかは要素同士の相互作用が生み出す全体のレベルにおいて決定される。

創造性と創発性は似た側面が多い。創造的なものはだいたい、創発的な現象によって生み出されたものであると言える。

個人でアイデアを生み出す際も、多くのアイデアが相互作用し合って、創発したものであるといえる。もちろん、創造性を「独自性」と狭義に定義した場合は創発したものは必ずしも創造性が高いとはいえない。しかし、創発が起きているその現象は、ある社会の評価において独自性がないとしても、創造的な現象であると広義に捉えることができる。

例えば子供が積み木で遊んでいる最中に、積み木で絵を描くような真似事ができると発見したとする。

このアイデアは独自性が高いとは言えないが、すくなくとも単なる自動的な模倣ではなく、さまざまなアイデアが子供の中で渦巻いて関連しあい、創発したものである。その意味でこうした現象は創造性があり、また創造的なプロセスであると捉え直すことが可能になる。

【創造発見学第二回】創造性とはなにか

ブレインストーミングにおける創発性とは

ブレインストーミングは発案者のオズボーンによれば「独創的な問題に突撃するために頭を使うため」につくられたものである。

要するに、「独自性のあるアイデア」を生み出す道具として用いられているわけである。独自性のないアイデアはわざわざブレインストーミングをしなくても、ネットで調べたり自分で考えれば出てくる。今の時代はAIに聞いたほうが早い場合もあるだろう。そのうち、AI同士でブレインストーミングをさせる時代もくるかもしれない。

創発性にあてはめると、部分は「個人」であり、全体は「集団」ということになる。

より具体的に言えば、複数のメンバーのアイデアがたくさん集まり、それらが複雑に相互作用することによって、独自性のあるアイデアが生まれてくるのである。

創発の原因を特定のメンバーや特定のアイデアに特定することはできない。あくまでも要素の全体の相互作用によって、より高い階層の、論理階型の、抽象度の段階によって生じているのである。

たとえば井庭崇さんは、こうした創造のプロセスを理論化しようとしている。たしかに「どういうわけか、ブレインストーミングをすると独自性の高いアイデアが生まれてくる」という、ざっくりとした結果論や経験論でしか私は理解できていない。より学問的な説明ができれば、もっと創造技法の練度を高めることができるのかもしれない。

井庭さんによると、「コンティンジェンシー(ある事態が必然でもなく、不可能でもない場合のこと。要するに、ほかでもあり得る場合のこと)のなかに創造性がある」という。

いろいろな選択肢の領域がバッと広がり、選択され収束し、またバッと広がるという。この広がる機会がブレインストーミングでは頻繁に起こるので、創発性や創造性が高まるのかもしれない。たとえばコンビニのおにぎりをもっと売る方法はAではなく、Bでありうる、Cでもありうるのではないか、とみんなアイデアを出していき、それらがDやEへと広がっていき、連鎖していくのである。

井庭さんによればブレインストーミングは「コミュニケーションの連鎖をうまく引き出す仕組み」があるが、一方で創造的にならない場合もあるという。

なぜ上手く行かないのか、ということを考えるためにも「創造理論」を構築する必要があるというわけだ。※今回は深堀りできない。社会システム理論の話もあるので、理解の難易度が高い。気になった人は創造発見学第二回の動画を見てほしい。

【創造発見学第二回】創造性とはなにか

「ブレインストーミング(以下BSと略称)とは、米国の広告会社、BBDO社の副社長だったアレックス・オズボーンが創始した発散技法です。『独創的な問題に突撃するために頭を使う』からこの名がよいと、オズボーンは彼の著書『独創力を伸ばせ』(ダイヤモンド社)の中で述べています。」

備考:Batton, Barton, Durstine & Osborn社の略
高橋誠「問題解決手法の知識」、日本経済新聞出版社、第二版,67p

【2】一人ブレインストーミングのほうがアイデアがたくさん出るという実験結果

1人でやるほうが集団でやるよりも生産性が高いケース

発案者のオズボーンは「個人は平均すると,1人で作業する場合の2倍のアイデアを生み出すことができる」と述べている。

しかし、ブレインストーミングの後続の研究では、オズボーンの考えを支持する結果が得られていないという。

実験は「ブレインストーミング集団」(ブレーンストーミングのルールのもとに話合いをさせてアイデアの創出を行わせた集団)と「名義集団」(ブレーンストーミングの基本的なルールに従うが集まらず、独立してアイデアを考えている個人の総和)を比較するものである。

Diehl&Stroebe(1987)の研究によると、ブレインストーミング集団と名義集団の比較の22の研究結果のうち、18の研究で名義集団のほうが生産性が高く、残りの4つは二名集団である実験であり、有意差が得られていないという。

ようするに、個人が出すアイデアの数は集団で行うより一人でやったほうが「」が多いというわけである。

もちろん、独自性などの「」はどうなのかという評価基準や、個人でアイデアを出したあとは集団で評価したり、さらに結合したりするプロセスがあるのではないかという問題がある。ブレインストーミングはアイデアを出しただけでは終わりではなく、最終的な「統合」が重要になる。この統合すらも、それぞれの個人に、それぞれ孤立して出したアイデアをまとめてそれぞれで統合させ、そのほうが質が高いといった可能性も考えられるが、ここでは置いておく。

Diehl&Stroebe(1994)の研究ではなぜブレインストーミング集団の生産性が名義集団より低いのかという要因について、「タダ乗り」、「プロダクションマッチング」、「評価懸念」、「生産妨害」という4つの妨害要因を検討している。

このうち、「生産妨害」が損失の最も大きな要因だという。一度に1人しか話せないことで、アイデアの発表タイミングが阻害される問題のことである。そこで、この生産妨害をできるだけ生じさせないようにブレインストーミングをすれば、名義集団より生産性が高くなるのではないか、と考えていくのである。

「“Two heads are better than one”(3人寄れば文殊の知恵)という諺が示すように,集団のほうが個人個人の場合よりもすぐれた知恵を出すことができるだろう,という考えは社会のなかに広く浸透している.そうした集団に対する考えに基づいてOsborn(1957)が開発した,ブレーンストーミングという集団技法は,集団メンバーによつて出されるアイデアの量・質を高めることを目指した技法であり,実際,さまざまな組織や学校における会議などの集団場面においてよく用いられてきた」
塚本久仁佳, 坂元章「電子ブレーンストーミングの生産性 四つのテクノロジーの比較」[2001],19p
「Osbornは,こうしたルールに従う零囲気を作り出すことによつて,他者の目を気にする評価懸念や同調圧力などが取り除かれ,相互刺激.扶助といつた集団のプラスの側面がいかされるとしている.さらに,ブレーンストーミングにより,“個人は平均とすると,1人で作業する場合の2倍のアイデアを生み出すことができる”と述べている.」
塚本久仁佳, 坂元章「電子ブレーンストーミングの生産性 四つのテクノロジーの比較」[2001],19p

「しかし,その後の実験的研究において,このOsbornの考えを支持する結果は得られていない.実際に,ブレーンストーミング集団(ブレーンストーミングのルールのもとに話合いをさせてアイデアの創出を行わせた集団)と,名義集団(nominalgroup)(ブレーンストーミングのルールに従つて個人個人に独立してアイデアを考えさせ,ブレーンストーミング集団と同じ人数分のアイデアを,重複部分を除きながら単純に合わせたもの)を比較したところ,Taylor,Berry,&Block(1958)以後の20以上にわたる研究において,ブレーンストーミング集団のほうが効果的であつたという結果はほとんどなく(例外は2人集団を用いた四つの研究くらいである),名義集団のほうがはるかによい結果を出していたのである(Diehl&Strobe,1987),」
塚本久仁佳, 坂元章「電子ブレーンストーミングの生産性 四つのテクノロジーの比較」[2001],19p

「ブレーンストーミング集団のほうが,それと同じ人数である名義集団よりも生産性が低くなつているということは,なんらかの妨害的な要因が働いているはずである.これについて,Strobe&Diehl(1994)は,ただ乗り(FreeRidging),プロダクションマッチング(ProductionMatching),評価懸念(EvaluationApprehension),生産妨害(ProductionBlocking)という四つの妨害要因をあげ,詳しく検討した.その結果,先の三つはブレーンストーミングの生産性の損失にあまり関係なく,生産妨害が損失の最も大きな要因であることを突き止めている.生産妨害とは,実際の集団では一度に1人しか話せないため,自分がアイデアを思いついたときにすぐに呈示できず,他人のアイデア呈示が終わるのを待たなければならないなど,メンバー問での相互調整の問題から生じるものである.たとえば,他人のアイデア呈示が終わるのを待つていると,その間に思いついたアイデアを忘れてしまつたり,また,それを忘れないようにしていると,その時間はそれ以外のアイデアのことは考えられなくなる.そうしたなかで,ブレーンストーミングの研究は,こうした問題を解決し,集団によるアイデアの生産性を高める方向へと進んでいる.その一つにブレーンストーミングをコンピュータで媒介させて行うというもの(電子ブレーンストーミング)があり,その効果が報告されている。」
塚本久仁佳, 坂元章「電子ブレーンストーミングの生産性 四つのテクノロジーの比較」[2001],19-20p

「ブレーンストーミングによって期待される理論的成果は、集団討議をおこなうことによって、個人の持つ知的資源の単なる総和以上の「知恵」が創出されること、すなわち創発性(emergence)が生まれることである。しかし、いくつかの研究レビューやメタ分析(Burton,1987;Diehl&Stroebe,1987;Mullen,Johnson,&Salas,1991;Brown&Paulus,1996;本間,1996によって示されているように、これまでの実証的な研究結果はその理論的期待に対して否定的である。例えばDiehl&Stroebe(1987)は、ブレーンストーミングの生産性(アイディア数)を名義集団と相互作用集団で比較した22の研究結果をまとめ、そのうち18の研究で名義集団の生産性の方が有意に高いこと、残り4つの研究についても、2名集団(dyad)による実験である上に両集団間に有意差が得られていないことを示し、相互作用集団の劣位性を明らかにしている。
これら幾多の先行研究の結果を鑑みるに、創造性について個人あるいは理論的に予測される達成値と集団の所産を比較すること、つまり、集団の創発性を相互作用集団と個人(名義集団)によるパフォーマンスとの比較の観点から検証し、その優位性を主張しようと試みることには、既にあまり意味がないと言えるだろう。」
三浦麻子「ブレーンストーミングにおけるコミュニケーション・モードと目標設定の効果」[2001],2p

一人でやるより集団でやるほうが生産性が高いケース

Gallupe,Bastirlanutti,&Cooper(1991)の研究では名義集団、ブレインストーミング集団、電子ブレインストーミング集団を比較する実験を行ったという。

その結果、ブレインストーミング集団よりも電子ブレインストーミング集団のほうが生産性が高いが、電子ブレインストーミング集団と名義集団の間では差がみられていないという。ただし、集団の数が多くなればなるほど、電子ブレインストーミング集団では一人あたりのアイデアがより多くなったという研究もある。たとえば12人や18人といった大集団では、名義集団よりも生産性が高かったという。

塚本久仁佳さんと坂元章さんの実験では、名義集団と電子ブレインストーミング集団のアイデアの量は同じだが、質は電子ブレインストーミング集団のほうが高かったという。また、少数の集団(4人など)でも同じような結果が出たという。

ここでいう質は「独創性」を指している。なぜGallupeらの研究結果と違うかについては、現代のコンピューター・テクノロジーの進歩などによって利便性が上がったことなどが挙げられていた。

ブレインストーミングも改良すれば、一人のときよりも集団のときのほうが創発性が高くなるツールになるということがわかった。

しかしそれ以上に、個人的には一人のときでもアイデアをたくさん出すツールとしてブレインストーミングが使えることに驚いた。個人的には創造理論によって、さらにブレインストーミングのツールが精錬されることを期待したい。いずれはAIがランダムにアイデアをどんどん出してくれる、架空の他者の役割として機能するようなブレインストーミングツールが出てきてもおかしくない。

「Gallupe,Bastirlanutti,&Cooper(1991)は,EMSを使つた集団のほうが,通常のブレーンストーミング集団よりも生産性が高く,EBS集団と名義集団の問では差がみられないことを見いだした.その後,集団サイズによる影響についての実験が行われ,EBS集団では,その人数が多くなるほど,1人当りのアイデアがより多くなることがわかつた(Gallupe,Dennis,Cooper,Valacich,Bastlnanutti,&Nunamaker,1992).さらに,大きな集団(12人.18人)では,ブレーンストーミング集団のほうが名義集団よりも成績がよいことが示されている(Dennis&Valaclch,1993).こうした一連の電子ブレーンストーミングに関する研究では,EBSが多く使用されているが,他の一般的な電子会議用ソフトを使用した研究もある.吉田・遠藤.安念(1997)はMacConferenceというソフトを用いている.EBSでは他者のアイデアがランダムに送られてくるが,MacConferenceは出されたアイデアがその順序で画面に呈示される.」

塚本久仁佳, 坂元章「電子ブレーンストーミングの生産性 四つのテクノロジーの比較」[2001],20p

「総アイデア数・ユニークアイデア数においては名義集団条件と電子ブレーンストーミング条件問において有意な差がみられなかつた.したがつて,ブレーンストーミングに求められる“量”はどの条件においても同様のものであつた.しかし,同量であるなら,より質の高いアイデアを生成することのできる集団が,より効果的であるといえるだろう.結果より,電子ブレーンストーミング条件において,独創性得点が名義集団よりも有意に高く,コンピュータを用いる場合のほうが,より効果的であることが示された.Dennis&Valacich(1993)では,集団サイズが小さい場合(6名)には名義集団と電子ブレーンストーミング集団問に有意差はみられず,集団サイズがそれよりも大きい場合に,電子ブレーンストーミングが有効になることが示されたが,本研究においては,集団サイズがそれよりも小さい4名集団でも,電子ブレーンストーミングが有効であることが示された.Dennis&Valacichの研究と本研究の結果の違いがなぜ生じたかについては,本研究の知見からは明らかにできないが,少なくとも,これが被験者の違いやシステムの仕様によるものとは考えにくいようにみえる.両者の研究とも被験者は大学生であり,共通している.また,Dennis&Valacichの研究では,EBSが用いられているが,本研究でも,その特性をもつように作成されたランダム型のシステムが用いられており,両者は類似している.本研究では,順次型や順次強調型のシステムも用いられているが,システム間で結果に違いはなく,Dennis&Valacichの研究と本研究の結果の違いは,本研究が順次型やランダム型のシステムを用いたことによるものではないといえる.考えられる可能性としては,近年のテクノロジーの進展によつて,以前よりもコンピュータが使いやすくなつていること,また,そうしたテクノロジーが身近になつたことにより,コンピュータを扱う能力(リテラシー)も向上しており,その結果,本研究ではシステムがより有効に機能したことがあるかもしれない.もし,そうであるとすれば,今後テクノロジーがさらに改善され,また,コンピュータリテラシーがさらに高まることによつて,電子ブレーンストーミングの有効性はますます高まつていくと期待できることになる.」

塚本久仁佳, 坂元章「電子ブレーンストーミングの生産性 四つのテクノロジーの比較」[2001],26-27p

参考文献リスト

汎用文献

高橋 誠「問題解決手法の知識」

高橋 誠「問題解決手法の知識」

鷲田 小彌太「分かる使える思考法事典: アイディアを生み出し、形にする50の技法」

鷲田 小彌太「分かる使える思考法事典: アイディアを生み出し、形にする50の技法」

三谷宏治「マジビジプロ 超図解 三谷教授と学ぶ 「拡げる」×「絞る」で明快! 全思考法カタログ」

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B.ミラー (著), 弓野 憲一 (監修, 翻訳), 宗吉 秀樹 (翻訳) 「創造的問題解決: なぜ問題が解決できないのか?」

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高橋 誠 「新編創造力事典: 日本人の創造力を開発する」

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参考論文

・福間 誠之「ブレイン・ストーミング」[1986]
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/mededjapan1970/17/6/17_6_454/_article/-char/ja/
>ブレインストーミングの基本の参考に・仙波真二 「 ブレインストーミング再考―意味のイノベーションにおけるブレインストーミングの解釈に関する一考察―」[2021]
URL:https://kindai.repo.nii.ac.jp/record/22449/files/AN10437975-20211231-0327.pdf
>オズボーンの創造プロセス全体の参考に

・塚本久仁佳, 坂元章「電子ブレーンストーミングの生産性 四つのテクノロジーの比較」[2001]

URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/72/1/72_1_19/_pdf/-char/ja

>電子ブレインストーミングについて参考に

・三浦麻子「ブレーンストーミングにおけるコミュニケーション・モードと目標設定の効果」[2001]
URL:https://kwansei.repo.nii.ac.jp/record/14398/files/2015-5.pdf
>創発性に関して参考に

・神原理, 大林守「創造的な思考と関係性を生み出すブレインストーミングの手法: アクティブラーニングのための思考トレーニング」[2014]

URL:https://senshu-u.repo.nii.ac.jp/record/1718/files/1041_0098_14_01.pdf
>ブレインストーミング全体の概要に関して参考に

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